ねこじまファイターズ！｜リアクション

ねこじまファイターズ！

●Round5　Fight！
　STAGE:HOSHIGAOKA
　　　　　SHU VS KATANA
　　　　　　　　　　　　　FIGHT！
「くらえ、猫津波！」
　八神修が手をかざし、生まれた門から大量の巨大猫が召喚される。視界を埋め尽くすほどの猫が御剣刀へと迫った。
「無駄だ」
　刀がろっこんを使う。彼の心身が加速し、相対的に速度の減じた猫たちの中へと突き進む。スローモーション映像の如く振り下ろされる猫の爪を、悠然と、ギリギリの距離をおいてかわしていく。一撫でするくらいの余裕すらあった。通常ならばわずかな時間しか生み出されない、猫たちの間の空間。そこへ刀は滑り込むようにして前へと進んだ。
　問題は、猫たちを突破した後だった。
「――そこか」
　修が見えたと思った瞬間、その姿が歪む。空間の歪みへと得物を振るいつつ、ろっこんを解除すれば、刀の刃は修の放った衝撃波とぶつかっている。剣技で相殺すれば、その隙に後退した修が柔らかな笑みを浮かべていた。
　二人の間の距離は、攻撃前とまったく変わっていなかった。
「果たして無駄か？　現に御剣、君は加速を使っても俺との距離を縮められていない」
　いつでも衝撃波を放てるよう構えながら、修が続けた。
「さしもの加速も、空間そのものを武器にされると対処が手間だろう。たとえ対処しても、鉄槌となった空間は刃をすり抜け着実にダメージを与えていく」
「それがどうした。大したダメージじゃない」
　刀は剣を振るう。鋭い音が空気を裂いた。
「八神、俺は加速して近づき、斬ればいいだけだ。反対にお前は、俺の動きを常に警戒し、考えて動く必要がある。消耗が激しいのはどちらだ？」
　パソコンのウイルス対策と同じだ。ただ一点の綻びを見つけ攻撃すればいいウイルス側に対して、考えうる限り相手の攻撃手段を想定し防御する立場は、必然かかるコストが大きくなる。
　そして一瞬の判断ミスすら、刀にとっては絶好のチャンスになるのだ。
「言いたいことは分かっている――だが御剣、本当に大したダメージじゃないのか？」
「……？」
「少しずつ、身体が重くなってるだろう？」
「！」
「図星、だな」
　押し黙った刀に修は余裕の笑みを浮かべる。それが刀に微かな焦燥を感じさせた。
「何をした」
「隠すほどのことじゃない。腰元を見てみろ」
　言われた刀が腰回りを見れば、五匹ほどの子猫たちが、泣きべそをかいてしがみついていた。
　にゃー。
　にゃー。
「……」
　なんだこれは。
「ステルスキャッツ。さっきの巨大猫たちの子供だよ。親に褒められたくて、一生懸命しがみつき攻撃をしている」
　攻撃？　これが？
「どうやって俺に」
「加速してない時にこっそり召喚しておいた。俺の秘技中の秘技を使って」
「子猫の召喚に秘技か」
「可愛いだろう？」
　刀は再び子猫たちを見た。
　にゃー。
　にゃー。
「……それは認める」
「共通理解が得られたな、御剣」
「だが御剣、今のは油断だったな」
　前方の修が言った直後、背後からも聞こえてきた修の声。
「……っ！」
　刀の総毛が立つ。しかし加速の撃鉄を落とすよりも早く、刀の身体は突き飛ばされるようにして地面に叩きつけられていた。揺らめく視界の端には、後ろから衝撃波を放った修の姿。
　――目の前の八神は残像か？
　いや、気配は確かにあった。
　その気配は、背後の八神にも確かにある。
「分身かなにかか？」
「正解だ。分身の召喚『影八神』」
　自らを召喚したがゆえに、その能力はまったく同じ。
「策は成った。勝たせてもらうぞ御剣」
　修が淡々と宣言する。倍と化した猫が刀へと向かった。

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