ねこじまファイターズ！｜リアクション

ねこじまファイターズ！

●Round6　Fight！
　STAGE:SHOTENGAI
　　　　　TUKASA VS NEMURU
　　　　　　　　　　　　　FIGHT！
「お手柔らかに、お願いしますねぇ」
　日暮ねむるはにこやかに、邪衣士へと宣戦布告する。
　そして地を蹴った。
　構えはボクシング。一気に間合いを詰める。
「デストロイスタイルか」
　士は敵手を、呟きにも満たぬ声でそう評する。ねむるがだらりと下げた左拳をしならせ、フリッカージャブを放つ。変則的な軌道の拳を、士がスウェーでかわせば、さらに踏み込んだねむるが右拳を鋭く撃ち込む。顎を狙ったショートフックはしかし、素早くかがんだ士の頭上をかすめるだけだ。
「――！」
　呼気鋭く、低い姿勢から身体を跳ねあげ、士は拳を横殴りの雨の如く叩きつけた。ねむるは腕を盾にガード、バックステップも使って衝撃を殺していく。士は深追いしない。猛打を逃れたねむるが腕を振って苦笑した。
「……さすがにグローブなしだと効くね」
　ねむるの目が楽しそうに細まる。
「おかげでちょっと目が覚めてきたかな」
　先に動いたのは今度もねむるだった。小刻みにフットワークを使い、【ウィップス】【ジャックナイフ】と名付けた左右の技を再び放つ。先ほどより数段速い攻撃に、士は対応しようとして――自らの反応の遅さに舌打ちした。先刻かわしたはずのショートフックが、ほんのわずかに脳を揺らしていた。反撃するにはすでに遅いが、黙って受けるつもりはない。
　迫る拳に自ら進み、打点をずらして受ける。多少のダメージは覚悟の上、士はクリーン・ヒットのみ気をつけて更に踏み込んだ。ねむるが意図に気づいて動くより早く、その腰を抱え込む。
　フロント・スープレックス。
「……っ」
　豪快に投げられたねむるが小さく呻いた時には、士が寝技に持ち込もうと動いている。
　――させるか。
　衝撃に痺れの残る上半身に代わり、ねむるの足が士の胴に絡まる。蟹バサミだ。腹横筋を中心にした締め付けが士の呼吸を厳しいものにしていく。しかしねむるへと伸ばされる士の手には、まだ力強さがあった。
　上等。
　互いの目が口より雄弁に、好戦的な光を宿す。そのまま至近距離で拳の応酬が始まった。士の呼吸はねむるの締め付けで乱れていくが、下半身と上半身、全身の筋肉を使うねむるも消耗は激しい。互いに相手の関節を取ろうと手を伸ばして攻め、相手の手を弾いては守るを繰り返すが、先に限界が来る。最後は額同士をぶつけ、その反発を利用するかのように離れて転がり、起きあがる。
「ぷはぁ！　すげえ、馬鹿力だね……」
「……」
　ねむるの声は絶え絶え。一方の士は顔をしかめて無言だった。足のホールドは効いたらしい。ねむるは笑みを浮かべる。代償の疲労が、汗と一緒に身体を重くしていく。
　――さて、関節技は解禁しちゃったけど……これからどうするねむるさん。
　士を見ながら、ねむるは自問する。ダメージは同等、あっても僅差。ろっこんは双方未発動。
　――どのタイミングで切り札を使うかで、決まりそうだ。
　呼吸のたび腹部に走る痛みに耐えつつ、士は結論を出す。あとはどうやって機を掴むか。
　士の視線が一瞬時計にいく。
「――そろそろ約束の10分だ」
「……そうだね」
「だがこのまま流すのも後味が悪い。次の相手を探しながら、ひとまず勝負は続けよう」
「いいよ、賛成」
　二人は相手を視界に収めつつ、並行して歩き出す。やがて足は力強く大地を進んで、移動しながら敵手を獲るべく、拳と関節技が交差し始めた。

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