折り紙で遊ぼう！｜リアクション

折り紙で遊ぼう！

【『土んなか部隊』との決闘、その後──】

　同じく、机が殆ど後ろに下げられた展示教室の綺麗に磨かれた床に、苑下ちかは座り込んで作業に没頭していた。
　こちらは正方形の紙を、端からぐるぐる丸めるように切ったミミズや、

「もういっこぐるぐるー。
　もっとぐるぐるー。
　これはな目ーかくねん、そしたらヘビになんねん、な？」

　長く切った折り紙に可愛らしく丸い目を書けばあっという間にヘビになる──少しの手間でバラエティあふれる光景を、無くなったペンを借りに来た二人──楠木ゆきのはその様子を無言でじっと、東条あんずは驚きを込めて見つめていた。
「………………」
「おおっ、すげー！　どんどん増えてく！」
「まだまだ、これからやで」
「よし、ゆきの！　うちらも可愛らしく目描こうぜ！」
　二人がこちらの教室にあったペンを借りて、自分の作品に一生懸命に目鼻を書いていく。

　その間にも、ちかはどんどん土にいる生き物を作っていった。ちか命名“土んなか部隊”である。
　次に出てきたのはダンゴムシ。
　こちらも丸まっているものや伸びているもの、色は赤や青やピンクなど、かなり種類豊富だ。
「ピンクのダンゴムシー？　いや、そんなの格好良くないだろ！」
　側らで、竜を作っていた白石龍樹が興味深そうにちかの作品を覗き込む。
「あほか、ぴんくのまるむしかておってええやろ。
　かいらしやろ、ぴんくのんが」
　龍樹の言葉を蹴り飛ばしつつ、相手にピンクのキュートさをアピールするちか。
　他にも、苦戦しつつも自分の抱き枕そっくりの可愛らしいオケラや、余りの難しさに角を断念したカブトムシのサナギ(メス)を次々と作り出していった。

「ほら、地底部隊ぎょーさんできてきたわ。
　わっさわさや」
「こいつら、いったい何なんだ？」
　龍樹の質問にちかが胸を張って答える。
「これはな、地底人や、地底人」
「地底人……ってことは、悪役だよな！　強そうでも戦ったら勝てるな！
　正義は勝つ！」
「あっほやなー、わるもんちゃうで。
　ええやつやで地底人。
　そっちなんや？」
　そして今度は龍樹が胸を張る番だ。

「こっちはドラゴンだぜ！　漢字で何だかカッコいい字書くやつ！」
「カッコいい字……それなら、地底人にも土竜(つちりゅう)って書くやつおんで？」
「土竜……！　何だかカッコいいな！」
　いわずもがな、土竜は“もぐら”である。
「そこまで言うなら勝負や。地底人は国境のないええやつなんやけど、間違ってたら説得せなあかん」
「よし、その勝負うけて立つぜ！」

　こうして、戦いの火ぶたは切って落とされた。
　場所は展示教室。作りながら、次々とお互いの作品を展示していく。
　“他のこの展示物に迷惑掛けないように。時刻は、他の皆の展示も考えて、午後２時半まで”
　お互いに決めたルールに細心注意を払いながら、
「うりゃあ！　ドラゴンファイアー！」
「なんのっ、オケラカウンター！」
　という掛け声と共に展示していく。その時々にどちらに勝敗が着いたのかは“当人たちにも分からない”程、それは白熱していた。
　展示は、立体的に──ドラゴン組が、机という崖の上からあおっていくスタイルなら、落ちて来るのを地底部隊が、なかよしになるために今か今かと追い立てる態勢である。

　結果は──タイムアウト。

「なかなかやるな……！　時間切れか。
　年下の女の子なんかに負けるかと思ってたけど、甘かった……！」
「土ん中部隊も、なかなかやろ？」
「また今度やろうぜ！」
「せやな。
　そうや、今度やる時はドラゴン、オレンジんのも作ってや。
　今日はかっこうええのたくさん見たから、ちかのもぜひ見たいんや」
　オレンジは、見れば見るほど元気になれる、それはちかのトレードカラーだ。
　こうして、二人は長い戦いの果てにその約束をして、強く固い握手を交わしたのであった──

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