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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
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ある恋心をもう一度
恋なんてものに何の期待もしなくなったのはいつの頃からだろうか。
朝鳥 さゆるは、15歳という年齢に不相応な経験をしてきた。そのせいか、他者に愛情なんて求めなくなっていた。
求めるのは、後腐れのない、身体だけの関係。それだけで十分だった。
一度だけ。たった一度だけ、恋心を抱いた人がいた。
両親を亡くして、半年くらい経った頃だっただろうか。誰もいない、暗く静かな家に帰りたくなくて、その日も適当に夜の街をうろついていた。
そこで出会ったのは、自分より年上の人だった。たぶん、年は16、７歳くらい。彼は、学校にも家にも居場所がなく、といって誰かとつるむ気にもなれず、一匹狼のように振る舞っていた。
どこにも居場所がない。自分自身を傷つけずにはいられない性分。
どこか、さゆると似ていると感じた。そして似た者同士、それ故に、惹かれ合うのに時間はかからなかった。激しく求め合うとともに、激しく傷つけ合った。
互いに傷つけ合うことで、お互いの存在を刻み込むのだ。そんな恋しかできなかった。
互いを犯し犯されるような、傍から見れば異常としか言いようのない、恋。
けれど、あのときが一番、誰かを本気で愛していた……。
思い出されたのは、そんな記憶。
思い出す前に一瞬だけ目が合ったのは、全く知らない人だ。
さゆるが愛した彼は、もういない。
いつの間にかこの島からいなくなって……彼女だけ残された。
「……あたしだけ、ここに残ってる。……というより、どこにも行けそうにない……」
刻み込まれた傷だけを残して。
鬼崎 つくしは冴木 竜司と公園を散歩していた。この公園はただの公園ではない。つくしにとっても、竜司にとっても、思い出深い場所だ。
竜司と話をする。当然のように互いの目が合って……つくしは思い出す。
つくしは、生まれたときから父親に愛されていなかった。つくしの母親は将来有望なロシア人の陸上選手だった。しかし、つくしを産んだことでその「夢」を、そして「命」までも失ってしまっていた。
（私が母を殺したようなもの）
父もそう思っていたのだろう。父はつくしを生かしてくれたが、愛してはくれなかった。
そうして、つくしはロボットのように、無表情で……温もりも知らずに育った。
転機が訪れたのは、３年前。
家にいると酒に酔った父に邪魔者扱いされてしまう、そう考えてつくしは迷惑にならないよう、近所の公園にいた。その日の天気は雨。鉛色の空から降ってくる大粒の雨に打たれて、ずぶ濡れになって、父が寝るのを待っていた。
「大丈夫か？」
そんなつくしに手を差し伸べてくれたのが彼である。
（竜司お兄ちゃん）
ずぶ濡れのつくしを拭きながら、事情を聞いてきた竜司に、つくしはありのままを伝えた。初対面の相手に身の上話をするなんてどうかと思った……が、止められなかった。
（だって、初めて……人に優しくされたから……）
そして竜司は、ある「約束」をしてくれた。
「俺がお袋さんの代わりに有名な陸上選手になってやる。そして親父さんを説得してやる……君が生まれた意味はあったって」
それは夢物語だ。数年年上なだけの彼には、無理だと思った。
だからつくしは聞いた。「どうして初対面の私にそんな『約束』をしてくれるのか？」と。
思い出の公園でつくしと目を合わせ、竜司も３年前を思い出していた。
父親の重圧と馬鹿姉の仕打ちに嫌気が差して、塾をバックれた竜司は、この寝子島に当ても無く家出していた。雨宿りにたまたま立ち寄った公園が、この公園だった。
そこでつくしと出会った。冷たい雨に濡れている彼女と。
一目見て、人生に絶望している同類だと思った。
声を掛けて、濡れたつくしを拭きながら、身の上話を聞いた。竜司とは正反対な方向性の環境、しかし「同情」してしまった。
だからこそ、だろう。つい、「約束」してしまったのだ。
「俺がお袋さんの代わりに有名な陸上選手になってやる。そして親父さんを説得してやる……君が生まれた意味はあったって」
当時、竜司はもやしっ子だった。そんな竜司の宣言に、つくしは戸惑っただろう。どうして、と理由を聞かれて、照れから思わず言ってしまった。
「ずぶ濡れの君の身体目当て」
そんな嘘を。
「変態」
絶望的なまでに無表情だったつくしが、ぽつりと言った。あまりにも無いと思った理由だったのだろう。しかし、そのときの儚くも美しい妖精のような微笑に、竜司は一目惚れした。
（この初恋は歪だ）
竜司は自覚している。けれど、今の竜司がいるのは、つくしのお陰なのだ。だからこそ、「妹」として今も愛している。
あのとき、道化を演じ、変態と言われたように……駄目だけれど、約束は守る「兄」として。
（彼女を、守ろう）
朝鳥 さゆるは、15歳という年齢に不相応な経験をしてきた。そのせいか、他者に愛情なんて求めなくなっていた。
求めるのは、後腐れのない、身体だけの関係。それだけで十分だった。
一度だけ。たった一度だけ、恋心を抱いた人がいた。
両親を亡くして、半年くらい経った頃だっただろうか。誰もいない、暗く静かな家に帰りたくなくて、その日も適当に夜の街をうろついていた。
そこで出会ったのは、自分より年上の人だった。たぶん、年は16、７歳くらい。彼は、学校にも家にも居場所がなく、といって誰かとつるむ気にもなれず、一匹狼のように振る舞っていた。
どこにも居場所がない。自分自身を傷つけずにはいられない性分。
どこか、さゆると似ていると感じた。そして似た者同士、それ故に、惹かれ合うのに時間はかからなかった。激しく求め合うとともに、激しく傷つけ合った。
互いに傷つけ合うことで、お互いの存在を刻み込むのだ。そんな恋しかできなかった。
互いを犯し犯されるような、傍から見れば異常としか言いようのない、恋。
けれど、あのときが一番、誰かを本気で愛していた……。
思い出されたのは、そんな記憶。
思い出す前に一瞬だけ目が合ったのは、全く知らない人だ。
さゆるが愛した彼は、もういない。
いつの間にかこの島からいなくなって……彼女だけ残された。
「……あたしだけ、ここに残ってる。……というより、どこにも行けそうにない……」
刻み込まれた傷だけを残して。
鬼崎 つくしは冴木 竜司と公園を散歩していた。この公園はただの公園ではない。つくしにとっても、竜司にとっても、思い出深い場所だ。
竜司と話をする。当然のように互いの目が合って……つくしは思い出す。
つくしは、生まれたときから父親に愛されていなかった。つくしの母親は将来有望なロシア人の陸上選手だった。しかし、つくしを産んだことでその「夢」を、そして「命」までも失ってしまっていた。
（私が母を殺したようなもの）
父もそう思っていたのだろう。父はつくしを生かしてくれたが、愛してはくれなかった。
そうして、つくしはロボットのように、無表情で……温もりも知らずに育った。
転機が訪れたのは、３年前。
家にいると酒に酔った父に邪魔者扱いされてしまう、そう考えてつくしは迷惑にならないよう、近所の公園にいた。その日の天気は雨。鉛色の空から降ってくる大粒の雨に打たれて、ずぶ濡れになって、父が寝るのを待っていた。
「大丈夫か？」
そんなつくしに手を差し伸べてくれたのが彼である。
（竜司お兄ちゃん）
ずぶ濡れのつくしを拭きながら、事情を聞いてきた竜司に、つくしはありのままを伝えた。初対面の相手に身の上話をするなんてどうかと思った……が、止められなかった。
（だって、初めて……人に優しくされたから……）
そして竜司は、ある「約束」をしてくれた。
「俺がお袋さんの代わりに有名な陸上選手になってやる。そして親父さんを説得してやる……君が生まれた意味はあったって」
それは夢物語だ。数年年上なだけの彼には、無理だと思った。
だからつくしは聞いた。「どうして初対面の私にそんな『約束』をしてくれるのか？」と。
思い出の公園でつくしと目を合わせ、竜司も３年前を思い出していた。
父親の重圧と馬鹿姉の仕打ちに嫌気が差して、塾をバックれた竜司は、この寝子島に当ても無く家出していた。雨宿りにたまたま立ち寄った公園が、この公園だった。
そこでつくしと出会った。冷たい雨に濡れている彼女と。
一目見て、人生に絶望している同類だと思った。
声を掛けて、濡れたつくしを拭きながら、身の上話を聞いた。竜司とは正反対な方向性の環境、しかし「同情」してしまった。
だからこそ、だろう。つい、「約束」してしまったのだ。
「俺がお袋さんの代わりに有名な陸上選手になってやる。そして親父さんを説得してやる……君が生まれた意味はあったって」
当時、竜司はもやしっ子だった。そんな竜司の宣言に、つくしは戸惑っただろう。どうして、と理由を聞かれて、照れから思わず言ってしまった。
「ずぶ濡れの君の身体目当て」
そんな嘘を。
「変態」
絶望的なまでに無表情だったつくしが、ぽつりと言った。あまりにも無いと思った理由だったのだろう。しかし、そのときの儚くも美しい妖精のような微笑に、竜司は一目惚れした。
（この初恋は歪だ）
竜司は自覚している。けれど、今の竜司がいるのは、つくしのお陰なのだ。だからこそ、「妹」として今も愛している。
あのとき、道化を演じ、変態と言われたように……駄目だけれど、約束は守る「兄」として。
（彼女を、守ろう）
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2015年01月07日
- 参加申し込みの期限
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- 2015年01月14日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2015年01月14日 11時00分
