熱血！　寝子島不良外伝！　～西鬼末旧聖主伝説～｜リアクション

熱血！　寝子島不良外伝！　～西鬼末旧聖主伝説～

【男を補足する】

　最初に男を補足したのは、北校舎を三階から一階まで探索し終えていた御剣刀だった。
　桜庭円は演劇部で変装を終えて、南校舎の屋上へ行ったと連絡があり、刀も同時に北校舎の屋上から探すことにしたのだ。
　サキリもまた南校舎を探索しているが、ちょうど円とサキリで上下からはさむ感じになった。
　が、屋上に到達した刀にある光景が目に映る。
　給水塔の付近で何から機械を操作している男がいた。
「おっと？」
（なぜこんな分かりやすい場所にいる？）
　思わず大当たりを引いてしまった刀。
「やっぱり映りませんね～」
　給水塔の影に隠れて、何らかの機械を通して運動場を見ているならそうだ。
　そして、運動場はろっこんの効果か何かで、うまく映ってないようだった。
（……あの男、どこかで見たことあるような。既視感を感じる）
　夜なのに黒スーツにサングラスをしているこの男に、どこかで会ったというのだろうか？
　実は、はっきりと顔まで覚えているのが約一名だけいるが、その人物はまだ来ないだろう。
（とりあえず、捕まえてみよう）
　がちん、と頭の中で撃鉄を落とすイメージを出す。
　そうすることで刀はろっこん【加速】を発動させることができる。
　だが……。
　ボムッ!
突如、煙玉が近づいた刀の周囲を取り巻く。
「細工は流流仕上げを……というわけではないですが」
「……もれいび、か」
「ご明察」
　刀の横をすり抜け、給水塔から屋上入り口までダッシュする男。
「逃がすか！」
　追いかける刀。
　当然、さっき煙玉は外から見ている修にも、南校舎にいた円にも見えるだろう。
「つまり、追い続ければ複数で囲える！」
　そう考えて、入口側に回ろうとする刀。
「……ふぅ、やはりもれいびというのはどうも割に合わない。私はただ好奇心のままに生きたいだけなのに」
「ほざけっ！　わざわざ校舎への放火の手助けとか何考えてるんだ！」
　さすがに腹に据えかねたのか刀は男に噛みつくように言う。
「あらよっと」
　しかし、一瞬刀の気がそれた瞬間に、男は入口のドアに入ろうとする。
　だが、それはサキリによって防がれる。
　すでにしまわれている携帯には修からの緊急メールがあった。
　この二人は何かあったら連絡を取り合うように約束していたのだ。
「形勢はこっちに有利だな。投降したらどうだ？」
「えー逃がしてくださいよぅ」
　刀の質問にのらりくらりとかわす男。
「なら、無理やり吐かせるまでだな」
「資格があるならば、いくらで。しかし、2人でどうにかできるとでも？」
「――あぁ？」
　サキリがナイフを手し、脅すように言う。
　しかしそれでもなお、男は態度を変えない。
　そんな男の姿にサキリの雰囲気が変わるが……。
「ふふふふ」
　男はなお、不敵に笑う。
　屋上の戦いは、始まったばかりであった。