色づく季節、新生徒会の日常｜リアクション

色づく季節、新生徒会の日常

●激レア焼きそばパンと俺

　――説明しよう。
　激レア焼きそばパンとは、購買部でお昼にたった１個のみ販売されるスペシャルな食材を惜しげもなく使用した、スペシャルな焼きそばパンのことである。かつて、『焼きそばパンＤＸ』、『コズミック焼きそばパン』などを巡り、学生たちは血で血を洗う激闘を繰り広げた――というのは流石に大げさだが、知力、体力、時の運を賭けた本気の競争が行われてきたのは周知の事実である。
「激戦を制して手にした激レア焼きそばパンという栄光をレディに捧げたら、いったいどんな素敵な笑顔を見せてくれるだろう――俺のこの純粋で崇高な思い、分かってもらえるかな？」
「ごめん。ぜんぜんわからない」
　五郎八がばっさり切って捨てれば、エヴァも呆れ顔で尋ねる。
「たしかに激レア焼きそばパンは食べてみたいけど、それと北校舎２階の会議室にどういう関係が？」
「ほら、階段は購買部に押し寄せる学生が集中するだろう？　それを避ける手段として、屋外に予め体操用具やロッカーなどを積んで足場とし、借りた部屋の窓を経由して購買部へと駆け込む作戦なんだよ」
　意気揚々と語る信彦に、一同ため息の嵐。
「……そういう理由でよく部屋が借りれると……」
「だからさ、さすがの俺もコスプレ部のミーティングだって方便を使わざるを得ないかなーと思ったわけさー」
　チラリと武道を見遣る。武道は笑っていたけれど、決断を下す段になるとちょっと表情を引き締めた。

「わかった。こうしよう。それ面白いからやってみたらいいんじゃないカナー？　ただ、生徒会として許可は出せない。つまり――俺たちは何も聞かなかった。それでどう？」
　つまり武道は、信彦に自己責任でガンバレ、と言っているのだ。
「ほれ。会長殿は実質おーけーを出したのじゃ。礼を言わんか！」
　いいなにせっつかれて信彦は頭を下げる。
「感謝するよ！　そーだいーなっち。もし明日激レア焼きそばパンを手に入れることができたら一緒に食べないかい？」
「んなっ！？」
　いいなは、ぎょっとして視線を泳がせる。そんな風に女性扱いされるのは苦手なのだ。
「ってそうじゃ、こうしている場合ではない。五郎八殿、儂は勧誘ビラを印刷してくるのじゃ！」
　いいなは、ばびゅんと生徒会室を飛び出す。

（ひー、危ない危ない、ろっこんが発動するところじゃったわ！）

「おや」
　飛び出したところで、ちょうど生徒会室の戸を叩こうとしていた森蓮とぶつかった。
「す、すまぬ。急いでおったもので」
「いえ。私は大丈夫です」
「そ、そうか。ではな」
　足音も高らかに走り去るいいなを見送り、蓮は改めて生徒会室の戸を叩く。

「――失礼します」

　◇　◇　◇

　そのころ。
　トワの行方を探して街中をうろついていた楓は、ねこったーで有力な情報を発見した。

　＜高校の敷地内に金髪の幼女がいるんだけど＞

「これだああ！！！」