色づく季節、新生徒会の日常｜リアクション

色づく季節、新生徒会の日常

●カラスが鳴くから帰りましょ

　そうこうするうち日は傾き、いい時間になっていた。
　ビラを印刷し終えたいいなが再び生徒会室に顔を出す。
「五郎八殿～出来たのじゃ……って、まだがむ談会議とやらをやってたのかの？」
「今終わったとこだよ。じゃあ、これにて今日は解散！」
　武道はスパッと宣言し、皆に帰宅するよう促した。帰り支度をする武道に刀が声をかける。
「先輩、米が切れたんで帰りに寄ってもいいですか？」
　武道の下宿先は旧市街商店街にある米屋なのだ。
「もちろん。じゃあ一緒に帰ろう。支度終わるまでちょっと待ってて」
　その間に刀は、他にも旧市街方向に帰る者たちに声を掛ける。
「時間も遅いし寝子電使うし、ブランシェと大田原も一緒に帰らないか？　家、旧市街だったよな」
「じゃあご一緒しようかしら」とエヴァ。一方いいなは、
「儂は五郎八殿と桜花寮の方を通って帰るのじゃ。帰り道がてら打ち合わせもしたいしの」
「じゃあ、五郎八ちゃんといいなっちは、俺が送るよ」
「信彦殿、星ヶ丘寮は反対方向じゃろうが」
「いやー女性二人で帰すわけにはいかないよー」
「まったく……」
　そんな信彦といいなのやりとりをしり目に、猫鳴館に帰る博美と蓮が「お先に」と辞して行く。

「トワちゃんまたね」
　恩は手を振り、トワも出てゆく。楓はそれを追って退室しがけに、振り向いてこう言った。
「今日の事は礼を言う。この礼はなるべくすぐ返す、絶対に」
「そんなに気にしなくてもいいわよ」
「借りは返す主義なんだ。あと、……アレと仲良くなりたい奴がいたら助かる。あいつが自由で居られる時間も場所も少ないし、何より俺の精神的な意味もでもな……ってアアッ！」
　１０秒以上目を離したのが運の尽き。――トワが、またいない！
「くそっ！　今日は厄日かよ！」
「苦労するわね。また何かあれば、いつでも来てね」
　つむじ風のように走り去る楓を見送って……恩はしんみりと今日という日に思いを馳せた。

「ねぇみんな、役職に当選してこうして生徒会室にいて……どうかしら？　何か感じちゃう？」
　そうですねー、と梢が答える。
「副会長になって、ですか。忙しくなったような、実はそうでもないよーな？　これから変わってくるんでしょーかねー。ともかく肉体労働より頭脳労働、頑張ります！　早坂先輩はどうなんですか？」
「私はなんだかこういうのって慣れてないからそわそわしちゃうわ。色んな話を聞いたりたまに議論したり……でも、なんか生きてるって感じがするわねぇ」
　それを聞き、武道は黙って恩の肩を叩いた。陽太もにっこり、反対側から肩を叩く。
　ただそれだけなのに。恩は胸の中に温かいものが流れ込んでくるような、そんな気がした。
　今日はたくさん話したけれど、彼らのあたたかい微笑みが、ほんとうはなにより雄弁。
　なのかもしれない。

「さ、みんな鍵閉めるぜぇい！」
「俺は居残りします。まだ書類作業残ってるので」と修。「鍵は俺が締めるからどうぞお先に」
「ん。あまり遅くならないようにな」
「明日、書類確認お願いしますね」
「了解。じゃあお疲れー」

◇

　シーサイドタウン駅から寝子電で一駅、寝子島駅で降りて参道商店街の通りへ。
　秋の日はつるべ落とし。あたりは暗く、一部の店はもうシャッターが下りている。
　エヴァと別れ、刀は武道とふたり、彼の下宿先である米屋への道をゆく。

「そういえば、この学校って理事長のノリがいいからイベント多いですけどクリスマスや新年のイベントやるんですか？　生徒会主導でそういう催し物をやったら楽しいと思うんですけど、ダンスパーティーとかそんな感じで。終業式か始業式が終わった後とかいいんじゃないのかな」
「お。イイネー。今度それ、検討してみる」
　刀はこの先輩のことが好きだった。芯のある熱い先輩だと思う。
「新しい生徒会、雰囲気いいですね。俺、先輩を推薦してよかったです」
「よせやい、照れるジャーン。でもま、頑張るよ」

　ふたりは静かに空を見上げる。
　流れ星がきらり、まるでみんなにエールを送るかのように、秋の夜空を駆けていった。

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あとがき

担当マスター：笈地行
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新生徒会の日常風景、いかがだったでしょうか。
ドタバタあり、議論あり、勉強になる話あり……楽しい新生徒会さんの様子が描けていれば幸いです。

校長先生の長いシトラス・ガムダン話＝ガム談はナイスネーミングですね。

ガム談、短くなることを祈って！

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