モズのはやにえ？　ガラクタツリーの怪！｜リアクション

モズのはやにえ？　ガラクタツリーの怪！

【ほのぼの空間】

　八神達が作戦を実行している間。

「小鳥さんなでなでぽふぽふなのですー」
「あー！　ゼロちゃん、いいなぁ」
「あさひさんもなでなでぽふぽふしますですかー？」
「ふふ、ゼロさんも鳥さんとお話しできるんですか？」
「お話しはできないですけど、鳥さんは好きなのですー」
「そうなんですか？　でもモズさんはゼロさんとお話ししてますよ？」
「この小鳥さんはモズさんって言うんですかー。あらためて、モズさんおはようございますなのですー」

　ガラクタツリーの回りは、先ほどまでの様子とは異なり、ほのぼのムードが立ちこめていた。
　ゼロが話しかけたモズは御巫の語りかけもあってそのまま残り、二人の間を行ったり来たりしている。
　椎名は目を輝かせ、愛用の二眼レフカメラで思う存分写真を撮っていた。

　そんな光景を見ながら、とりあえずガラクタ整理を続ける二人。

「……えっと。私、部屋に戻ってもいいのかなぁ」
「いやいや、まだ片付けも残ってるしさ。羽生さんものんびりしたら？」
「のんびりも好きなんだけど、その……ゲーム……」
「ん？　なんて？」
「え、ううん！　何でもない何でもない！　さ、危ないものだけでも片付けちゃおう！」

　羽生は不自然すぎるほど素敵な笑顔を振りまき、危険物を選り分けたバケツを持って寮内の回収所へ運んでいった。
　首を傾げながらもゴミと落とし物を選り分ける日暮は、軽快な足音に振り向く。
　風雲児だ。

「戻ったぜ！　って八神達は？」
「今、深遠なる作戦を実行中。結局、カラスはどうしたの？」
「ん？　いや、引っ張っていったら段々少なくなって、いなくなったぜ」

　本当は人目のないところまで誘導し、ザ・ストレイトに変身することでびっくりさせて追い払ったのだが、それは秘密。
　日暮は細かいところまで追求せずに頷いた。

「風雲児くん、お疲れ様」
「今いるカラスも誘導するか？」
「いや、御巫さんが『話』をしてくれたみたいだから、今のところ大丈夫だって」
「そっか。すごいな」

　風雲児は素直に感心した。
　戦わずして制す。それもまた一つの力だ。自分にはできないかもしれない。
　しかし、逆に自分にしかできないこともあるのだろう。
　今はそれを信じて努力するのみ。

「じゃ、八神達が戻ってくるまで作業再開しておくか」
「そうだねぇ。ただ待っているのもなんだし。そうしますか」

　日暮が立ち上がり、背伸びした。軽く肩をまわす。
　弾むような軽やかなステップを踏みながら、羽生も戻ってきた。

「あ、風雲児君、お帰り」
「オス！　カラスも少なくなったことだし、あと少し頑張ろうぜ！」
「お、おー！」
「……羽生さん、笑顔がちょーっとだけひきつってるねぇ」
「そ、そんなことないよー！」

　爽やかに、困ったように、そして面白そうに。
　三者三様に笑いながら、再びはしごや脚立の準備をする。

　木の周りでほのぼの空間を作り上げていた面々が、急に歓声を上げた。

「あー。別のモズさんが来たよー！」
「なんだか白いものをくわえているのですー」

　椎名の指摘に仰ぎ見ると、もう一羽モズが少し離れた枝にとまった。
　輝く飴玉が埋め込まれた牛脂を枝に突き刺し、盛んについばむ。
　
「……あ、よかった。美味しいって。やっと食べられた、って言ってます」
「モズさんはお腹がすいてる子だったですかー？　こっちのモズさんも食べにいってらっしゃいなのですー」

　先ほどまで遊んでいたモズはもう一羽の様子を見て、居ても立ってもいられないように枝の上を跳ねていたが、ゼロの一言に慌てて飛び立った。

　御巫以外にもモズの声が聞こえてきそう。

「なんだかとっても嬉しそうだねー」
「ええ。よかった……」
「ゆっくりお食事してくださいなのですー。またねー、なのですー」

　ゼロが柔らかに手を振った。御巫も微笑みを浮かべて見送る。

　椎名は何かに気がついたように瞬きすると、カメラを構えた。
　速やかに、しかし丁寧にシャッターを切る。
　切り取られた風景は、きっとこの上なく優しくて思わずニコニコしてしまう。そんな写真だと信じて。

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