桜目指して！　入学試験｜リアクション

桜目指して！　入学試験

☆やるしかない！

　寝子高入試の日。
（ついにこの日が来たのね）
　水上桜は自宅で、受験勉強を頑張ってきた日々を思い返した。
　終盤にかけて苦手科目の公民で思い切り躓き、一時は堂々巡りの混乱に陥って散々だった。
　自分でも困惑するほどイラついてたけど、いろんな人に助けられて、今日の日を迎えられたと思う。
　家を出るとき、忘れものがないか厳重にチェックした。
　特に受験票を忘れたら話にならない。
　受験番号は１９４番。
（「行くよ」で寝子高へ入れる縁起のいい番号……なのかな？）
「もうここまできたら……やるしかないよね」　

　寝子高１年の恵御納夏朝は、寝子高へ来た受験生達を昇降口で案内していた。
（僕も、去年は受験に来てたっけ……懐かしいな……）
　つくば市の中学の、長袖の白のセーラー服を着て受験した１年前を懐かしく思いだす。
（……っと、いけない、ちゃんと彼等を案内しないと！）
　我に返った夏朝の前に、きょろきょろしている前髪ぱっつんのかわいい少女が歩いてきた。
（普通科・芸術科・体育科どの科を受験する人かな……）
　少女の様子を観察しながら声をかける。
「こんにちは。受験番号は何番ですか？」
「あ……１９４番です」
　桜は手にした受験票を見せながら答えた。
「それなら、ここの階段を上がった二階すぐの教室だね」
　夏朝は予め受験会場の教室等や、科と受験番号での割振を確認している。
　パンフレットも一部もらってきているので、スムーズに案内ができていた。
「ありがとうございます」
「頑張ってね」
　礼を言ってそちらへ向かう桜の背中に、そっと声をかけ見送った後、夏朝は案内に戻った。

「こんにちは。受験番号は何番ですか？　あれ……」
　おどおどして何も言えない様子の受験生に、夏朝は笑いかける。
「人見知りとかで答えられないなら、受験票見せてもらえるかな？　受験番号から、受験教室等がわかるかも」
　受験生はおずおずと受験票を差し出す。
「うん、これならここの階段を上がった二階すぐの教室だよ」
　人見知りらしい受験生は、焦りつつ夏朝に頭を下げてそちらへ向かって行った。
（頑張ってね……）

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