桜目指して！　入学試験｜リアクション

桜目指して！　入学試験

★寝子高合格発表

　合格発表の日。
　時間を確認し、脚立に乗った八神修が発表用紙を掲示した。
　
　寝子高に向かう貴家衿花に、母が付いてきてくれた。
「お母さんもこういう日って緊張したのかしら？」
「そりゃあそうよ。あなたと一緒よ」
(自己採点は良かったんだし、問題はないはず。でももしも間違っていてだなんて考えちゃって)
　そんな衿花の不安を見透かしたように母は言う。
「校門で待っているつもりだったけど、やっぱり見に行きたいわ」
　少し離れて衿花の後ろをついてきた。
　人だかりがしている掲示板のほうへ近づいていく。
「あれね。番号は……」」

　水上桜は、校門をくぐると、そばに合った樹の枝を見上げた。
　自分の名前の通り、桜を咲かせられるだろうか……？　
　意を決して掲示板へ向かう。
「１９４番、１９４番……」
　恐る恐る、自分の番号を確認する。
「あった！」
　受験番号を見つけた時、呆然と立ちすくんだ。
　そして。
　ポロリポロリ、桜の花びらが舞うように涙がこぼれた。
（……桜、咲いたんだ……）

「合格の方は、こちらで必要書類を受け取ってください」
　今日も手伝いに来ていた恵御納夏朝は、受験生に声をかけながら、彼らの様子を感慨深く見守っていた。
（去年は僕もお父さんお母さんと一緒に発表見て泣いて喜んでたっけ）
　受からなかった皆にも頑張った分に見合った別の幸せが訪れますように、と願う。
（受かった皆は、おめでとう……来年度もよろしくね）

　パトリシアはいつも通りハイテンションだった。
「今日も寝子高の制服の人いる、ラッキー！　あ、まずは番号確認しなきゃ」

「あった……間違いないよね？」
「ええ。おめでとう……これで安心ね」
　番号を見つけて母と共に確認した衿花は、ホッとして周囲を見回していた。
（一緒に受験した人は大丈夫だったかしら……？　あ、あの犬耳帽子の子がいる）
「＼きゃー♪／」
　掲示板を見て飛び跳ねているところを見ると、合格だったのだろう。
　中学でも見たことがある気がする、明るそうなその子に、衿花は話しかけてみることにした。
「こんにちは。……結果、どうだった？」
「＼ほえー！？／　合格だよ～♪」
「おめでとう。私もなの」
「やったね！　毎日かっこいい制服が見られるね♪」
「……えっ？」
　思いがけないリアクションに戸惑う衿花。
「あ、何でもない～」
　そこへ母の呼ぶ声がした。
「衿花、記念写真ですって。撮ってもらう？」
「記念写真！　撮ろう♪」
　答えたのはパトリシアのほうである。

「合格おめでとうございます。希望者の方に、無料で写真撮影を行っています」
　修はにこやかに案内していた。
　新聞部の機材を持ち込み、発表用紙や校門をバックに撮影。
　撮った写真は即座に傍らのプリンターで出力して渡せる。
　希望者はたくさんおり大変な作業だったが、笑顔に囲まれて充実した作業だった。
「春にまた会えるのを楽しみにしていますよ」

　校門を出て人目がなくなると、衿花は母の腕に飛びついた。
「合格お祝いにどこかでケーキを食べていきましょ！　家に帰る途中に、美味しいカフェがあるのよ」　
「いいわね。どこかしら？」
　二人は弾む足取りでカフェへ向かった。
　

（バイト代で本を買っていくか）
　その後後片付けを終えた修は、心地よい疲労と共に帰ったという。

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