仲良くなりたい、その２｜リアクション

仲良くなりたい、その２

☆桐島義弘

　旧市街にある宮祀青果店。
　店主の孫娘である宮祀智瑜が店番をしていると、立ち止まる人影があった。
「いらっしゃいま……義弘先生！」
　突然桐島義弘先生がやってきて、智瑜は動揺した。
「店番か。感心だな」
「は、はい……お買い物しにきてくださったんですね」　
　自分に会いに来てくれたら……などと一瞬智瑜は思ってしまって、ドキドキしつつ、それを表情に出すまいと一生懸命話しかける。
「ああ。たまたまこっちに来たついでに野菜を買って帰ろうと思ってな」
　野菜に視線を向ける桐島先生に、智瑜はふと浮かんだ疑問をぶつけてみた。
「義弘先生は自炊歴長いんですか？」
「長い、の定義がわからないので回答できないが、家を離れてからだから長いのだろうな……料理は時間をかけてきちんと作るほうだ」
　生真面目に答える義弘先生。
「今日作るお料理は決まっていますか？」
（決まっていなければ、何をお勧めしましょうか……）
　一番良いものを、と考えながら智瑜は尋ねる。
「休日だし煮物を作ろうと思う。具財はまだ決めていなかったが」
（先生、家庭的なんですね……）
　頷きながら智瑜は少し考えて、
「それじゃ、人参にごぼうはいかがでしょうか。他にも、さといもとかしいたけとか……」
　と勧めてみた。
「そうだな、それでいこうか」
　桐島先生は頷き、勧められた野菜を自分で吟味する。
（なんだか、夫婦で買い物をしているような）
　またドキドキが強くなり、仕事を忘れてはいけないと気を引き締める。　
「おまけけしておきますね。ありがとうございました！」
　最高の笑顔で智瑜は代金を受け取った。
　先生から受け取ったお金をレジにしまってしまうのを、ちょっと惜しいと思いつつ。

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