【生徒会総会】クラブ対抗！部費争奪戦ｂｙコメディエアー｜リアクション

【生徒会総会】クラブ対抗！部費争奪戦ｂｙコメディエアー

21．

　部費争奪の全体を統轄しつつ、実況中継を続ける武道。
　なんだか、校舎内が大変なことになっているらしい……。
　不安を押し隠しつつ、いつもの陽気さで、校庭の様子を伝える。
　と、見慣れた顔が、ようっと手を上げて挨拶してきた。

　桐野正也、冴木竜司。
　ともに陸上部の２年生である。。
　今回の部費争奪では、諸般の事情により、二人は陸上部の応援に回っている。
「やる気のある後輩たちに譲ったんだ」と、正也は快活に笑う。
　本当はグラウンドで走り回ってみたい気持ちもあったに違いないが、それを微塵も見せない爽やかさ、ポジティブさ。陸上部副部長の、度量である。
「精一杯、陸上部を応援させて貰うぜ！」鉢巻も凛々しく、熱い魂のたぎりを見せつける竜司。
　女性がからんだ時のエゲツなさは微塵もない、情に厚い後輩思いの先輩の姿がそこにあった。
　
　一騎当千の強者二人が、がっちり応援に回り、後輩たちを送り出す。
　陸上部の層の厚さ、絆の深さを思わせる姿だ。

　また後で会おうと、二人は観客席に戻る。
　彼らに合流するのは高梨彩葉。
「いやはや、まさか部費だけで、こんなお祭りさわぎになるなんて、誰が予想できたんだろうね！」
　彩葉の言葉に、もっともだと笑う二人。
　――参加は？
「私は参加せず、実況する側に回らせてもらうよー」
　女性の実況者は少ない。男性には気づかない、濃やかな視点からの解説は、重宝されるだろう。
「……そうだ、拓郎も参加してると思うから、探させてもらおう」
　彼女のつぶやきに、男子二人、顔を見合わせて笑う。
　陸上部一年の要、志波拓郎。彩葉は彼の思い人である。
　どうやら、良好な関係を維持しているようだ。

　丁寧な彩葉の会釈に、武道は手を振り返す。
　彼らの男気に、笑顔で答えながら、武道の心は落ち着かない。
　携帯電話を取り出し、素早く陽太に連絡をとる。

　映し出された画面の、焦燥に満ちた文面を、陽太も目にする。
　彼も、武道の不安を共有していた。

　コメディエアーの濃度が、思った以上に濃くなっている。
　それは予想されたこと。多少の破壊行為も、コメディエアー的なアレで回収される。
　ただ、そうすると恐ろしいのが……。
（反則……）
　あらゆるスポーツにおいて、ゲーム自体が過熱するのと、ルール的な縛りがきつくなるのは、正比例の関係にある。
　些細な反則が厳罰化され、結果として本質が見失われる。
　まして相手はコメディエアー。
　ルール無視が、いかなる混乱をもたらすとも限らない。
　
　――次善の策は、打っておくべきだろうねぃ……。

　校庭では、陸上部の歓声が響いている。

　陽太はそっと、粘土細工にろっこんを仕掛け、校内へ向かわせる。
　危険な目に、みんなを合わせる訳にはいかない。