テスト勉強だ！　助けて先生？｜リアクション

テスト勉強だ！　助けて先生？

前騒ぎ：先生よろしくお願いします

――１２月　某日曜日

　旧市街のとある場所。寝子高で生物教師を務めている牛瀬巧の家に、１１人もの生徒がやってきていた。
「学校以外で先生に勉強を教えてもらえる機会なんて、あまりありませんね」
　と、綾辻綾花が柔らかな笑顔で言えば、岡野丸美もうんうん、と頷く。
「寮の自室だと遊んじゃうし、図書館だと関係ない本を読んじゃう。でも勉強会ならきっと、ちゃんとやる気になれるよね！」
　それも先生のお宅だし、とやる気に満ちた目で丸美は言う。それに相槌を打ちながら日暮ねむるも口元を綻ばせる。だが、彼は鞄に忍ばせたとある物を見てくすっ、と笑った。
「ん？何を見てるんだ？」
「後でのお楽しみ～♪」
　水守流の問いに、彼は楽しげに嘯くだけである。
「ふんふふふーん♪」
　その後ろには鼻歌交じりにやってきた桜庭円の姿が。肩には愛猫のにゃーくんが乗っている。手に抱えた本は一見普通のだがのちにその中身で部活の顧問が机に突っ伏すと誰が考えようか。
「まぁ、先生のお宅だしあんまり迷惑掛けないようにね～」
（牛瀬先生のお宅にいけるとかさぁ～、これチャンスじゃねーかよぉっ！　いやさすがに既婚者だし何かしようとかは考えてないけど、自宅でしか見せない油断した姿とか！　あるやろ！　絶対あるやろ！！）
　下級生を窘めつつも内心妙に興奮気味な七緒璃音。彼女の様子から「積極的に勉強しに来たんだな」と周りは思うも、心情は秘するが花だろう、うん。
「気分を変えるのに、いいかもしれないわね」
　穏やかな様子の三宅葉月はそんな彼女の傍らで静かに頷く。少し顔を上げると、少し緊張気味な後木真央の姿が見えた。
「人んちに行くなら手土産必須って教えてもらったのだ。でも、買ってくと受け取ってもらえなさそうな気がするから作ってきたのだ。でも、大丈夫か心配なのだ……」
　彼女は前日から準備して重箱３段いっぱいにクッキーを焼いてきていた。作っている様子を見ていた綾花は「大丈夫ですよ」と優しく語り掛ける。
『今日はがんばろう』
「あぁ、そうだな。誘ってくれて、ありがとな」
　小山内海は御剣刀を誘って勉強会に来ていた。２人はお互いに頑張ろう、と頷きあい、それに呼応して円や真央もいい笑顔で２人に頷く。
　集った寝子高生は玄関前に集まり、代表して葉月がチャイムを鳴らす。と、「はーい」とおっとりとした女性の声がした。奥さんのようだ。
　しばらくすると、巧が玄関を開けてくれた。傍らにはやんわりとした女性がいて、「いらっしゃいませ」と会釈していた。
「おう。みんなよぉ来たな。まぁ、上がってな」
　巧に促され、生徒達は靴を脱ぎ家に入っていく。
「……ふふっ、まぁ、どんな妨害にも打ち克ってこそが実力だからねぇ？」
　一番最後に入ってきた桜崎巴が妙ににやり、と何かたくらんでいるような気がした。ちらり、とそれを見た巧は「まぁ、お手柔らかにな」とだけ言うのであった。

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