折り紙で遊ぼう！｜リアクション

折り紙で遊ぼう！

【ドラゴン軍団ができるまで】

　白石龍樹の、ことの始まりはテレビにあった。
　
　冬休みの始まり。偶然見ていたテレビで、折り紙の技術を持つ人物が集まり、各々の腕を競う番組で──とある人物が『神竜ニャハムート』という、ゲームにも出てきそうな両手一抱え位のドラゴンを、なんとハサミで切れ込みすら入れずに、たった一枚の巨大な紙から作り上げていたのだ。
　鱗も尻尾も、もちろん羽根まで実在しそうなその迫力。
　そして、偶然にもそのタイミングを後押しするように、折り紙の展示会をやるというお知らせ。

　その時、龍樹は誓った。
「俺も、『ドラゴンマスター』になる！！」
　──これは運命に違いない──！　龍樹はそれを察知して、折り紙展示会に参加したのである。

「うーん、見つからねえ……」
　龍樹は図書館から頭を抱えて戻って来た。
　タイミング的には、到着した時、折り紙の本は無くもなかったのだが、探していたのが、
“カッコいいドラゴンが折れる本”
　まさに、ピンポイント過ぎて見つからない間に、気が付けば通常の折り紙の本まで無くなってしまったのである。

「まあ、何とかなるだろ！」
　龍樹はスッキリと頭を切り替えて、再び紙を探して教壇前まで戻って来た。
　紙にはまだ余裕があり、龍樹はその中から、やはりとてもカッコ良くて強そうな、金色の一番大きい折り紙を使う事にした。
「これなんか強そうだよな！　カッコいい！」
　しかし、手に持つ触感に少しの不安。

「金紙って固くて折りづらいよな……他のも使うか。
　──そうだ、一体だけじゃなくて軍にしよう！」
　複数の折り紙に名案が浮かぶ。
「たくさんのドラゴン作って、がーって──」
「ガーッ！！」
「わーーーーっ！！」

　同じ教室とはいえ、龍樹の意識の外から重なるように、声を上げたのはトワ・E・ライトフェロゥだった。
「もう耐えられないマス！　トワはもっとーガッとやってバッとやるたいデス！
　Open the door of the heart！(心の扉開くように！)」
　O.E.O.H.Sノヨー二！！」
「……お、おう！」

　それは、龍樹が思わず相槌を打たなければならない位に切羽詰まった叫びだった。
　補足すると“O.E.O.H.S”とは、とある所である日突然、１日限定で出現した某『オンライン・エンジェリック・オーラ・ヒーリング・セラピー』である。
「……doorならトワでも作れるデス！
　フジコの扉作るマス！」

　──その日にらっかみのドアを叩いた、極めて死線が見えそうな存在の召喚は禁止されている。可能であっても、絶対禁止である。

「よ、よく分かんねーけど、その扉を作っちゃダメなことは分かった！！
　せっかくガーッて作るんだったら、オレと一緒にドラゴン作らねえ？
　たくさん作って軍にしようと思ってるんだけどさ、俺一人だと展示まで間に合いそうにねえし」
「oh, dragon！　素敵マス！　早速作るまショウ！！」

　そうして、二人は折り紙を持って展示室の方へ向かった。こちらに紙を持ち込み、作りながらリアルタイムで展示する方向である。
　しかし──二人の作業は難解を極めた。
　何しろ二人揃って本がない。鶴から始まる基本だけしか覚えていない状態で、最初から独創折り紙のクオリティを強要された結果……

　竜は、一時期ネットで流行した“脚が生えて、電気磁石で踊る鶴”を更にガタガタにしたものとなった。これ以上は無理だった。これが最善を尽くした結果だったのだ。

「……これ、dragon違うマ……」
「めんどくせえ、形は変でもソウルがあればいいんだ！」
　と──父ちゃんも言ってた。と言葉を繋げる龍樹。

「これがオレのドラゴンだぜ！！」

　龍樹が胸を張る。
　小学校のこの世界では信じる者ほど勝者である。
　よって、そこには確かに龍樹のドラゴンが存在していた。