あなたのお仕事！｜リアクション

あなたのお仕事！

　飛吹蓮太郎、36歳
　ある時はコンビニ店員、ある時はティッシュ配り、ある時は居酒屋の接客。
　しかしてその正体は……その名もイケメンフリーター！
　フリーター歴20年の大（？）ベテラン。
　最初、ミュージシャンになる為の資金稼ぎとして始めたアルバイト。
　いつしか生活費や息子の学費等々でどんどん消えていく。
　イケメンフリーター今日も仕事が山積み。
　今日は、彼のとある一日を見てみよう。

「いらっしゃいませ」
　朝のコンビニ。レジに立って、爽やかな笑顔と挨拶でお客さんを迎える物静かな男性。
　そう、彼こそがイケメンフリーター、飛吹蓮太郎。
「どうしました？　え、僕のキャラが違う？　顔見知りからツッコミが来た？」
　蓮太郎はカメラ目線になり、笑顔を浮かべる。
　なんだか朝の儚い光がキラキラ周囲で輝いて見える。幻覚だろうか。
「実は僕、朝起きるといつも身体が怠くなるんだ。まあ、身体を動かせばそのうち疲れが吹っ飛ぶよ……」
　じゃあ、お仕事の続きがあるから――そう言って、蓮太郎は今度は商品のチェックを始める。
　どう見ても物静かで儚い印象だが、一体普段のキャラはどんな雰囲気なのだろうか？

「ティッシュ、ティッシュはいかがですかー？」
　駅に近い昼の広場。電気屋の広告の入ったティッシュを配るのは、
「よっし、ひと箱終わってもうひと箱、ティッシュ配りだー！」
　我らが飛吹蓮太郎、らしい。少し質問をしてみよう。
「お、どうした？　え、俺たちはティッシュ屋さんじゃないからさっきの掛け声はおかしい？」
　朝と違ってワイルドすぎる様子の蓮太郎。
「フハハハッ！　細かいことは気にするなっ！」
　質問を軽くあしらい、目に付いた女性へとずかずか近づいていく。
「そこのレディ。この紙をどうぞ。なぁに、ティッシュのお代はあなたのハートで♪」
　随分と高いティッシュである。

「接客ぅ、HEY！」
　夜の居酒屋。手拍子に小気味よいリズムで応じ、料理を運んでくる。
「ここにおわすはビールに焼酎。チューハイ、発泡、なんでもござれ……おまちどぉ！」
　即興で唄い（美声）ながらテーブルに並べると、今度は会計に呼ばれて走っていく。
　言うまでもないが、飛吹蓮太郎である。
「うぅ……ん」
「おっとお姉さん、こんなところで寝たら風邪ひくぜ。タクスゥィー！」
　酔っ払いのお姉さんにタクシー（無賃）を用意し、当然とばかりお姫様抱っこしてお見送りする蓮太郎。
「え？　ここは居酒屋で、ホストクラブじゃない？　んなこと言っても、紳士的に対応するのは常識でしょ？」
　常識とは一体何なのか。
　常識といえば、彼の変貌ぶりも不思議なものである。
　もしや、掛け持ちし過ぎて精神が耐えられず、別人格を作り対応させているのだろうか。
「それじゃあ、今日はもう上がるんで」
　残念ながら、取材ではそのあたりは分からずじまいだった。
　帰る彼の背中を最後に、取材陣もお仕事を終えようと思う。

「……ふぅ」
　蓮太郎は疲労をにじませた顔で、夜のベンチに座った。
「『いい加減、安定した職に着け』か」
　先日、両親から言われた言葉を反芻する。
　その言葉は正しいと、蓮太郎は思う。
　彼には守るべき家族がいる。蓮太郎もまた、両親から守られたように家族を守るのが常道というものだろう。
「……でも、もう少し色んなことを経験してみたいんだよな」
　中指にした指輪に語り掛けるように、ひとりごちる。やがて立ち上がり、夜の街に歩み去っていった。
　きっと彼は、明日も働くのだろう。
　明日も頑張れ、イケメンフリーター・飛吹蓮太郎！

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あとがき

担当マスター：叶エイジャ
ファンレターはマスターページから！

シナリオにご参加いただき、ありがとうございました。
当初、参加された方を絡める気マンマンだったのですが、
皆様のアクションに書かれた仕事内容を見ていくうちに、「これ、絡めるほど字数が余らないぞ」という状態になり、
結局、個別に扱う形でお送りすることになりました。

皆様の仕事風景や、仕事中に感じるお気持ちなどをできるだけ多く表せていれば……と思います。
執筆しました立場から申しますと、お仕事はこれまでの経験や生活の経緯、考え方や生き方に関わってきますので、
アクションを見ているうちに、キャラクターとしての厚みが増すというのでしょうか、そういったものを改めて感じた次第です。
感じたものを伝わるよう書くのがマスターのお仕事ですね（汗）。これからも精進していきます。

それでは、改めましてご参加、ありがとうございました。
またご縁がありました時は、宜しくお願いします。

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