仲良くなりたい、その２｜リアクション

仲良くなりたい、その２

☆芽森菜々緒

　休日の朝、桜庭円は読んでいた『格闘技から編み出されたスポーツ』を閉じた。
　もちろん愛読する寝子島書房の本である。
「ボクは触発された！」
　唐突に立ち上がる。
「ナナオ、ゴルフ出来るって、聞いたことあるかも！」
　しばらくの後、円はゴルフバッグを担いで星ヶ丘の芽森菜々緒の家を訪れた。
「ナナオー！　ゴルフー、ゴルフやろう！」
「……突然どうしたの？」
　友人の発言の唐突さには慣れつつある菜々緒だが、やはり驚かざるを得ない。
「この本のゴルフの項目見てよ！　ゴルフは棍棒術から、始まったって説があって」
　そう本を突き付けられ、読もうとした菜々緒だが、その内容の怪しさに目が滑り、頭が理解することを拒否した。
（何このトンデモ理論？　……なんだか別の人格が目覚めかねないわ）
　菜々緒の当惑を気にせず円は誘う。
「技練習したのはいいんだけど、相手が居なくて。経験者と一緒にコース回ってみて成果を試そうと思ってさ！　遊びにいこう！　大丈夫、ゴルフゲームでルールは覚えた」
　そう言って携帯ゲーム機のNSPを見せるのだった。
「……遊びに行くのは構わないわ。準備するからちょっと待って」
「やったー！」
　
　二人は船と車を乗り継いで本土のゴルフ場に着いた。
「うわあ、広くて紅葉が綺麗だね」
　円が歓声を上げる。手続きを済ませた菜々緒は、しばし待つとばっちりゴルフウェアで決めて出てきた。
「お待たせ」
　こうして二人の棍棒術、もといゴルフが始まった……
　
　ＯＢに次ぐＯＢ、棍棒術というより砂場で穴掘り、な状況にもなって、周囲の人たちを呆れさせたが。
「ゲームより楽しいねこれ！　やっぱり寝子島書房に取り上げられるだけあるよ」
　円は満足していたし、苦笑しつつ菜々緒も楽しんでいたようだ。　