熱血！　寝子島不良外伝！　～西鬼末旧聖主伝説～｜リアクション

熱血！　寝子島不良外伝！　～西鬼末旧聖主伝説～

【執念の塊】

　西鬼末は、空にキャンプファイヤーの丸太を投擲する。
　何をする、と問うまでもなくそこにいた雨崎荒太郎に直撃する、かのように見えた。
　ろっこん【コノオオゾラニー改】で急速に接近していた荒太郎だが、さすがに地面に落ちる。
　しっかりと両足で大地を踏みしめ立ち上がった荒太郎に西鬼末は言う。
「きぃ～たぁ～かぁ～っ！　いいねぇ、そうじゃなくっちゃいけないねぇ！　テメェなら来ると思っていたぜ！」
「うぉぉぉぉ！！！！　来ると思っていたぞ西鬼末！　おれは逃げも隠れもしない！」
　そのまま二人は急接近したかと思うと、至近距離で殴り合う。
「この兜、お返しだっ！！」
　荒太郎の装備は消火器とそれに括り付けた兜のみ。その兜で西鬼末を思いっきり殴りつける。
　がつんっ！　とその一撃は西鬼末に入る。
「いいねぇ！　この血っ！　ひひひひひっ！」
　甲高い声で西鬼末は叫ぶ。兜で打ち付けられ皮膚が削れたそこにそっと手をやると血をぬぐう。
「だがよぉ、それだけか？　あぁぁんっ！」
「うるせぇ張っ倒す！」
　だが、いくら力が増したとはいえ今までのようにしっかり準備をして挑んだわけではない。
　西鬼末に対して叫び返した荒太郎だが、がくりと膝をつく。
「オラオラオラぁ！」
　そこに拳のラッシュが来た。
　殴る、殴る、殴る。
　とっさに顔をかばうが、そのまま腹に思いっきりストレートが入った。
「ぐっ」
「死にさらせっ！」
　そのまま仰向けに倒れた荒太郎の首元に、思いっきり足を踏み下ろす西鬼末。
　このままだと首を折られるっ！　しかし何もできない。
　その時だった、一発の硬球が西鬼末の足に当たりバランスを崩した。
「ちぃ」
　そのまま複数の硬球が西鬼末へと飛ばされる。
　これは、ろっこん【鬼人の体（サード・フォース）】によって身体能力を強化した新田亮が放ったものだった。
「ここは俺達の学校だ。放火なんてさせるものか！」
「しゃらくせぇ！」
　すぐに西鬼末は体勢を立て直し、立て直しに遅れた荒太郎の足首をつかむ。
「このっ！　放せっ！」
　荒太郎は暴れるが、そのまますさまじい力で放り投げられる。
　その間に、西鬼末の顔に飛んできた硬球はフルフェイスの新しい兜にはじかれた。
　当然、フルフェイスなので顔は隠れてしまっている。
　そのまま投げられた荒太郎は、亮の手前に転がされる。
　ぶつからなかったのは、荒太郎のろっこんのおかげだろう。
「くそっ！　なんてやつだ！」
　亮は寄ってきたほかの不良に硬球を投げながら、西鬼末を見る。
　その瞬間、ゾクリと肌が泡立つのを感じた。
「ひゃーーーーひゃっひゃっひゃっひゃっ！　囲め囲め！」
　笑っている。
　戦いの前、亮はこう思っていた。
（本気で投げると相手の命が危ないので、多少は加減する）
　だがどうだろう、目の前にいるアレは、黒く大きなアレは。
　亮はゆっくりと息を吐き落ち着こうとする。
（手加減……すべきだったのか？）
　荒太郎を助け起こしながら、亮は西鬼末をじっと見る。
「西鬼末……なんであんなのがいるんだ」
　それは、だれもが思った、あるいは思いながら戦っていたことだった。
「それでも、寝子高は踏み越えていったから、だから今回もやらないとね？」
　はっと亮はして隣にいる荒太郎を見る。
「そうだった、まずは目の前の雑魚をなんとかしないとな」
　亮は気合を入れなおす。
　まだ、決着はついていない。