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……アンド・ジャスティス・フォー・オール
ニュースを聞いて八葉 るちるが最初に感じたのは、激しい怒りでした。
あまりの腹立ちに、夕食後のおやつに買っていた『Departure』のドーナツも半分ほどしか食べられなかったほどです。（目ざとくこれを見つけた下の妹がおいしくいただきました）
無抵抗の人を集団リンチするなんて許せない！
しかもその犯人が、小学生や中学生だというではありませんか！
いくら小中学生だからといって、もう十分すぎるほどに善悪の判断はつく年齢のはずです。るちるだって、その年齢層なのですからわかります。
――日常のストレスを解消するために暴れてるってところでしょうか……？
なぜもっとポジティブに生きられないのでしょう。るちるには彼らの心境が理解できませんでした。日常に不満があるとして、もっと上手に昇華する手立てはあったはずです。
義憤に駆られた彼女は、事件解決の糸口でもないかとノートパソコンを開き、ネットで事件の情報を集めはじめました。
向かったのは、寝子島の小中学生が集まる匿名のSNSでした。るちるもたまに見ることはありますが、未処理の工場廃液のような悪意に満ちた『本音』が渦巻く空間であり、あまり気分のいい場所ではありません。
キーボードに手を置いたまま、るちるは深呼吸しました。家族たちはテレビでも見ているのか、彼女の邪魔をしにきません。それはありがたいことでした。
もし今画面をのぞきこまれたら心臓が止まってしまうかもしれない、そう思えるほどに罪深い行為に、彼女は今、手を染めようとしているのです。
これはあくまで捜査上の手段、そう自分に言い聞かせ、かすかに震える指でキーを叩きました。
不特定多数への呼びかけです。
『最近むしゃくしゃする、俺もおっさんボコボコにしたいわー』
一分、二分……賛同のコメントを待ちました。けれどもそうそうレスポンスがあるわけでもありません。
――無意味だったかも。
そう思ってるちるは画面を閉じました。
翌日、彼女は同じSNSを見てうめき声をあげました。
賛同のコメントがそれこそ、死にかけた昆虫にたかる蟻のようにびっしりと付着していたのです。
けれども期待が失望に変わるまで、それほど時間はかかりませんでした。
「駄目ね……どの情報も……」
それは鉄くずの山から、使えるネジを探すような作業でした。ひとつひとつ開いて、るちるはため息をつきました。集まったコメントは茶化すようなものが大半で、逆に真剣にたしなめるようなコメントもありましたが、るちるが期待していたような犯人グループからの接触と思わしきものはなかったのです。玉石混交と言いたいところですが実際は石ばかり、意味不明なもの、卑猥なもの、まるで無関係な広告まで読んでいると頭が痛くなってきます。
しかしその中でひとつだけ、ひっかかるものがありました。
ぱきっ、と口の中でチョコレートの棒が折れました。
七枷 陣の口元に力がこもって、折れてしまったのです。
「こんな辺鄙なとこにＤＱＮが騒ぎ立てるとかマジ勘弁してよ……」
陣は自室にいます。座っているのはパソコンのモニターの前です。23インチのワイド液晶画面の周囲は無駄なくスッキリ片付いていました。
彼は今、日課の第一歩に着手したところでした。すなわち匿名掲示板『ネコ島ｃｈ』の、いつも見回るＴＣＧ（トレーディング・カード・ゲーム）雑談スレッドを立ち上げたところだったのです。ベッドに寝転がってスマートフォンを眺めても良かったのですが、今日はちょっと背筋を伸ばしたい気分でした。ところが陣はいま前のめりになってしまい、むしろ猫背になっています。
最初に飛び込んできた書き込みは、どこかのニュースサイトから貼られたとおぼしき、ある事件記事でした。
もちろん気分良く読める内容ではないものの、記事そのものは落ち着いて目を通すことができました。
ところが問題は、その現場と噂されているいくつかの公園です。
その一つは、陣がまれに寄る穴場的ＴＣＧショップの付近ではありませんか。当然、コピーペーストの主も、そのことを問題視しており注意を喚起していました。
物騒なので、しばらく店には近づかないほうがいいかもしれません。遅い時間帯にあのあたりを歩いていたら、警察に職質されてしまう可能性だってあります。「マジで勘弁してよ……」と彼の口から独言が漏れたのはこのためです。
サイト巡りを一時中止し、陣は事件について調べてみました。
ところが調べるほどに、高まるのは違和感ばかりなのでした。
どうやら表沙汰になったのはこれが初のようですが、すでに何度かこのような事態は発生しているようなのです。だとすれば警察も、もっと本腰を入れて調査していてもいいはずです。
被害者名はもちろん、犯行現場についても伏せられていることも気になりました。
そもそも最初から、捜査らしい捜査が行われていないようだという噂すら流れています。
陣は二本目のチョコレート棒を箱からつまんで、苛立たしげにガツガツと砕いて食べます。
「もしや」
再度陣は呟いていました。
「僕みたいな能力を持った人間がいるんじゃ……」
それとも？
いずれにせよ、黙ってスルーするわけにはいかないな、と陣は思うのです。
関わりのない場所ならまだしも、数少ない楽しめる場所に行きにくくなるのは、嫌ですから。
その後陣は、あるSNSにたどり着くことになります。
あまりの腹立ちに、夕食後のおやつに買っていた『Departure』のドーナツも半分ほどしか食べられなかったほどです。（目ざとくこれを見つけた下の妹がおいしくいただきました）
無抵抗の人を集団リンチするなんて許せない！
しかもその犯人が、小学生や中学生だというではありませんか！
いくら小中学生だからといって、もう十分すぎるほどに善悪の判断はつく年齢のはずです。るちるだって、その年齢層なのですからわかります。
――日常のストレスを解消するために暴れてるってところでしょうか……？
なぜもっとポジティブに生きられないのでしょう。るちるには彼らの心境が理解できませんでした。日常に不満があるとして、もっと上手に昇華する手立てはあったはずです。
義憤に駆られた彼女は、事件解決の糸口でもないかとノートパソコンを開き、ネットで事件の情報を集めはじめました。
向かったのは、寝子島の小中学生が集まる匿名のSNSでした。るちるもたまに見ることはありますが、未処理の工場廃液のような悪意に満ちた『本音』が渦巻く空間であり、あまり気分のいい場所ではありません。
キーボードに手を置いたまま、るちるは深呼吸しました。家族たちはテレビでも見ているのか、彼女の邪魔をしにきません。それはありがたいことでした。
もし今画面をのぞきこまれたら心臓が止まってしまうかもしれない、そう思えるほどに罪深い行為に、彼女は今、手を染めようとしているのです。
これはあくまで捜査上の手段、そう自分に言い聞かせ、かすかに震える指でキーを叩きました。
不特定多数への呼びかけです。
『最近むしゃくしゃする、俺もおっさんボコボコにしたいわー』
一分、二分……賛同のコメントを待ちました。けれどもそうそうレスポンスがあるわけでもありません。
――無意味だったかも。
そう思ってるちるは画面を閉じました。
翌日、彼女は同じSNSを見てうめき声をあげました。
賛同のコメントがそれこそ、死にかけた昆虫にたかる蟻のようにびっしりと付着していたのです。
けれども期待が失望に変わるまで、それほど時間はかかりませんでした。
「駄目ね……どの情報も……」
それは鉄くずの山から、使えるネジを探すような作業でした。ひとつひとつ開いて、るちるはため息をつきました。集まったコメントは茶化すようなものが大半で、逆に真剣にたしなめるようなコメントもありましたが、るちるが期待していたような犯人グループからの接触と思わしきものはなかったのです。玉石混交と言いたいところですが実際は石ばかり、意味不明なもの、卑猥なもの、まるで無関係な広告まで読んでいると頭が痛くなってきます。
しかしその中でひとつだけ、ひっかかるものがありました。
ぱきっ、と口の中でチョコレートの棒が折れました。
七枷 陣の口元に力がこもって、折れてしまったのです。
「こんな辺鄙なとこにＤＱＮが騒ぎ立てるとかマジ勘弁してよ……」
陣は自室にいます。座っているのはパソコンのモニターの前です。23インチのワイド液晶画面の周囲は無駄なくスッキリ片付いていました。
彼は今、日課の第一歩に着手したところでした。すなわち匿名掲示板『ネコ島ｃｈ』の、いつも見回るＴＣＧ（トレーディング・カード・ゲーム）雑談スレッドを立ち上げたところだったのです。ベッドに寝転がってスマートフォンを眺めても良かったのですが、今日はちょっと背筋を伸ばしたい気分でした。ところが陣はいま前のめりになってしまい、むしろ猫背になっています。
最初に飛び込んできた書き込みは、どこかのニュースサイトから貼られたとおぼしき、ある事件記事でした。
もちろん気分良く読める内容ではないものの、記事そのものは落ち着いて目を通すことができました。
ところが問題は、その現場と噂されているいくつかの公園です。
その一つは、陣がまれに寄る穴場的ＴＣＧショップの付近ではありませんか。当然、コピーペーストの主も、そのことを問題視しており注意を喚起していました。
物騒なので、しばらく店には近づかないほうがいいかもしれません。遅い時間帯にあのあたりを歩いていたら、警察に職質されてしまう可能性だってあります。「マジで勘弁してよ……」と彼の口から独言が漏れたのはこのためです。
サイト巡りを一時中止し、陣は事件について調べてみました。
ところが調べるほどに、高まるのは違和感ばかりなのでした。
どうやら表沙汰になったのはこれが初のようですが、すでに何度かこのような事態は発生しているようなのです。だとすれば警察も、もっと本腰を入れて調査していてもいいはずです。
被害者名はもちろん、犯行現場についても伏せられていることも気になりました。
そもそも最初から、捜査らしい捜査が行われていないようだという噂すら流れています。
陣は二本目のチョコレート棒を箱からつまんで、苛立たしげにガツガツと砕いて食べます。
「もしや」
再度陣は呟いていました。
「僕みたいな能力を持った人間がいるんじゃ……」
それとも？
いずれにせよ、黙ってスルーするわけにはいかないな、と陣は思うのです。
関わりのない場所ならまだしも、数少ない楽しめる場所に行きにくくなるのは、嫌ですから。
その後陣は、あるSNSにたどり着くことになります。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2015年11月08日
- 参加申し込みの期限
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- 2015年11月15日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2015年11月15日 11時00分
