時刻は夕方、そろそろ子供は家に帰る時間。大人は週末の夜を楽しみ始める時間だ。
時節はすっかり12月。クリスマスムードに包まれた街は、きらびやかに輝いている。
「きゃーっ!!」
平和な街に突如として響き渡る悲鳴。君を見て、悲鳴をあげた人がいるのだ。
しかしそれも当然のこと。何しろ君の首がいきなり地面に転がってしまったのだから。
「うわーっ!?」
君の驚きも相当なものだ。首のない体で、苦労しながらも自分の首を拾う。よく見ると周囲では同じように首が落ちてしまった人が多数いる。
街がたちまちパニックになってしまったことも、これまた当然のなりゆきといえるだろう。
こんな風に、今回のクエストは始まった。
街中のあらゆるスピーカー。テレビやラジオ、携帯電話が勝手に喋りだした。男とも女ともつかないような、無機質な声。
『皆さんこんにちは。
私は『遊び』という名をつけられた『物語』です。
かつて私の中で繰り広げられた胸躍るような冒険、素晴らしい時間を皆さんと私は過ごしてきたはずでした。
しかし私は古びてしまい、もはや遊んでくれる人はいません。
ですので、今度は私が皆さんに遊んでもらうことにしました』
一方的な宣言。
突如として、見慣れない人影が周囲を取り囲んでいることに、君は気付くだろう。
『奇しくも今月はクリスマスの月。私から皆さんにとっておきのファンタジーナイトをご提供しましょう』
生気のない顔。何も映していない瞳。まるで映画や小説から抜け出して来たような存在――ゾンビだ。
そして、全身を美しい銀色の鎧で覆った、ひとりの騎士。
『今回は、無限に湧き続けるゾンビ軍団と、それを統括する首無し幽霊騎士、デュラハンをお送りします。
そして、一定以上の魔力を秘めていそうな方々にも、デュラハンと同じように首無しになってもらいました。
ちょっと日頃は体験できない幻想的な夜を、どうかお楽しみください』
ゾンビたちは住民たちに、手にした棍棒や小型ナイフで襲い掛かろうとしている。
デュラハンはまだ直接斬りかかってはこないが、右手には幅広のロングソードを携えている。そして左腕には、自分の頭部が入っている兜。
『刻限は朝までです。それまでにデュラハンを倒せなかった場合、皆さんは一生そのままで暮らしてもらうことになるでしょう』
さあ、君は見事デュラハンを倒して、自分の首と胴体をくっつけることができるだろうか?
みなさんこんにちは、まるよしと申します。
今回は、参加するPCさん全員の首が切断された状態で参加するシナリオとなっております。
突然ファンタジーな世界から襲ってきた敵を倒して平和な寝子島を取り戻す、平行世界でのバトルメインのシナリオです。
以下に敵の詳細と、このシナリオだけで通用するルールなどを記載しますので、よくお読みになってご参加ください。
◆首無し状態について
PCの皆さんは例外なく首が取れた状態からスタートします。これは一種の呪いのようなもので、寝子島に派遣されてきたデュラハンを倒すことでしか解くことは出来ません。
身体は自分の意思で動かすことができますが、自分で身体を見ていない状態で思い通りに動かすことは困難でしょう。また普段とは視界も違いますので、身体を使った行動、特に格闘戦などは苦労すると思います。何らかの対策を立ててみてください。
首無し状態は『もれいび』『ひと』に関わらず参加される全PCさんに現れる現象です。『ひと』はこのゲームにおいて『もれいび』になれる存在ですので、『潜在的な魔力のようなもの』がある、という理屈です。
◆ゾンビについて
いわゆる一般的な『ゾンビ』です。死者の肉体を処理して精霊を宿らせ、使役者に従わせる、よく知られたアレです。
切っても血は出ませんし、噛みつかれてもゾンビになったりはしません。頭部を破壊しても止まりません。
強さとしては『一般的な男子中学生』くらいの格闘能力です。ナイフや棍棒で武装していますが、動きは緩慢なので、工夫次第でやり過ごすことができるでしょう。
完全に倒すには動きが止まるまで細分化するか、口に塩を詰めて口を縫って閉じるのが、ごく一般的な対処法です。
彼らに下された命令は『生きているものをとにかく殺す』ことです。目に映った生物をとにかく襲います。
手に持った武器を使う程度の、低い知能があります。
◆デュラハンについて
ゾンビ軍団を統括する騎士です。
フルプレートアーマーを着込んでいるように見えますが、中身は霊体ですので、重量は鎧の重さだけです。
武器は右手に装飾の施されたロングソード。そして防御力の高い相手への対処用に、メイスを一本腰に下げているごく一般的な騎士スタイルです。
言葉を喋ることもでき、知能は高いです。寝子島のどこにいるかは分かりませんが、ゾンビたちは旧市街を中心に発生しているようです。
倒すには一定以上のダメージを与える必要があります。しかし鎧は硬く、魔術耐性もありますので、ろっこんの威力も通常より弱く感じるかもしれません(効かないわけではありません)。
彼に下された命令は『朝まで倒されないこと』『敵と戦い殺すこと』の2点です。積極的に人間を襲うことはせず、戦いを挑んできた敵の相手をします。
◆スクロール
このままだと不利すぎるので、皆さんは魔術を使うことができるスクロール(巻物)を使うことができます。
ただ開封するだけで誰でも(ひとでももれいびでも)、スクロールに封印された魔術を1回だけ使うことができる便利なアイテムです。
このシナリオで使うことができるスクロールの数は『コメントページで最初にコメントした時のダイス目+1』つまり3~13本です。
スクロールを使う予定がない場合は、コメントは必要ありません。コメントしなかった場合でも、1本は使うことができます。
スクロールはゾンビが1本ずつ腰に下げています。ゾンビを倒す、盗む、落としたものを拾う、などして入手することができますが、ここにアクションの文字数を割くのももったいないので、入手方法は省いてもかまいません。
ゾンビはごくまれに自分が持っているスクロールを使います。デュラハンは全種類1本ずつ持っていて、ここぞという時に使います。
◆魔術
今回、スクロールによって使うことができる魔術は以下の通りです。どの魔術のスクロールを入手したかは、アクションで自由に決めても構いません。
・ディテクトマジック……自分を中心とした半径100m以内の魔力の数、距離、方向を知ることができます。この探知にひかっかるのは『デュラハン、ゾンビ、スクロール、もれいび』です。ただし、敵か味方かアイテムかの区別はつきません。デュラハンとゾンビは、スクロールがなくともこの能力を使うことができます。
・ロック/アンロック……鍵のついているものに自在に鍵をかける、または鍵を外すことができます。鍵をかけた場合、1時間程度は正しい鍵を持っていたとしても外すことはできません。逆も同じです。この魔術が効いている間は、扉などそのものを破壊するには1時間以上かかるものとします(つまり無意味です)。ロックでかけた鍵をアンロックで外すことは可能です。
・マジックミサイル……術者の精神力を基とする光の弾を発射して、敵を攻撃します。ゾンビなら一発で必ず倒せます。デュラハンの鎧には魔術耐性がありますので、一発で倒すことはできません。この光の弾は、必ず目的に命中します。
・ライト……何らかの物体に半径5m程度を照らすまぶしい光を付与します。効果は1時間です。
・ダークネス……自分の半径5mを完全な闇で閉ざします。自分も見ることができませんので、注意してください。効果は1時間、ライトとダークネスは相殺します。
首が落ちた瞬間に、このクエストのルール(ゾンビやデュラハン、スクロールの使い方や魔術の種類など)は何故か理解しています。
◆NPCについて。
NPC天利 二十が参加PCの方がアクションをかけた場合のみ、登場します。首が落ちたことにより、どこかの裏路地で転倒してうまく起き上がれないでいます。
◆アクションについての目安。
アクションをかける際、PCの台詞や心情を交えて下さると、キャラクターの雰囲気を掴みやすいです。
そのPCが何をしたいのか、そのために何をするのか、という目的と手段をはっきりさせるとGMとしても行動を取らせやすく、その目的を叶えやすくなります(あくまでも目安、ですが)。
では、今回も楽しいアクションをお待ちしています。よろしくお願いいたします。