寝子島大橋をわたって～晩秋｜リアクション

寝子島大橋をわたって～晩秋

「あれ、見たことのない車がたくさん……？」
　恵御納夏朝と八神修は、横浜のみなとみらい地区にいた。赤レンガ倉庫の『猫の写真展』の話で盛り上がり、二人で横浜にやってきたのだった。みなとみらい線の馬車道駅で降り、赤レンガ倉庫に向かう途中の広場に差し掛かった時のことだ。二人はレトロなデザインの車が並んでいるのに目をとめた。
「車の展示をしているようだ……あの横断幕を見てごらん」
　修に言われ、夏朝が横断幕の字を読む。
「『ヒストリックカーデイ』……？初めて聞くなあ」
「クラシックカーともいうアレさ。……写真展の前に、ちょっと寄ってもいいか？」
　修は、興味を惹かれてうずうずしているのを隠せない。さっそく並んでいる車にかけよって眺める。
「これは……すごく機能的なデザインだね。年代ものなのに、手入れが行き届いていて新品みたいだ。すごいと思わないかい、戦前に造られた車が現役なんて……」
　熱く語り始める修を、夏朝はほほえましく眺めた。
「年齢に達したら、すぐ免許を取るよ。運転技術はあるんだけど……」
「僕も……いつか免許、取りたいなあ」
「いいね、一緒に取ろうよ」

　ヒストリックカーを見終わった後、赤レンガ倉庫の建物に入る。
「猫さん……いいな、可愛いなぁ」
　夏朝たちは、写真展の猫たちを、一枚一枚時間をかけてじっくりと眺めた。三毛猫、白猫、黒猫と、癒し系の写真ばかりだ。食い入るように猫たちを見つめている夏朝を、修はそっとほほえましく見守った。
「そうだな、可愛いな」
　展示が終わったすぐ隣のフロアは売店になっている。そこでも、二人は猫グッズや猫写真集に目を奪われた。
「冬物とかクリスマスのグッズもある……猫耳つきの毛糸の帽子、可愛い……」
「俺は、写真集とクリスマスカードを買おう。もうすぐその季節だしさ」
　売店には、冬物衣類のコーナーまであった。修がカジュアルなハーフコートを気に入り、試着してみる。
「ふふっ。八神君、すごく可愛いよ」
　コートのフードは猫耳つきだった。夏朝に可愛いと言われ、修は思わず口ごもった。
「八神君……ちょっとカフェで休もう。休憩しながら、午後どうするか相談しよう！」
　心ゆくまで猫グッズを買い込んだ夏朝は、上機嫌で近くのカフェに修を引っ張っていった。