ダイエット！　フツウ体重の危機！｜リアクション

ダイエット！　フツウ体重の危機！

　修は体育館のランニングマシンで必死に走った。
「ふう、水分や塩分も補給しなくてはな」
　レモン水を飲んでいると、窓から不思議なものが転がってくる様子が見えた。　
「どこかで見たような？」
　まん丸で玉ころがしの大玉のようなそれは人間のようだ。
「ギャー、こっちくんな！」
　テオが慌ててよけた。
「テオ？　大丈夫か！」
　体育館入り口を開けると丸く膨らんだ猫が飛び込んでくる。だが、テオではない。
「テオじゃないのか……まあ、避難したほうがいいな」
　猫が修にすり寄ってくる。
「おいおい、運動させてくれ」
　体育館の床の上にクッションがあり、その上にある問題集も気になる。
（誰かが忘れていったのだろうか……見たことがない問題集だな）
　つい手を伸ばしてめくりたくなる。
　だがそうしたが最後、問題に夢中になってしまうだろう。
「なんだこの誘惑は。なんとしてでも振り切らねば！」
　気持ちを抑えて走り出したとき。
　ドシーン！　
　体育館の扉が振動した。

「何事だ……雨寺？」
　出てみると、まん丸な凛が目を回していた。
「あいたたた……ようやく止まったよ……」
　どうやらケガはないようだ。
「大丈夫か？　それにしても……和むな」
　まん丸な凛の姿に、思わず修はつぶやく。
「大変だったよー。でも、これって勢い付けてやったら結構運動になってるかも……？」
「やってみるか？」
　さっきから修はまん丸な凛を転がしたい衝動に駆られていた。
　クッションに向って軽く押してみる。
　ころころ……ボールのように転がった凛は、クッションに当たってぽふーん、と跳ね返った。
「幸せそうだな」
　修は気持ちよさそうな凜の様子に和む。
（まさにころ凜）
　という言葉は口に出さずに心の中にとどめておいたが。
「広いところに出てやったら楽しいかも！」
　凛はそのままの勢いでダッシュし、外へ転がっていった。
「おおー、結構汗かいてるし、いいんじゃない？」　
　そう言って転がっていった凛を見送ると、
「またか！」
　と、テオが逃げ込んできた。
「一緒に走らないか」
　修は提案する。
「誰かと一緒なら心も折れ難いからさ」
「知ったことか」
　プイとそっぽを向き出ていこうとするテオだが。
「やっぱりここデーシタか」
　露草が顔を出した。
「テオさん、逃げていてはだめデース」
　露草は、さっきシーサイドタウンで買った新品の猫じゃらしを取り出した。
「これでドウですか」
　鼻先で猫じゃらしを振られ、つい目が離せず手を出してしまうテオ。
「一緒にカロリー消費デース！」
「テオ、ここにいたんですね。ツボマッサージしてあげます」
　現れた綾花が、疲れて止まったテオをすかさず確保する。
「や、やめろ……」
「まずはお腹のマッサージから」
　膨らんだテオのお腹をむにむにする綾花。
「いいな……」
　ちょっとうらやましい修だが、気を取り直して走り出した。　
　と、リズムに乗った歌声が聞こえてくる。
「ん、あの声は……」　
　気づいた修の走りもリズミカルになる。
「音楽に乗って走るのも楽しいな」　
　
　そのころ、転がっていった凜は、身体の変化に気づいていた。
　前ほど簡単に転がらなくなっていたのだ。
「ちょっとは細くなって転がりにくくなったかな？」
　さすがに転がるのにも飽きてきた。
「後は私がカロリー消費するって言ったらこれでしょ！」
　マイクを構えて、腹筋に力を込めて大声で熱唱する！
　歌いつつ、ライブを意識してジャンプしたり動き回って頑張って脂肪燃焼させる。
「努力も工夫次第で楽しくやれれば続けられたりするもんだよねっ！」　

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