<あらすじ>
現実と霊界にまたがって存在している幽霊マンション『Y』。
漂うイヤな『におい』は、寝子島の幽霊たちの顔役でもある餅々 きなこの過去に関係がありそうで――。
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五角形の形をした四階建ての廃墟を探索した一行は、一階にある黒いドアの前にいた。
ドアの前に黄色い服を着た男の子の霊が立っていた。
そういえば、と
青木 学は常に片手に持って撮影を続けていたハンディカメラの映像を見返す。
「4階の霊、3人だったよね。両親と三つ編みの子。でも絵には黄色い服の男の子がいた」
それを聞き、
龍目 豪は管理人室で見た記事を思い返した。
――谷守 寛さん(44)とその妻・緑さん(40)、トモコちゃん(9)、ヒカルくん(6)の一家四人が――
「もしかして、
ヒカルくん?」
名を呼ぶと、うっすらとした姿の彼は微笑んでドアの中にすうっと消えた。
「待ってくれ」
追いかけるように黒いドアに取り付くと、開かなかったはずのドアが開いた。
湿った冷気が足元に漂う。コンクリートの小部屋の中は薄暗く、床面に井戸のような穴が空いている。
懐中電灯で照らしてみるが、穴の中は岩肌がごつごつしたままの空間で底は見えない。
「これは……地下への入口か……?」
「この先から『におう』のかい?」
三毛谷 道哉が問いかけると、きなこは青白い顔で頷いた。
――あたらしいたてものから、ふるいにおいがするのがいやなかんじなの。
建物の前で、きなこがそう言っていたのを思い出す。
古く澱んだ気配が闇の中にあるのを、道哉も肌で感じていた。
「これは――
ヌシがいるかもしれないね」
「ヌシ?」
白 真白が道哉を見上げると、道哉は黒い帽子を押し上げて答えた。
「頭に刀のような角が生えた黒い蛇はおそらく
ヌシの使いだろう」
ヌシとは『生き続けたもの』のことだ。
ひとところに棲み続けて、長い年月をかけて元とは違うナニカになったものを総じてヌシと呼ぶ。
川のヌシ、山のヌシ、沼のヌシ、屋敷のヌシ……ヌシは永く生きて場に宿る。
巨大になった身体や、強大な霊力を持つことが多く、信仰の対象となっているものも少なくない。
ヌシは自ら棲み処と定めた場所を守ることもあれば、場を穢したり立ち入る者に害なすこともある。
ゆえに古来よりヌシたちは崇められ恐れられてきた。
「404号室で見つけた矛先に刻まれていた
箭括麻多智(やはずのまたち)――
夜刀神(やとのかみ)とやらを倒した豪族の名前だっていうけど……」
学が顎に手を宛て考えこんでしまったので、真白がその後を引き取った。
「それって中庭の社の中から消えてた御神体なのかな」
「残っていた跡と形状は合うね」
「だとするとヌシは夜刀神?」
二人のやりとりを聞いていた豪は、ちょっと苦笑いをする。
「神なんて名が付いてるやつとやり合いたくはないが、そんなのと餅々にどんな関係が……?」
豪の疑問は、きなこにとっても謎らしくふるふる首を横に振る。
「おもいだせないけど、よくないことがおこりそう。
こんなに『におって』たら、そのうちにれいかいに あくえいきょう がでちゃう。
れいかいとねこじまはつながってるから、ねこじまのほうにだって……」
「実際もう、マンション『Y』は人死にも出てたし、このままにしておけないよな」
豪が言うと、真白も眦を鋭くした。
「そうだよね。ヌシは生き続けたもの、ってことは実体はある? だったら、私のコレも役に立つかもね」
真白の手には、ろっこんで鋼鉄のように硬くした折り畳み傘がある。
「ここまで来たんだもん。鬼が出るか蛇が出るか……確かめてみようじゃない」
こんにちは。
ゲームマスターを務めさせていただきます笈地 行(おいち あん)です。
青木 学さん、龍目 豪さん、三毛谷 道哉さん、白 真白さん、
ガイドにご登場いただきありがとうございます!
きなこちゃんの過去や『におう』ヤツを追って
調査したりバトルしたりするようなシリーズ、2回目です。
上手く行けば今回で解決する……かもしれません。
今回からのご参加も大歓迎です!
マンションは「霊界」にあります。今回から参加の場合は、
・霊界できなこから招集を受けていたけれど遅れてきた
・偶然幽霊マンションの傍を通りかかって迷い込んだ
・パンダたちの配信を見ているうちに引き込まれ、遅れて合流した
(どこかで迷って、物珍しくて見て回っていてなど)
など、ここから合流という感じでどうぞです。
マンション『Y』地下について
※以下はプレイヤー情報となります。キャラクターは探索を進めるにつれて知ることとなります。
井戸のような穴を縄梯子で降りていくと地下洞窟があり、
迷路のような細い道が続いています。
地下洞窟内部は湿っており滑りやすいです。
途中で3か所、分かれ道があります。
分かれ道1:左、右
分かれ道2:上、下
分かれ道3:左、中、右
正しい道を選ぶと、最奥部の鍾乳石の広間に着きます。
間違った道の先には、
マンションにも出ていた『額に角のある蛇=ヌシの使い』がいることが多いですが
なにか発見がある可能性もあります。
●ヌシの使い
額に角のある蛇。黒っぽく紐上で30センチ~1メートル程度。群れる事が多い。
あやかしの一種で、実体があるので物理攻撃は効く。
●ヌシ
最奥部の鍾乳石の広間にいるナニカ。
巨大でぬめる身体。蛇に似ているが、身体が幾又にも枝分かれして小さな蛇が腕のように生えて見える。
中心の一番大きな頭部は、冠を被っているかのように苔むし、
水晶のように淡く輝く巨大な剣のような角がまっすぐ生えている。
アクションについて
このシナリオでは、地下洞窟を探索していただきます。
最終的な目的は2つです。
・マンション『Y』で今後、霊界の災いとなる怪異が起こらぬようにする
・きなこの生い立ち、どうして幼くして幽霊になったのか、という
きなこが思い出せずにいる謎を解く
戦う、調査する、考察する、など自由な行動で、目的が果たせるよう頑張ってください!
(携帯は起動できますが、霊界なので圏外です)
もちもの:今回からの方……普段から持ち歩いているようなもの1つ持ち込み可
前回からの方……前回持ち込んだもの、前回入手したもの
正気度 :参加が決定したら、コメントページに【正気度】と入れて書き込みをしてください。
右上のダイスの合計値が、正気度の初期値になります。
シナリオ内で敵、敵の使徒に出くわすたび、
1~4ずつ減ります(マスターが四面ダイスを振ります)
正気度が0になると、
キャラクターは失神したり発狂したり、
ろっこん・能力が暴走したりします。
幽霊の場合は意図せぬポルターガイストを起こしてしまったりします。
(味方に助けてもらうなどすると回復します)
万が一、NPCも含めて全員の正気度が0になってしまった場合、
このシナリオは失敗となります。
バトルになった場合の判定について
幽霊VS実体のある者(ひと、もれいび、ほしびと、幽霊以外のあやかし):
幽霊からの攻撃は、肉体を傷つけないが、精神にダメージを与える。
人間からの攻撃は、幽霊に物理ダメージを与えられない。(ろっこんなどあればこの限りではない)
存在としては実体がある方が強固なので、強い意思が幽霊に影響を与えることもある。
幽霊VS幽霊:
基本的にはすり抜け合うが、意図すれば短時間のみ干渉しあえる。
※蛇のようなものは実体があります。
登場NPC
餅々 きなこ : 幽霊。PCたちの味方で、依頼主。
忘れてしまった自分の過去を知りたい。
悪いことが起こりそうなら止めたい。
笹川 帆太 : ひと。幽霊マンションで配信中に霊界に来てしまった。
現状は夢だと思っている。あまり戦力にはならない。びっくりすると失神しがち。
海原 茂 : もれいび。帆太に付き合っていたら霊界に来てしまった。
冷静沈着。むやみに戦おうとはしないが、いざとなったらろっこんの雷で反撃。
谷守 ヒカル : 黄色い服を着た6才くらいの少年の幽霊。
地下入口へと皆を導いたが、その後姿がみえない……。
それではご参加お待ちしております!