桜目指して！　入学試験｜リアクション

桜目指して！　入学試験

☆帽子の秘策

（うわわわっ……！　ついに入試の日が来ちゃったよー！　と、とにかく頑張って合格しないと！）
　いつもの耳付き帽子を被って寝子高にやってきたのは、スペイン出身のお気楽元気娘パトリシア・プロウライトだった。
（寝子高の前まで来るとやっぱりドキドキするよね。こんなにたくさん人がいて、みんなライバルだなんてトンでもないですよ！？）
　たくさんの受験生を見ながらそう思う。
（……ふふふ、しかしノープロブレム！　私にはとっておきの味方がいるのデス）
　試験案内の高校生の目が届かないところに来ると、小声で帽子に話しかける。
「……ね、マルク。起きて起きてっ（こそこそ」
　ろっこん『いつでもいっしょ』が発動する。
「なんの用だ。これから受験だろ」
　犬耳帽子に、成人男性の人格が宿り喋りだす。粗野だが仲間思いのその人格の名前はマルクと言った。
「えっへへー、だって一人だと心細いんだもん……！」
「友達いないのかよ」　
　そっけないマルクの言葉にもめげず、パトリシアは頼み込む。
「てかてか、入試中もマルクが教えてくれたらいいんじゃん……！　マルク大人でしょっ、頭いいんでしょ！」
「アホか。そういうのは本人のためにならねえ」
「えー、そんなこと言わないで……困ったとき助けてくれたっていいでしょ」
　話に夢中になっていたパトリシアは、近づいてきた寝子高生に気づくのがちょっと遅れた。

「どうかしたのか？」
「＼ほえー！？／」
　声をかけられて驚きつつ相手を見る。
　パトリシアと同じくらいの背の男子だが、制服は寝子高のものだから先輩なのだろう。
　入試補佐と書かれたネームプレートには、新田という名前があった。
「えっと、その……すみません。この受験会場はどこですか？」
　慌ててごまかすパトリシア。
「その場所ならここを行って突き当りの教室だよ」
「ありがとうございます。助かりました！」
　頭を下げるパトリシアを見ながら、亮は思う。
（受験に来る奴らは皆、俺達みたいに努力してるんだよな）
「なぁ、君」
　ふと言葉が亮の口をついて出た。
「はい？」
　急に何だろう、と思いつつパトリシアは亮の制服を眺めていた。
「必ず受かると信じて、全力で頑張れよ」
「は、はい！　ありがとうございます！」
（老婆心なんて柄じゃないけど、たまには良いか）
　そう思いながら亮はパトリシアを見送った。
　