<前回のあらすじ>
呪皇龍愛憐を降臨させようと、影の貴人最後の1人となった帳が砂漠で儀式を行おうとした。寝子島から召還された冒険者達は魔物の群を押し切り、帳と対峙。その結果彼女を浄化することが出来、儀式も中止させることが出来た。
その上帳の口から、愛憐の正体が『贄姫たちの魂の集合体』であることが明らかになった。
しかし、呪皇龍愛憐に取り込まれた英霊・白虹が手にしていた刀『天に嘶く者』の封印が解かれ、彼に共鳴し光を放つ。そして……ついに降臨する!
――*:*:*:*:*――
空に泳ぐ、くすんだ銀の龍。
その鱗に紅の宝珠を煌かせ、青い眼の龍はいう。
――私は愛憐。『呪皇』愛憐。
結ばれず、放っておかれ、ないがしろにされた愛情を憐れ、慈しみ、復讐の刃を握らせる者。
天帝に、世界に、膨大な自己満足に捧げられし贄姫達の魂の揺り篭。
彼女たちの想い、私の想い、その全てを月華世界に還す者。
朗々と響く愛憐の声に、多くのものが頭を押さえる。
強い負の感情が、頭を揺さぶるのだ。
「とうとう出てきたわね」
尾鎌 蛇那伊は額に滲んだ汗を拭い、龍を見上げる。と、龍の目がカッ!と見開かれ、あたりが真っ暗になった。
いくつもの視線が、戦場に立つ者たちを貫く。
いくつもの叫びが、戦場に立つ者たちを揺さぶる。
そして……。
――嫌ぁああああああっ!!
脳裏に浮かんだのは、多くの娘達が『贄姫』として埋められ、沈められ、燃やされ、突き落とされ、身体が朽ちていく瞬間だった。
「っ!?」
冒険者達は、その叫び声で我に返った。幾つもの声が聞こえたように思えた彼は、天に踊る龍に目を丸くする。
「……これは、龍が見せたものかねぇ」
骨削 瓢はふむ、と唸りながら龍を見やる。蛇那伊と瓢は互いに顔を見合わせると大変なことになったな、と改めて思うのだった。
藍音……愛憐が自害したのは実らぬ恋に身を窶した挙句、白虹の死を知った事で深い悲しみと怒りに堪えかねたことが原因で自害している。が、その後呪皇となってこの世界に災厄を齎していた。
帳は、藍音の強すぎた想いが癒え切れなかった贄姫たちの想いに反応し、交じり合い、溶け合って魂の集合体……現在の『呪皇』になったのではないか、と推測していた。
「それが、今の彼女なのね……」
「こらまたでっかくなったよぃ」
蛇那伊はふう、とため息をつき瓢が苦笑する。だが、天に吠え、その身を虚空に躍らせる愛憐の悲しげな眼差しに喉が苦しくなった。
「ここから一番近い雲の国の住人達は、既に藍紗殿と青殿の先導で地下に避難している。ここでならどんなに暴れても大丈夫だ」
白鋼が龍を見やる。と、どさり、と鈍い音がする。振り返ると、星華が倒れていた。帳が助け起こすと、星華が龍を見上げ、叫んだ。
「愛憐様を沈め、浄化して……。でなければ、この世界が闇に飲み込まれてしまう……。愛憐様を、贄姫様がたを……。白虹だけでは……」
苦しそうな星華は、何度も深呼吸をしながら「龍の精神世界へ赴き、愛憐の魂に直接働きかけないといけない」事を告げた。
「……私が、龍の精神世界へ送ります。どうか、愛憐様たちを……」
帳はそういい、深く頭を下げる。
その側に、いつの間にか刹弦と燈耶も姿を現していた。彼らはちらり、と龍を見、表情を険しくする。
「住人の避難は終わっているとはいえ、街を壊されるのは心苦しい。星華、私と結界を張ってくれないか?」
「……俺は術士だが戦闘向きだ。龍の進軍阻止に行こう。愛憐様のことは、頼んだぞ」
その言葉に蛇那伊と瓢を初めとする異世界の住人達はどうしようかと考えるのだった。
****************
――呪皇龍愛憐・精神内部
「藍音……。僕は君を傷つけていたんだね」
「……気付くのが遅いのですよ」
表情を曇らせる白虹に、藍音……いや、愛憐はそっぽを向いていた。彼女は深いため息をつくと、ゆっくりと白虹に歩み寄る。
「英霊殿は、荒神となった私など愛してくれないでしょう? それに霊界に帰れば奥方様がまっているんですものね。でも、帰すものですか」
白虹の申し訳なさそうな顔を見、愛憐の目に狂愛の炎が揺らめいた。
「貴方は永遠に私と溶け合って龍として生きるの。月華世界を作り変え、民を支配するのよ。貴方が愛した世界を、私が汚して壊した後綺麗に作り直してあげる。私たちで新しい世界を愛しましょう?」
そう言って白虹の顎に触れる愛憐。だが、白虹はその手をとって、そっと握った。そして……首を振り、小さな声で「そんなことは出来ない」と言った。途端に愛憐の表情が険しくなる。
「藍音、許してくれとは言わない。僕1人の魂ですむならば好きなだけ壊してしまってほしい。だから、この世界には手を……」
「都合が良すぎるのよっ! 自分だけで終わらせてくれ? 冗談じゃないわ!!」
白虹が説得するも、愛憐はその手を押し返して叫ぶ。そして、何人もの娘達が彼女を守るように立ちふさがった。
「藍音……」
白虹は手を握り締める。どうしたら愛憐と話すことが出来るだろうか?
聞く耳を持たない彼女に、白虹は手を焼いていた。
菊華です。
さぁ、<月華>シナリオ最終決戦!
いよいよ呪皇龍と化した愛憐との対峙です。
難易度:★★★★
概要
前回のシナリオで帳を浄化することに成功。
それにより呪皇龍愛憐が姿を現しました。
帳からの情報によると、愛憐は世界を破壊するべく準備に入っているようです。
しかし、龍の精神世界では愛憐と白虹が対峙しており、白虹が必死に愛憐を説得しています。皆さんは次の中から行動を選んでください。
1:愛憐と対峙する(もしくは白虹と対峙する)
龍の精神世界へ入り、向き合っている愛憐と対峙します。
白虹は「自分だけですむならば輪廻転生できなくても構わない」覚悟で向き合っていますが……。
愛憐を浄化するには、まず白虹との和解が絶対不可欠です。
2:贄姫たちと対峙する
龍の精神世界には、贄姫として捧げられた娘達の残留思念が具現化し、愛憐と白虹を邪魔しています。これは愛憐の負の感情に流されているからです。
彼女達は愛憐を説得しようとすると炎や水、砂を操って襲い掛かってきます。
その為、彼女達と戦う必要があります。
※選択肢1もしくは2を選んだ方は精神力が大幅に削れる可能性があります
その場合シナリオ終了後、寝子島や星幽塔に戻った後も影響を及ぼす不調を1週間~2週間程抱えるかもしれません。
1、2のどちらかが失敗すると、愛憐を浄化する事ができずこのシナリオは成功しません(双方の成功が、今回の成功条件です)。
裏を返せば『愛憐と白虹が和解すれば、贄姫の魂共々浄化される』ということなのです。
3:龍と戦い、街への進撃を防ぐ
龍の中に入らず、雲の国を目指す龍の進撃を防ぐために戦います。
また、精神世界の中にいる面々の時間稼ぎにもなります。
龍は全長50mほど。
雷を鳴らした上で大雨を降らせ、突進したり突風を起こしたりして攻撃してきます。
失敗すると精神世界での対峙が終わるまで暴れまわりますのでご注意を。
4:その他の行動をとる
1~3とは違う行動をとる方はこちらを選択願います。
その行動がどんな影響を及ぼすかは未知数。大きな賭けになるでしょう。
<ヒント>
「相手を受け入れる」事が全て解決するわけではありません。時にはぶつかり合うことも必要です。
前回からの時間などについて
このシナリオのリアクションは『<月華>悲しきアイに終止符を』ラストから15分後からスタートの予定です。
前回のみ参加の方:後方支援に回ったことになります。
今回のみ参加する方:途中で呼び出されたことになります。
登場するNPC
愛憐
『呪皇』を名乗り、月華世界に呪いをかけた女性で、現在は呪皇龍愛憐となっています。
その正体は『贄姫の魂の集合体』だというのです。
現在、精神世界で具現化した贄姫たちと共に白虹と対峙していますが……。
白虹
英霊として出現した古の英雄です。
現在は『呪皇龍愛憐』の精神世界で愛憐と対峙していますが、手をこまねいているようです。
白鋼
白虎族の若者。神酒之国の王。
外部から龍に呼びかける予定です。
帳、星華、刹弦、燈耶
浄化された元『影の貴人』達です。
今回、帳が皆さんを龍の精神世界へ送ってくれます。
また星華と刹弦の2人は龍が街や異世界へ逃亡しないよう結界を張ってくれています。
燈耶は龍との戦闘に力を貸してくれるようです。
この4人に何かして欲しいことがある場合、アクションに記してください。
月華世界の住人
白虎族
戦闘能力に優れた種族。白い虎にもなる事ができます。
白虎の耳と尻尾を生やすか否かはご自由に。
朱雀族
赤い翼で飛ぶことができ、熱や炎を操ることができます。
背中に赤い翼が生えます。
青龍族
雷や重力を操ることができ、角を持ちます。
龍に変化できません。あしからず。
玄武族
結界や水を操ることができ、見た目より頑丈です。
刃物で刺せません。分身たる亀(若しくは鼈)を1体召還できます。
麒麟族
治癒能力を持ち、人によっては運を無意識に操ります。俊足です。
髪が長くなりやすく、角を持つ人もいます。
天狼族
浄化の光を放つことができます。狼にもなる事ができます。
狼の耳と尻尾が生えます。
・変身できる種族は、1シナリオにつき1種類のみです
・今回は愛憐の影響かは不明ですが、参加者全員が変身します(選択していない場合、ランダムで変身します)。
・同じ種族に連続して変身し続けると、種族としての力も上手に使えるようになります
・寝子島では月夜以外変身できません
・もれいびは『ろっこん』が、ほしびとは『星の力(虹)』が使えます。
ひとは『ろっこん』がない分、種族の力が強めです。
※前回のシナリオまでに同じ種類に5回変身したPCさんは『月光の契り』が
発動し、他の種族に変化できなくなっております。
※今回のシナリオまでに同じ種類に3回以上変身したPCさんは龍の精神世界内に入ると種族の力やろっこんの力が高まる物の、精神力の消耗がちょっと激しくなります。
これまでの月華シリーズ
読んでなくても問題なくご参加いただけますので、ご安心ください。
1話完結のこともあれば、前作参加者が優先される明確な続き物のこともあります。
・月夜に囚われし姫君を救え
・トワイライト・フェアリーテイル ―逃げ出した姫―
・ふわりふる真珠、月の都の異邦人
・トワイライト・フェアリーテイル ―鳥篭の姫―
・狼は九夜山に吼える?
・漆黒の進撃・桜花寮篭城戦!
・<月華> 宵闇邂逅 ~それはフツウを壊すモノ?~
・<月華>トワイライト・スターダスト ~甘い星は島を蝕む~
・<月華>風花は、白く冷たき針
・<月華>月昂崩落 ―捧げられた姫―
・<月華>闘華降煌 ~求めよ、さらば与えられん~
・<月華>銀雷の夜 ――嵐の国奪還戦――
・<月華>冥晶宮襲撃 ―迸るほどの想いの果てに―
・<月華>秘恋哀華 ―裏切られた姫―
・<月華>悲しきアイに終止符を
よろしくお願いします。
とうとう最終決戦です。
皆さんの気合がこもったアクション、お待ちしております。