折り紙で遊ぼう！｜リアクション

折り紙で遊ぼう！

【水族館とうさぎ園】

　その頃──同じ教室内で、一冊の机に折り紙の本が見やすい様にＬ字型に椅子を置いてテーブルを囲む、水カジカと赤銅スフィアの姿があった。
　二人は互いに一冊の本を譲り合いながら見比べて、手元にある紙を少しずつ折っていく。

　スフィアが開いたのは“うさぎさん特集”というページ。顔だけのものから、きちんと一枚の紙で折れる胴体付きのものまで、その折り方が事細かに載っている。
　その記載された順番に則って、スフィアも様々な色や形のうさぎを折り始める。
　最初は顔だけのうさぎ。次は体の付いたピンク色のうさぎ。最終的には、裏表で色の違う紙を使った手腕のいる立体うさぎ。
「(うん……これも、パパとママと作ったことがある……)」
　スフィアは再実感しながら思い出していく。
　両親が教育の一環として、正しく折り紙を作り上げて完成させる事をスフィアに教えていたことから、その作品の一つ一つは、どんな簡単なものでも、とても丁寧だ。
　それでも、折るたびに、
「(せっかく教えてもらったんだから、きちんとしたものを折らないと、ママとパパに帰ってきてもらえないかもしれない……)」
　つい、そんな気持ちが募ってしまう。
「(しっかり作って、パパとママが見た時に褒めてくれそうなもの……)」
　そう思うと、更にスフィアの手がプレッシャーで重くなる。

　その傍らでは、カジカが“おさかなさん特集”というページを開いては折り方を確認して、本を置き、覚えた手順をそのまま紙に折りつけていた。
　ふぐ、かに、あざらし……難しい手順も、何度も本を捲りながら一生懸命折っていく。こちらが目指すは水族館だ。

　折り入れた紙を差し込みつつ、大きくしっかりした幾つもの箱を作って、その横の窓枠から見えるように、折り紙の魚をどう置くかで試行錯誤する。
　実際の展示は向こうの教室だが、折り紙の水族館にも紙のお客さんを作って案内したいと思っているカジカにとって、ここでイメージを決めるのはとても大切なことなのだ。

「……さんまさん、と、まんぼうくん……」
　寝子島大使のこの二匹は、水族館の案内人。
　折り始めて完成した細長い形の魚に、ペンで足を書き足した。
　そう言えば、離れた所でペンが無いという声を聞いたような聞かなかったような……記憶を辿って、必要ならば用が済んだら渡しに行かなくては、とカジカは強く心に留める。
　一緒に作り始めた“まんぼうくん”は、紙風船から出来るだろうかとオリジナルの折り方も工夫してみる。
　──出来上がりは、上々。
　夢にあふれる子供にとって、サンマさんとマンボウくんには“中の人などいない”のだ。その為、直立歩行でもしっかりと立つように作られた二匹はなかなかと言っていい出来栄えだ。

「お客さん……」
　案内人は完成。次に作った“人”からペンで顔を書いていく。
　右のお客さんはお父さん、左のこっちはお母さん。どちらもとても良い笑顔。

　しかし、それでも……足りない。
　そう思ってカジカが顔を上げた時、その瞳には目を輝かせてその作品群を見つめるスフィアの顔があった。
「あ……」
「──！」
　気づかれた、とスフィアが恥ずかしさの余り慌てて逃げ出そうとするが、途中何もないところで転んでしまってうまく立ち上がれずにあわあわと廊下間際で慌てている様子が目に入る。
　カジカが慌てて追い掛けて、手を貸してあげた。
「……大丈夫……？」
「……う、うん」
　上手く逃げ切れずに恥ずかしさの隠しきれないスフィアにカジカは少し緊張しながら告げた。

「いま、水族館……お客さん、いない……
　お客さん──なって、ほしい……」
「うん……！」

　あんなに大きな水族館のお客さんはきっと楽しいに違いない。
　スフィアが嬉しそうに頷くのと同時に、展示室の方から声が響いた。

「でりゃー！　『ドラゴンキーック！』」
「なんのっ、それならこっちは『サナギバリアー！』や！！」