＜月華＞銀雷の夜　――嵐の国奪還戦――｜リアクション

＜月華＞銀雷の夜　――嵐の国奪還戦――

　一方、武道やルーク、後木真央、新田亮、優木遥斗はライメイに頼まれたのもあり祠の探索を行っていた。刹弦も「少しでも力になれれば」と参加する。
「大丈夫か？」
　遥斗が心配そうに刹弦へ問いかける。それは他のメンバーも同じである。刹弦は小さく笑った。
「ありがとう。無理はしませんから」
　その言葉に頷きつつも遥斗や真央は心配そうに刹弦を見るのだった。

　祠の中は思ったよりも広かった。国にかけられた封印を解く際は石版に気をとられていたので気づかなかったが、学校の教室１つ分はあるだろうか？
　翡翠の原石が、石版があったであろう箇所を中心に敷き詰められている。中心には白い砂が敷き詰められており、中央に一本の剣が突き刺さっていた。
（石の剣？　妙にリアルだな）
　亮はその剣をまじまじと見ながら首を捻る。刹弦はそれを見ると静かに頷く。
「この祠は元々祈りの場だったのかもしれません。石の剣は恐らく慰霊碑なのでは、と思われます」
　刹弦の説明に頷きながらも、妙に心に何かが引っかかる亮だった。
　元は神官だった刹弦が色々と「わかる範囲ですが」と説明してくれたお陰で、この場所が祈りの場だった事がどんどん明らかになる。だが、刹弦が少し怪訝そうに首をかしげる。
「でも、少しおかしい気がする。明かりの数の割りに明るい気がする……」
「やっぱり、何かの加護なのか？」
　遥斗の問いに、刹弦は首をかしげる。
（ん？）
　そんな中、祠の奥を見ていた真央は、固く閉ざされた門のようなものを見つけた。近寄ってみると、そこには消えかかっている物の、十二星座のマークのような物が刻まれていた。
「んー？　何なのだ？　みんな見てみるのだ」
　真央に呼ばれ、一同集まって観察する。
「ホント、これって何だろう？」
　不思議に思ったルークが触れたとたん、門が音を立てて開き、中から真っ白い光が溢れる。それが収まり目を開くと……そこには見覚えの或る町並みが広がっている。
「これって、第一階層の城下町か？」
　遥斗の言葉に、ルークは思わず門を潜る。と、確かに第一階層の城下町のようだった。
「もしかして、月華世界と星幽塔を結ぶ門……なのか？」
　武道の言葉に、その場に居た全員が納得せざる終えなかった。
　不思議に思いながらも一同は話し合い、一度撤退しようとした。が、その時だった。

　――『嵐の国』の解放、お見事でした。

　不意に祠の奥から声がし、全員が様子を伺っていると、祠の奥からふわり、と風が吹く。
（まさか……）
　亮は僅かに表情を険しくした。なぜか、とても嫌な予感がするのだ。だが、それとはうらはらに、辺りの空気は清々しいものになっていく。
　急に突風がふいたかと思えば、白い光が辺りを包む。眩んだ世界の中で、確かに若い男の声がする。
「俺が封印の礎となってどれだけたったのかはさておき。……嵐の国が解放されたということは、本格的に呪皇と戦うという事ですね？」
　目を開き、漸く元の視界に戻った時。一同の前にいたのは白い髪をポニーテールにした若者だった。その体に淡い青に輝く鎧と白い外套を纏った彼は、静かに言う。
「俺の名は『白虹』（びゃっこう）。剣をこの世界に預け、戦い続ける事を誓った者。……祖霊として、今戻った」
　その言葉に、刹弦は僅かに息を飲む。そして、僅かに表情を曇らせた。
「どういうことなのだ？」
　真央の問いかけに、刹弦はよく通る声で答える。
「彼が、かつてこの月華世界を救った英雄。そして……」

　――愛憐様を裏切った、と伝えられる男です。

　刹弦の言葉に、その場の空気が凍りついた。

（終）

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