数多の夜を超えし腐敗の王（アサリ）｜リアクション

数多の夜を超えし腐敗の王（アサリ）

●テオ……なのかな？

　アサリを埋め終え、テオらしき何かを見かけた後木真央だったが、またしても見失ってしまった。
「テオ、近くにいるのなら聞いてほしいのだ。楽しいことは、人数増えれば倍々ゲームで楽しくなるのだ」
　テオと話したい人、友達になりたいという人は、自分以外にもいっぱいると思う。
「真央ちゃん、テオとお友達になりたいのだ。だから一緒に遊んで行こうなのだ」
　灰色の猫が「やれやれ……」とため息をついているかのように、そっと姿を現した。
「あの貝だったら埋めたのだ。だから手放しでテオと遊べるのだ♪」
　何も言わないので、冷たくされたと思った真央はコレ常識、と欠かさないおネコさまへの貢物を取り出した。
「カツブシ粉とまたたび粉を貢げられるのだ。食べるのだ。テオは神さまなのだ？　神さまの一部でも、テオはテオだと思うのだ」
　神であっても、たまには休憩も気分転換も大事。だから、テオにもゆっくりしてほしい。
　
　その思いが通じたのか、灰色の猫は警戒しながらも真央に近づき、カツブシ粉の匂いを嗅ぐ。
「袖振り合うも多生の縁というのだ。知り合いになって、同じ目的で頑張ったりして楽しかったのだ♪　だから、テオにも楽しいことあってもいいと思うのだ」
　その思いは、テオに関わりたいと願う他の皆も同じだろう。
　真央の気持ち知らずな猫は、カツブシ粉を黙々と舐めている。
（今日のテオ、なんだかおネコさまっぽいのだ。サービスなのだ？）
　猫っぽい、というより、猫そのものな仕草が妙にひっかかる。

　テオじゃないかもしれないのだ？　という疑問が生じかけた時。
　にゃーくんと一緒にテオを探していた桜庭円が来て「誰と話しているの？」と聞いた。
「テオと話しているのだ」
「テオ？　あ、ホントだ。ボクも一緒に遊んだ方が楽しいと思って、にゃーくんと探していたんだ」
　こないだのお礼とテオが言っていたが、円達も、テオに世話になっている。
　そのおかげで混乱が起きていないこともあるので、それなら、貸し借り無しだと円は思う。
「細かいことは抜きにして、テオも一緒に遊ぼうーって理屈、かな？　にゃーくんも遊びたがってるし」
　遊びたいのもあるが、テオをわしゃわしゃしたいという欲求も。
「あーそーぼー！　ほら、ボールも持ってきたよ！」
　カツブシ粉の後にマタタビ粉を舐めたことでハイテンションになった灰色の猫は、勢い良くボールに飛びつくと前足で転がして遊びだす。
「にゃーくん、灰色のおにーさん遊ぶ気マンマンだよ。一緒に遊びたいよねー？」
　一緒に遊ぶのかな？　とワクワクしていた円の予想に反し、にゃーくんは「誰？」と言いたげな顔を。
「にゃーくんも一緒にボール遊びするのだ」
「ボク達も付き合うからさ。ね？」
　真央と円に促され、違和感を感じつつ、灰色の猫と一緒に遊ぶにゃーくん。
　
　たくさん遊んで満足したにゃーくんは、円の肩に飛び乗り一休み。
　遊び飽きた灰色の猫は、何も言わず、どこかに行ってしまった。
「アサリを埋めたし、テオと遊べたのだ。真央ちゃんは海で遊んで、海の家で食べ放題するのだ」
「ボクは海の家で休むよ。にゃーくんにお水を飲ませたいし」
　暑くなったのか、にゃーくんはグッタリ。
「じゃあ、真央ちゃんも海の家に行くのだ」
「ねえ、テオだけど……いつもと違う気がしたんだど。ボクの気のせいかな？」
「真央ちゃんもそんな気がしたのだ」
「テオのようで、テオじゃないとなると……」
「「そっくりさん（なのだ）？」」
　考えすぎ？　と思ったが、ツンデレなテオが、頑張って猫になりきって遊んでくれたのかも。
「テオは素直じゃないね。皆と一緒に遊びたいなら遊べばいいのに」
「真央ちゃんもそう思うのだ。テオはツンデレなのだ」