テスト勉強だ！　助けて先生？｜リアクション

テスト勉強だ！　助けて先生？

承：何故、試験勉強中に人は探検したくなるのだろうか。

「今日は、しっかり学ぶように。わからないことがあれば説明しよう」
　桐島義弘は集まった５人の生徒達に、穏やかな表情でそう言った。龍目豪をはじめ、椿美咲紀、八神修、羽生碧南、宮祀智瑜は「はいっ」と気合の入った返事をし、義弘は静かに１つ頷いた。
　５人は全員数学を選んでいた。彼らはテーブルに向かい、判る範囲で教えあったり義弘に教えを乞うたりしていた。だが……ここにも神魂効果は発動していたのだった……。

「こう言う時こそ、がんがん難しい問題にチャレンジするのですっ！」
　と、美咲紀は持参したちょっとむずかしめの問題集に取り組んでいた。この中で一番積極的に取り組んでいたのは、彼女なのかもしれない。
「この問題難しいなぁ……」
「私も途中まではいけそうだと思うのですが……」
　美咲紀が持っていた問題集を見た碧南と智瑜は内容に息を飲んだが、修はそうでもないらしく直ぐに問題を解いてしまう。因みにだが、彼の隣に居た豪は
（……これ、１年の問題のはずだよな？）
　と問題が解けない事に愕然としていた。

「応用問題は、教科書に載っている事だけでは解けませんからね。基本に【どんな別知識を加算して解くか】が応用力の肝なのです！」
　美咲紀はぐっ、と手に力を込めて力説する。
「他の知識を巧く関連付けて解答への道筋を閃くのか――。これが応用力です！」

『たくさん問題を解いて出題パターンを知る』＝『関連付けの種類を増やす』

　これが美咲紀の作戦らしい。彼女は用意されたホワイトボードにばしっ、と作戦を書き込むと義弘は感心したようにうんうんと頷いた。
「こういう風に前向きに、積極的に挑む姿勢はいいな。考え方も合理的だと思う」
　義弘は口元を綻ばせて頷くと、問題に行き詰っただろう豪にアドバイスを始める。問題で判らないところが出た智瑜が問いかけようとしたものの、タイミングが悪かった。
「どこがわからないんだ？　俺でよければ解説するけれど……」
「では、お願いしていいですか？」
　修の申し出に、智瑜は「おねがします」と頭を下げた。
　美咲紀が問題を解く横で、碧南もまた真剣に挑む。彼女は「大学のスポーツ推薦を狙うにしても、公務員採用試験を受けるにしてもやはり成績はいいに越したことないし……」とやる気を出しているようだ。
（それに、桐島先生って『依葉先生』に雰囲気似てるのよね……。クールだし、シャープな印象の眼鏡もそっくりだし♪　偶然にも同じ数学の先生なんだよね）
　もう直ぐ発売予定の『月華の森』という乙女ゲームに登場する攻略対象であり、実は書道家の翠溪先生に次に本命だったりする。この依葉先生は彼女の言うとおり義弘に似たイケメンである。義弘はどちらかといえばハンサムという言葉が似合うかな、とちらり、と彼を見て思う碧南。
（なぜだろ、少し胸がざわざわします……）
　ちょっと妄想が入りかけた眼差しで義弘を見る碧南の様子に、なんだかもやもやした気持ちを持ってしまう智瑜だった。
　そんな彼女は教科書とノートを開き、授業で習ったところを復習しているようだ。そして義弘をちらり、と見るとその横顔にうっかり見とれそうになる。だが気を取り直して応用問題を出題してもらえるか聞いていた。
「積極的だな、宮祀。では、小手調べにここの問題の応用を出題しよう」
　義弘はそういって問題をノートに書くと、彼女は授業内容を振り返りつつ解き始めた。