さわさわと。柔らかい風が、農場を駆け抜けていきます。
「
畑、ですか?」
しゃく、と瑞々しいリンゴをひとかじり。密のような甘味に頬を綻ばせる
巫部 紫苑の、栗色の美しい髪が風をはらんでふわりと舞い上がり、その背中では黄金色の小麦たちが、優雅な彼女へ次々と、お辞儀をするように頭を垂れていきました。
「うん、そうなんだ」
ぐいと額の汗を拭いながら、こくりとうなずいたのは、柔和な微笑を浮かべた四十歳ほどの精悍な男性……星幽塔第三階層に広がる大農場の持ち主にして、みずがめ座のアステリズム、
リアです。近くでは、あの
黒猫がゆったりと寝そべり、あたたかい日差しにうっとり目を細めています。
「君たちにはずいぶんと世話になったし、先日は、とても美味しい
蟹まで届けてもらったからね。何かお礼ができないかと思って、ずっと考えていたんだけど……」
豊かに実る作物たちの世話をしながら、リアは続けます。
「実はこのあたりに、今は使われていない畑がいくつかあるんだ。どれも、星の力を帯びた特別な畑でね。僕はこの農場だけで手いっぱいだけど、君たちならきっと、有効活用してもらえるんじゃないかと思ったんだよ。どうだい、興味はあるかな?」
「好きな作物を好きなように育てて、好きなだけ食べられるだなんて……!」
いつだって食欲旺盛な紫苑が口走った言葉に、リアはちょっぴり、苦笑いを浮かべましたけれど。
どうやら、お世話になった冒険者たちに、
畑を自由に使わせてくれるということのようです。
「面白そうなのー! ステラたちもノーギョーするの!」
蜂蜜酒の入ったカップを片手に、ふよふよやってきた
ステラも話を聞きつけて、紫苑を促します。
「星の力がいっぱいの畑なら、きっと
すっごいお野菜とかお花とか、たっくさん育っちゃうなの! 塔を登るのにもお役に立つと思うのー。だから、紫苑おねーさんも一緒にやるのよ~」
「ええ、とても魅力的なお誘いですね。ただ、私、あまり力仕事には自信が無いのですけど……」
なんて、紫苑は少々不安顔。いかに美味しいものを食べるためとはいえ、確かに彼女、あんまり肉体労働に向いているタイプには見えません。
けれど、リアは笑って首を振り、
「ああ、それなら心配はいらないよ。頼もしい助っ人たちがいるからね」
途端。
ぽこん! 唐突に地面から、小さな何かが飛び出してきました。
ぽこん! ぽこん! ぽこぽこん!
「この『
モグラ妖精』たちが、君たちを手助けしてくれるよ」
土の中から顔を見せたのは、紫苑の足首くらいまでの背丈しかない、小さな小さな、服を着たモグラたちでした。彼らは二本の足で立ち、ぴょこぴょこと弾むように歩いて紫苑の足元へやってくると、ぽむっと平坦な胸を叩いて、
「話は分かった! リアの頼みなら断れないからなー、オイラたちに任せなよ!」
「私たちが、あんたたちをいっぱしのファーマーにしてあげるわ! 忙しくて畑に来られない時は、作物の面倒も見ていてあげるしね」
「ボクたちも頑張るから、いっしょに頑張ろうねえ、おねえさん~」
わきゃわきゃ、集まってきては頼もしく声をかけてくれる、小さなモグラ妖精たち。その愛らしい姿には、
「まあ! 食べちゃいたいくらい、かわいいですね♪」
紫苑の瞳も思わず、きらきら! 輝き始めてしまうのでした。
「皆さん、美味しいお野菜や果物のために、頑張りましょうね♪」
墨谷幽です、よろしくお願いいたします~。
ガイドには、巫部 紫苑さんにご登場いただきました。ありがとうございました!
(ご参加いただける場合は、ガイドのイメージに関わらず、ご自由にアクションをかけていただいて構いませんのでっ)
このシナリオの概要
星幽塔第三階層の農場主『リア』の申し出により、皆さんはこの階層にあるいくつかの畑を、以後自由に
使うことができるようになりました。
これらの畑は、星の力をふんだんに帯びた特別なもので、通常の畑とはひと味違った作物を収穫することが
できます。
また、そうして採れた特別な野菜や果物など使って、星幽塔の攻略を進めるに当たって効果的なアイテムや、
一時的に能力を高めてくれる料理などを作ることができるようにもなります。
サジタリオ城下町などにお店をお持ちの方は、品物のバリエーションを増やすこともできるかも!
作業をお手伝いしてくれる有能なアシスタントは、『モグラ妖精』たち。
彼らは土のスペシャリストであり、作業に当たって様々なアドバイスをしてくれるほか、皆さんが冒険に
出かけている間、畑の管理をしてくれます。
また、農場にて作業中のリアにも助言を求めれば、喜んであれこれと教えてくれることでしょう。
今回のシナリオで、作物を植えたり準備を整えておくと、シナリオ終了後に星幽塔コミュニティに公開予定の
トピックにて、簡単なダイスゲームを行うことで、育成・収穫することができます。
収穫した作物は、アイテムとして作成することで、【星幽塔】のタイトルを冠する各シナリオにて
扱うことができるようになります。
(※ダイスゲームは、シナリオに参加していない方も含めて、みんなでわいわい楽しめます。
詳細は後日、該当トピックにて公開される予定です。お楽しみに!)
気ままな農業ライフを楽しみながら、塔の攻略にも役立ててしまいましょう!
アクションでできること
アクションでは、以下の【1】~【4】から1つをお選びください。
畑を耕すためのクワや水まき用のジョウロなど、作業に必要な道具は、リアに頼めば借りることができます。
もちろん、お手持ちの武器や星の力、ろっこん等で代用することも可能です。上手に使い分けてください。
なおそれぞれの畑は、長い間放置されていたため荒れており、そのままでは使うことができません。
畑として使うには、邪魔な物を取り除いたり、ひと手間をかけて環境を整える必要がありそうです。
植える作物は、以下に示した一例のほかにも、一般的なものや他の階層由来のもの、オリジナルの植物など、
自由に考えていただいても構いません。
※あまりにも逸脱して強力な効果を持つものなどは、適度にマスタリングされます。
【1】妖精杜の畑
多種多様な妖精たちが住む、豊かな森に面した畑。
潤沢な星の力に育まれており、幅広い植物や作物を育てることができます。
現在は荒れ放題に荒れており、大小さまざまな岩が転がっていて、
そこらじゅうを硬い木の根が這っている状態です。
<育てることのできる植物の例>
○星型の薬草:煎じて飲むと高い治癒効果を発揮する、星の形をした草。強力なポーションの材料になる。
○ドラゴンキャベツ:まるで竜の肉のようだ、と称されるほど分厚くジューシーな葉肉が特徴の巨大キャベツ。
【2】溶岩洞の畑
洞窟の中にある畑。すぐ近くを溶岩流が流れており、非常に暑いです。
高温多湿な環境で、熱に強い特別な作物を育てることができます。
現在、洞窟内部には高温を好む魔物が入り込み、危険な状態にあるようです。
<育てることのできる植物の例>
○核熱トマト:食べると一時的に攻撃力が増強されるトマト。適切に調理すれば効果倍増。
○炸裂イモ:衝撃で小さな爆発を起こす危険な芋。導火線を刺せば簡易手榴弾に。食べても美味しい。
【3】氷結谷の畑
凍り付いた崖の谷間にある畑。この谷の永久凍土は、決して溶けることがありません。
常に冷たい風が吹き抜けており、冷気に強い特別な作物を育てることができます。
現在は完全に凍り付き、氷塊に覆われてしまっている状態です。
<育てることのできる植物の例>
○シュガーメロン:しっとりとした氷砂糖のような食感と甘さのメロン。強力な美容効果があるとの噂。
○サファイア・リリー:水晶のように透き通る美しい花。星の力を回復する薬の材料になる。観賞用にも。
【4】加工場
リアの農場に程近いところにある小屋。現在は物置として使われており、中は雑然としています。
ここでは、採れた植物や作物を使って、回復効果のあるポーションなどのアイテムを生成することができます。
ただ、そのためには雑多な物の中から必要な器具を探し出し、作業スペースを確保し、器具の手入れをする
必要がありそうです。
今回のシナリオで、万全に準備を整えておけば、後の冒険の役に立つことでしょう。
主な登場NPC
○モグラ妖精たち
農場周辺の土の中に住んでいる、服を着たモグラの妖精たち。
身長20cmほどで、老若男女様々な個体がいるようです。
農作業の手伝いやアドバイスのほか、冒険者たちが不在の間には畑の管理をしてくれます。
○リア
星幽塔第三階層を司る、みずがめ座のアステリズム。40歳くらいの気のいいおじさんです。
冒険者たちの活躍で農場が元に戻り、張り切って農耕生活に打ち込んでいます。
ほか、農場にはリアを慕う様々な妖精たちも暮らしています。
星の力
星幽塔の中では、ひとりにひとつ、不思議な光が宿っています。
剣士の光(青) :剣技が上手くなる
闘士の光(橙) :腕っぷしが強くなる
狩人の光(紫) :弓矢が強くなる
盗人の光(金) :普段より勘がはたらき、器用になる。
(例:宝物を見つけたり、鍵開けが得意になったりする)
魔火の光(赤) :火の魔法を使える/星の光が宿った武器が火属性になる
(例:火の玉を飛ばす魔法が使える、刃に炎を纏ったりできる)
魔水の光(水色):水の魔法を使える/星の光が宿った武器が水属性になる
(例:水流を鉄砲の様に飛ばす魔法が使える、刃に水を纏ったりできる)
魔風の光(緑) :風の魔法を使える/星の光が宿った武器が風属性になる
(例:つむじ風を起こす魔法が使える、刃に旋風を纏ったりできる)
魔土の光(茶) :土の魔法を使える/星の光が宿った武器が土属性になる
(例:土礫を投げつける魔法が使える、刃に砂を纏ったりできる)
癒しの光(白) :自分や他者を癒すことができる
騎士の光(桃) :乗り物(生き物や機械類。大きさは馬程度まで)を巧みに操り戦う
星の力を小型の乗り物に変化させることもできる。
ペガサスなど架空の生き物、一般的な装備などもOK。
(例:炎を吐くチビドラゴン、手綱や鞍のついた馬)※機銃のついたバイクはNG
※アクション例
【騎士の力/剣】馬を巧みに乗りこなす。※この場合乗り物は別途調達
【騎士の力/馬】星の力を馬として実体化し、巧みに乗りこなす
呪術の光(黒) :呪いの力で対象を弱体化させる
(例:体力を奪う、敵の攻撃魔法を弱くする)
光は体に宿ったあと、その者にあわせた形状に変化し、身につけることになります。
(例:指輪、体に埋め込まれる、武器になっている、愛用の武器の装飾に)
※星の力のサポートは、星の力が宿ったアイテムを所持していない時は受けることができません。
※武器(剣、弓、斧、杖など)はひとりひとつ。双剣など2つで1セットのものなども可。
※星の力やその形状は、変化したりしなかったりいろいろなケースがあるようです。
(このシナリオの中では変化しませんので、今回はひとつだけ選んでください)
※もれいびは「星の力」と「ろっこんの力」の両方使えます。
※ひとは「星の力」を使えます。
※塔に召喚されると、衣装もファンタジー風に変わります(まれに変わってないこともあります)
※もちものは、そのPCが持っていて自然なものであれば、ある程度持ちこめます。
どの星の光をまとい、その光がどんな形になったかを
アクション冒頭に【○○の光/宿っている場所や武器の形状】のようにお書きください。
衣装にこだわりがあればそれもお書きください。
以上になります~。
それでは、皆さまのご参加をお待ちしております!