真夜中。
それは暗闇が支配する世界。
現代ならば昔と違って電気があり、電灯がある故に暗い場所は少ないだろう。
とはいえ、ひとたび光から離れればそこには夜の闇がある。
誰しもそれを忘れてはいけないのだ。
水色髪の少女【ちーあ】はコンビニから帰る途中だった。寝子島は比較的安全で、彼女一人でおやつを買いに出ることも珍しくはない。
最近は【チビナミ】という食い意地の張った仲間が増えたこともあり、彼女がおやつを買い出しに行くことも多くなっていた。
「全く、冷蔵庫に入れておいたアイスを全部食べてしまうとはどういうことなのですよっ! むぐぐー、オレンジアイス楽しみだったのにぃ」
彼女が下げている袋にはいくつかアイスが入っている。ちーあが食べたかったオレンジ味のアイスも勿論含まれていた。
ふと彼女の耳に声が届く。
それは、かぼそく、実に聞こえづらい声だったが誰かがちーあを呼んでいるようだ。
「むむ、誰かが呼んでいるのですよ。これは事件の可能性があるかもなのですよっ!」
ちーあはテオと情報共有をし、寝子島に来襲する異世界の人物やフツウを壊す脅威と戦う生活を普段からしている為、ことこういった事象には敏感だった。
必要に応じて招集をかけ、結界を作成しフツウを守る。それが今の彼女の使命だ。かつて寝子島を守って散った、生みの親でもある機械生命体テューアの遺志を継ぐ為に。
声に導かれるままにちーあが歩いていくとそこは人気のない駅のようだった。【銀朱駅】と看板に書かれたその周囲は霧に包まれあまりよく見えない。うっすらと鳥居が複数立っているのが見える程度だ。
遠くにはゆらゆらと歩く人影も見えるが、どうにもそいれは生者には見えなかった。
「薄気味悪い所ですね……確か、こっちの方で声が……むむ?」
駅から離れて声のする方へ歩いていくと古いゴミ捨て場が見えてくる。
そこに体を写すには十分な大きな鏡が捨ててあった。声はその鏡から聞こえてくるようだ。
ちーあは覗き込むようにして鏡に近づくとそれをじっと観察する。見た目は古めかしいただの鏡。変わった点はない。
「気のせい、ですかね? ふむむー? まあ、何もないのなら事件ではないのです。帰ってアイスを――――」
くるっと背を向けたちーあに鏡から黒い手が伸び……あっという間に彼女を鏡の中へと引き込んでしまった。
どさっとコンビニの袋が地面へ落ちる。
彼女の立っていた場所には溶けかけのアイスだけが残されたのだった。
◆
「ちーあが帰ってこないんですよぉ」
そう困った顔で溜め息をつくのは豊満わがままボディを持つ金髪紅眼の女性ツクヨだ。
乳房が零れそうなほどはだけた着物を着た彼女は
八神 修によって用意されたアパートの一室で考え込んでいたのだ。
「ナディスや他のみんなにも探してもらっているんですけどねぇ……全然見つからなくてぇ。どこ行っちゃったんでしょうかねぇ」
ナディスというのは異世界【マシナリア】から勇者修行にやってきている少女だ。正義感が強く、頼れる師匠の元で修行に励んでいる。
勇者という性質柄か、こういったことに一番に動くのは他ならぬナディスなのだ。
普段であれば、ちーあがそう家を長く開けることは無い。
食べることが好きなちーあの為、自宅となっているアパートで出される食事を無視して遊びまわることは無いのだ。
それも今回はおやつの買い出しに行って、そのまま戻らないという事態。何かに巻き込まれたと考える方が正しい。
ツクヨに呼ばれた
御剣 刀と八神は最近噂になっている話を思い出す。
それは【最近は寝子島と霊界の境界が曖昧になって、あちこちで異変が起きている】という噂だった。
「噂では霊界に迷い込むという話もある。そういうことも考えると、霊界絡みってことの可能性もあるってことだ。危ない目に合ってないといいが」
◆
真夜中。寝子島の仲間を連れ、チビナミ、ツクヨ、ナディスが寝子島シーサイドタウン駅に来ていた。
夜も遅いからか人通りはなく、辺りは静まり返っている。
「多分、こっちだと思うのじゃ。ふむ、これは死者の匂いじゃのう」
そう言って誘うのはチビナミだ。彼女は黄泉に連なる者。死者の匂いや気配には敏感である。
黒い髪をなびかせながら歩くチビナミに付いていくと一行は見知らぬ駅に出る。
寝子島の駅に似ているが、どこか雰囲気が違う。その場所は肌寒く、辺りにはうっすらと霧が漂い遠くには、おぼろげに鳥居が複数立っているのが見える。
ふと看板を見ると【銀朱駅】と書かれていた。
辺りを見回している一行の元にふわふわと漂う少女が近寄ってくる。彼女は明るい笑顔で一向に話しかける。足がない、どうやら幽霊の類のようだ。
「おやおやぁー? キミたちはなんでここにいるのかな? しょうじゃがいるようなバショじゃないよー」
「すまない、人を探しているんだ。水色の髪色で小さな少女を見なかったか? 生者なんだが迷い込んでしまったみたいなんだ」
八神が問いかけると幽霊の少女【
餅々 きなこ】はふむと考え込む。
「うーん、そんなめだった子がいたらおぼえてるはずだけど」
「もしくは人が消えるような噂を知らないか? どうやら何かに巻き込まれたみたいなんだ」
御剣の話にきなこはポンと手を合わせて閃いた顔をする。
「あー、それならたしか……みちちかちゃんがなにかいっていたような……ちょっとよんでくるね」
「本当ですかぁ? 助かりますよぉーっ」
「うわあああ!? ばいんばいんっ!?」
御剣の傍から出て、ずいっと詰め寄り珍しくお礼を言うツクヨのわがままボディに目を丸くしたきなこだったが彼女は少しして平静を取り戻し件の人物を呼びに去っていく。
それから少しして。
きなこは猫又の男性、
三毛谷 道哉を連れて一同の元に戻ってきた。尻尾は見えず、扇子を帯に刺し、キセルを咥えるその姿は人の男性にしか見えない。
彼は銀朱駅の近くに住むあやかしできなこが言うには彼が人が消える噂について知っているようだ。
「水色髪の嬢ちゃんか。数日前になるが……駅近くのごみ捨て場の方へ歩いていくのを見たな。ここいらでは見ない顔だったからよく覚えているよ。ただ、あのゴミ捨て場には【人を呼ぶ鏡】の噂があってなぁ。ふぅ、面倒なことになってないといいが」
少々面倒そうな口ぶりはするが、道哉は一同を噂のあるごみ捨て場へと快く案内してくれた。
◆
銀朱駅近く。古いゴミ捨て場。
「ここのようだな。確かに大きな鏡がある」
ゴミ捨て場に着いた一行はそこで大きな鏡を見つけた。鏡からは紫色の妖気が漂っており、どう見ても普通ではない。
八神は鏡を観察し、ふむと口元に手を当てる。
「姿の映らない鏡、漂う妖気……まだ断定はできないがこれがその人が消える噂の元凶かもしれないな」
「どうやら……当たりみたいです。これを見てください。あっちに落ちていたのを見つけたんです」
同行していたナディスが差し出したコンビニ袋の中にはいくつか商品が入っている。
八神が袋の中を確認すると、オレンジ味のアイスにレモン味、イチゴ味と複数の溶けたアイスが入っていた。
「……どれもちーあの好きな味だ。ここで間違いないようだな」
「それじゃあ、ここにちーあちゃんがいるんですね。早く救出してあげないとっ!」
意気込むナディスと一行の目の前で大きな鏡が妖しく輝き、それぞれの名前を低い声が呼ぶ。
それを見た道哉は目を鋭く細めた。
「向こうから誘ってくれるようだな。どうやら……こりゃ面倒なことになりそうだ」
妖しい霧が立ち込め、一同を包むと……彼らの姿は消えていった。
お初の人もそうでない人もこんにちわ、ウケッキです。
霊界☆ミーティングの噂からシナリオになりました。
今回は鏡の妖怪とのお話となります。
噂の証言者でありガイドにも登場した三毛谷 道哉さん、ありがとうございます。
ガイド登場の八神 修さん、御剣 刀さんもありがとうございます。
みなさん、ガイドはイメージですので自由な発想でアクションをお楽しみください。
妖しい鏡の中に囚われてしまったちーあ、その安否はいかに!?
他にも多くの人々が囚われてしまっているようです。
なお、私のシナリオで配布されたアイテムはいくつでも持ち込みはOKです。
その場合でもチビナミの支給品は一つ持っていけるのでご安心を。
このシナリオではろっこんが強力に描かれる場合があります。
また、既に鏡の中に囚われているというスタート方法もOKです。
※違う意味でアブナイ部分と通常のシナリオの描写は分け、お色気方面は希望者のみとなりますので、
その辺りはご安心くださいませ。
要望があった場合は、運営さんと相談し、可能な限り要望は実現します。
◆勝利条件
囚われた人々の救出
◆場所
古びた鏡の世界
:古い屋敷の中。日本家屋のようだが廊下や部屋がまるで巨人用の如く
異常に広いので戦闘行動は容易。
部屋には古い置物や日本人形が多数置かれている。
◆予想されるルート
ちーあ救出 危険度:とってもあぶない 同行者:ナディス、ツクヨ
:【鏡の妖怪】に捕獲されたちーあを救出するルートです。
このルートには雑魚はおらず、鏡の妖怪とのみ接敵します。
真似子地蔵との戦闘 危険度:まああぶない
:攻撃を真似てくる妖怪【真似子地蔵】との戦闘になります。
ふわふわと浮いた彼らは6体おり、受けた攻撃をそっくりと真似て反撃してきます。
鏡のあやかしと何らかの繋がりがあるらしく、倒されるほどに鏡のあやかしが弱体化します。
鏡の凶魔との戦闘 危険度:違う意味でアブナイ 同行者:チビナミ
:黒いあやかしである【鏡の凶魔】との戦闘になります。
鏡の凶魔は女性を優先的に狙う特性があります。
捕縛されると生命力を奪われるので注意。
◆チビナミの支給品
今回はちーあが不在なので支給品はチビナミが用意しました。
各一つを選んで持っていくことができます。
・宵闇の刀
:持ち主の生命力を吸って切れ味に変える刀。
薄赤色の刀身は生命力を吸えば吸うほどに切れ味を増し深紅に近くなっていく。
リミッターとして張られているお札をはがすことで強力な一撃を放つことができるが、
次の瞬間には生命力を過度に持っていかれ意識を失う諸刃の刀。
・鬼神の札
:それぞれ雷、炎、冷気の札が10枚ずつセット。総数は30枚。
心得がなくとも追尾する為、敵に投げるだけで効果がある。
・力仙丹の壺
:小型の壺で中には飲むと力が倍増する力仙丹と呼ばれる豆が入っている。
めちゃくちゃ不味いが、噛み砕いて飲むと5分間は効果が続く。
効果が切れてから飲まないと再度倍増の効果は受けられない。
効果中は身体を紅いオーラが包む。
◆遭遇する敵
鏡の妖怪
:家ほどもある巨大な妖怪。鏡に引き込んだものを捕え生命力を吸う。
全身には大量の目玉があり、その体は溶けたスライムのように不定形だが巨大な腕を二本持っている。
ずるずると身体を引きずって歩く他、飛び掛かってきたりすることもある。
その巨腕から繰り出される怪力には注意が必要。
また不定形の体の中心に口を作り出し、そこから巨大な炸裂式の火球を放つ。
背中には可動式の鏡があり、それを用いて攻撃を反射する場合もある。
真似子地蔵
:ふわふわ浮かぶ子供サイズの石の地蔵。
受けた攻撃をそっくりそのまま真似て反撃するという特性がある。
鏡の凶魔
:鏡のあやかしが食べ残す人間を食べる雑魚あやかし。
あまり強くはないがとても数が多い。
生命力を吸収する器官を腹部に持っている。
◆NPC
ちーあ
:皆様を非日常に放り込む張本人。絶壁ロリで元気いっぱいな機械生命体。でも見た目は人と変わらない。
ありとあらゆるコンピューターにハッキングできるが割とポンコツの為、よく失敗する。
日夜怪しい研究品を開発している。それらが役に立つかどうかは皆様しだい。
最近、チビナミに様々な方法で絡まれる為、ちょっと煩わしく思うが内心楽しく思っている。
お化けは全然ダメ。怖くて仕方がない。暗闇とかそういう場所的な怖さは平気。
チビナミ
:力を奪われ、弱体化してロリ巨となったイザ那美。のじゃ口調。
別世界の人間が非人道的なロストワードの研究の末に作り出した『生体兵器』。
自分が『存在してはならない造り物』ということを理解しており人からは距離を取る所があったが、
寝子島の民との触れ合いにより、徐々にそういう部分は鳴りを潜めつつある。
お化けはちょっとは平気。見た目が怖いのは無理。
ツクヨ
:わがままボディを持つ金髪紅眼の女性。戦闘狂であり、三度の飯より戦闘が好き。
中距離では赤い鎖を鞭のように扱い、近距離では二本の赤い長剣で戦うオールラウンダー。
攻撃魔法も扱える万能さ。なお胸はFカップ。
最近、回復魔法も使えることが判明したがもっぱら敵への拷問にしか使っていなかった模様。
寝子島のファーストフードにハマっており、気が向けば訪れている。
なお味の濃い料理が好みで、味噌や醤油を好む傾向。魚よりは肉派。
お化けは全く怖くない。むしろ虐めたい派。
ナディス
:異世界アルカニアから勇者修行のために寝子島へ来ている少女。
この世界で出会った師匠に追い付く為に一生懸命努力中。
近接格闘と魔術を組み合わせたスタイルが特徴。高威力の魔法の命中率はいまだ低い。
なお胸は最近はEカップになったとか。
おばけは苦手であり、ホラー映画も見れない。よって今回は根性で勇気を振り絞っている。
それではご参加をお待ちしております。ご新規さま、初心者様も歓迎ですっ