仲良くなりたい、その２｜リアクション

仲良くなりたい、その２

☆野々ののこ　２

　別の日の昼休み。
「今日のお昼は購買でパンでも買って屋上で食べよう」
　羽生碧南は、寝子島パンと焼きそばパン、ねこーひー牛乳を購入し屋上へ向かった。
　そこに、見覚えのあるアホ毛、いや先客がいた。
「あ、ののこちゃんもここで食べてたんだ」
「むがひゃんも……もぐもぐ」
　言葉が変なのは口にほおばっていたパンのせいだ。
「一緒に食べてもいい？　あ、ののこちゃんも寝子島パン買ったんだね？」　
「うん、いいよ！　寝子島パンおいしいよね♪」
　ののこの隣に座り、碧南はパンの袋を開ける。
「釜揚げしらすが入っているなんて、最初はどんな味なんだろうと思ってたけど、けっこうハマっちゃうね。……でもしらすたっぷりで、こぼさずに食べるの難しいよね」
「あー、絶対無理だよー」
　ののこの言葉に、碧南は反論する。
「え、そうかな？　気をつけて食べれば大丈夫なはずだよ」
「えー、じゃあ碧南ちゃんこぼさず食べられる？」
　ののこの言葉に、内心ちょっとしまったと思う碧南。
「うっ……チャレンジするもんね」
　どこからかぶりつくべきか。碧南は寝子島パンをじっと見つめる。
　小さくちぎれば、それだけはみ出してこぼれる可能性が高い。
　しらすは真ん中あたりに入っているから、外側は安心だけど……。真ん中は一口では食べられない。
　なるべくはみださせるまいと気をつけながら、思い切ってかぶりつく。
　しかし、白い魚はパラリと地面に。
「……やっぱりこぼした。あーあ、もったない……」
　碧南の情けない声に、ののこがぷっと吹き出した。
「あはは、やっぱり難しいね」
「本当」
　つられて碧南も笑い出していた。　

　　　
「野々、校長室の猫たちと遊びに行こう」
　ののこが屋上から戻ると、八神修が声をかけてきた。
「いいね、行こう！　そういえば最近様子見てなかったな～」
　修の返事を待たずにののこは校長室へ走り出している。
「廊下は走るなよ」
　追いかけながら修は考える。
（俺は人間に不当に干渉する自称神種族とは相容れない。だが野々は意図せず影響してしまう事はあっても、本人はそれは望んでない。だから俺にとっては普通の人間だ）　
「失礼しまあす」
「ミャー」
「わあ、かっわいい～！」
　校長室に飛び込んだののこと修を、子猫たちが迎えてくれた。
　先生もいたはずだが、子猫たちの可愛さの前には視界に入らない。
「猫の気持ち良い場所と撫で方を教えるよ。俺みたいに猫に懐かれるようにさ」　　
　そう言うと修は、そっと猫を撫でてみせた。
　が、すでにののこはもう一匹の猫を撫でている。
「知ってるよ～。猫はお友達だもん。ここが秘密のツボだよ」
　と顎のあたりを撫でてみせる。
「そうか、ならよかった」
　ののこはねこみゅ（猫さん大好きコミュ）に所属しているほどの猫好きなのだ。
「あったかいね～」
　猫にすりすりされながら、ののこは嬉しそうだ。
「うん、暖かいな。生きてるって不思議で大切だよな」
　野々が命の大切さを実感できたら嬉しい、と思う修だった。