シーサイドモールに設置された、n.k.FMの公開録音スタジオ。
パーソナリティーとゲスト数人が入ることができ、ガラス張りで外からブース内を観覧可能な公録ブースと簡単な観覧席に加え、演奏等の可能な簡易ステージが設置される。
さて、今日のプログラムは……?
たとえばそう to your teddy bear
(沈んで、散って、なくなって。限りなく細めた眼差しは花風に。やがて伏せて)
ごめんね
(音色がピアノに。激しく、哀しく、でも、不思議と喜色を帯びたノートが、じわり)
(小指と薬指でのみ、市子のブツ切れな音を支え――)
たとえば an anatomical model
土中の retoro candy cans たとえば
(――中指と人差し指も加わるが、どことなく不安定で、痛々しく)
たとえば the underground piano
いらない this bunch of books たとえば
みんなどこかに隠れた? たとえば
遊んでみんな
十賜れど使えねど欲しいのよ本当は五つだけ
だけど今日も学校ひとりぽっち ねえ誰か ねえ遊んで!
(握り手をそのまま鍵盤に押しつける。悲鳴のような音色が短く戦慄く)
Please give me your finger!
失いゆえ共に我が憶い彷徨いたまえ さもなくば
Please find my lost fingers
まあ失いけどこの際いいでしょこの指とまれ そして
I want you to find me, please! please!
(曲調が変わった……)
(悲しげで切なげな表情。
しかし二人からは目を逸らさず
静かに二人の奏でる音楽を聞いている)
【鳴】
(同様にキーターから両手を外し、此方は指を隠すように握った左手を鍵盤に、ただ置いて。
明るかった表情が急激に消失し、目はすわり。笑みもなく。小さな口から囁きを調べに)
ゆえ十五の輩(ともがら)に告ぐ――迅く集え
(ギターから両手を離す…と同時)―― ――(短くも甲高いハウリング)
やんわり開いた右手のみ鍵盤に添えて。
ラフに叩く四拍子の短調、なぜかパイプオルガンの。
そして、どこからともなくデジタルに脚色されたベース音が、迫るなか)
ゆび連れてって絵本の国
でもきみは居ない 静かな所以
(やけに上下するメロディの唄は、まばたきと共に。
目を開くたび。乃木さんと、せれねとを、とても哀しそうにみては、伏せ)
…ゆ・び
(鳴から顔を背け。後ろめたく、ゆっくり、トーンが落ちて…)
(静かに、音楽の世界に浸っています。
まわりはみえているか、いないか。)
ほぅ……これはまた。
(あまり触れなかった方向性の音楽だが、綺麗な歌声に耳を傾けている)
(一方で目線のあった方へ小さく手を振って応援する)
(同じく一歩、鍵盤を前に市子と肩が並ぶ)
知ってる けれど
誰も知らない忘れ物の夢
なくしたまま また探さなくちゃ