テスト勉強だ！　助けて先生？｜リアクション

テスト勉強だ！　助けて先生？

（勉強に、戻らなくちゃいけないのに……このほわっほわな猫耳フードな魔法少女服が妙に気になる……！）
　無言でフルフルふるえる夏朝の傍らで、時子がなにか閃いたのかぽん、と手を叩く。そして片付ける尚へこんなお願いをしてみた。
「先生、世界史に関わるコスプレもあるみたいですし……私に似合うものを選んでいただけますか？」
「え？」
　その申し出に、尚はややあって笑顔で頷いた。
　拓郎はというと、最初は戸惑ったものの衣装の中にかっこいいな、という物を見つけたのか手に取ってみる。
（これは、三国志っぽいな。……もしかして文化祭の時のかな？　こっちのは新撰組かな？　教科書で見た事があるぞ）
　姿見を見つけた拓郎は、その衣装を自分に当ててみる。これが案外ぴったりと来るもので、彼に凄く似合っていた。サイズも男性用らしく纏ったとしても違和感が無いだろう。
　先生が着るだろうと考えていたので、女物しかないだろうと踏んでいた拓郎。だが、こうして男物がある事にびっくりしていた。
　そんな様子を見ていた時子と尚は拓郎の様子を見てにっこりと微笑む。
「よかったら、着て見ますか？　それは知人に頼まれて作ったものなんですが……」
「なら……ちょっとだけ……」
　拓郎は、そう言って衣装を手に取った。
　１人葛藤していた夏朝は時子と拓郎の様子を目の当たりにし、内心で叫ぶ。
（これ、絶対神魂の所為だぁああああ！）
　そうしながらも我慢の限界に達したのだろう。彼女は例の猫さん魔法少女の衣装を手に
「この服……着てみても、いいですか？」
「ええ、もちろん！」
　尚先生は実にいい笑顔でそれを了承したのだった。

　尚たちがクローゼットでのトラブルに直面していた頃。紫は半端ない集中力で勉強していたので気付いていなかった。だが、ちょっとお茶を飲んで休憩しよう、と顔を上げ……他の面々が居ない事に気がついた。
（どうしたのかしら？）
　不思議に思い部屋を出、声を頼りにクローゼットへ。そこでみたのは……。
「アメリカの開拓時代、女性はこのような衣装を待っていたのですね……」
　と、ワンピースとエプロンドレスを身に着けた時子と、坂本竜馬の衣装を纏ってしみじみとしている拓郎、ふわっふわな猫さん魔法少女を纏ってポーズを決める夏朝の姿だった。
「みんな、似合いますね！　頑張って作った甲斐があります！　……じゃなくて、どうして衣装がでてきたのでしょう……？」
　首をかしげて衣装を綺麗に片付けようとする尚。紫は暫らくの間考えていたのだが、ややあって１つの衣装を手にした。
「大橋先生は凛とした印象があるから……、男装が似合うかも♪　あと、インド大反乱の時活躍したと言うラクシュミー・バーイーの衣装とか似合うかもしれない……」
　そういいながら見つけた衣装を手に考え、尚へと声を掛ける。彼女はちょうど夏朝に小道具らしき人形を渡していたところだった。
「何ですか？」
「先生、これとか似合うかも……と思いまして」
　そういって紫が渡したのはナポレオン時代のグランダルメ（大陸軍）の将官の制服だったりする。
「これ、確か１年生のテスト範囲にあったかも……」
「はい。授業でもテストで出やすいから良く学んでおくようにといっていましたね……」
　拓郎と時子がそれに注目し、尚はぱっ、と顔を輝かせる。なんでも作るのに苦労した物らしく、それだけに自信作でもあるらしい。
「ちょっと待っててください。着てきますね。ついでにこの時代についても軽く復習しましょう」
　尚の言葉に、時子と拓郎は「「はいっ」」と元気に返事し、紫もまた「これはこれで気分転換になるかも……」と手ごたえを感じていた。