桜目指して！　入学試験｜リアクション

桜目指して！　入学試験

☆クールな優等生

（入試のシーズンになったな）
　自分の大学入試準備も進めているが、こうして入試会場に立つと気が引き締まる。
　八神修は、生徒会副会長として未来の後輩の手伝いに来た。
「じゅ、受験票わすれたー！」
　悲鳴が上がった先を見ると、青ざめた男子生徒がカバンの中身をひっくり返していた。
「落ち着いて。家に忘れたのか？」
　修が声をかけると、男子生徒は唇を震わせた。
「なくさないように机の上に置いたのに、出がけにしまってくるのを忘れて……」
「家の人に電話して持ってきてもらうといい」
「……いるかなあ」
「もし家の人がいなかったら自転車を貸そう。まずは電話してみるといい」
「う、うん」
　涙目の受験生は、電話を始めた。
　幸い家の人と連絡がついたようだ。
　だが落ち着かない様子だ。自分でもこれではいけないと思ったのか、修に話しかけてきた。
「あの……ありがとうございます。少しお話聞いてもいいですか」
「ああ、もちろん」
　修は紳士的に頷いた。受験票が届くまでは落ち着かないのも無理ないだろう。
「この学校って、どんなところですか」
「寝子高は部活も盛んだし色々なイベントもあるよ。文化祭や体育祭の他にも焼芋焼いたり水泳会があったり卒業生を送ったり、ね」
「焼き芋も？」
　驚いた様子の受験生に修は微笑む。
「ああ、楽しいよ。あと、猫が沢山だな。校長室にも可愛いの居るから入学したら見せて貰うのも良いね」
「そうなんだ……」
　涙目だった受験生の顔色がよくなってきた。
「あ、母さん！」
　無事受験票を受け取った受験生は、お礼を言って会場へ向かった。
　
「ね、あの先輩素敵じゃない？」
　修の様子を見た女子たちが囁き合っている。
　たとえ受験会場であっても、恋愛体質の女子はイケメンを見逃さないのだ。　