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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
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その胸のあまりに痛きこと
【未来を、輝き照らす為に】
ひんやりとした風が頬を打つ。
時刻はあちこちの家で夕食の並ぶ午後８時を過ぎた頃。
十文字 若菜は教会の中、礼拝堂まで走り抜けて。
そこで陸上部で走り慣れた自分でも、寮からここまでの距離を全力疾走する事で、流石に己の息が息切れをしている事を自覚した。
その瞳に映る景色は、幼い頃から何も変わってはいない。
若菜は星ヶ丘に寮があるが、ちょくちょく実家には姿を見せる。
そして──喧嘩をするのだ。両親と、ちょくちょくどころか喧嘩をしない時が無い位に。
しかも、今日は一際酷かった。出されていた夕食は一口食べたか食べなかった位だろう。
両親と喧嘩するきっかけはいつも決まっていた。それは、両親にも影響する若菜の進路目標──若菜の、夢。
見上げたステンドグラスは、初めて幼少の頃に見つめた時と何も変わらない。
それを見た幼い若菜は、まるで一目惚れをして恋に落ちたかのように、大人になったらそれに携わる職人になろうと決意した。
子供の頃からの変わりの無い決意だった。
その時は、両親も笑って若菜に同意した。大人になったら──そんな言葉を付け足して。
しかし、いつかそんな思いも忘れるだろうと思っていたあの頃。
両親、特に父親にとって、その固い決意が本物であった事を悔いると同時に、猛烈に反発した。
これならば、幼い娘に過酷な現実を突きつけて、いっそ“なれない”と言っておいてしまった方が遥かにましだったと思う程に。
そして将来の夢に、ずっと“ステンドグラスの職人”を掲げてきた若菜は、とうに調べるうちに、それが不可能ではない事を知るに至っていた。
──それが、進路相談で判明した時。親子の互いの齟齬は決定的なものとなった──
それからは、若菜は父親と顔を合わせれば喧嘩の毎日。
若菜は星ヶ丘の寮にいるが、それでも家に時折喧嘩を覚悟で帰るのは、ひとえに父親を説得したいからに他ならない。
しかし、今日は……その為の、努力に努力を重ねている若菜にとっては本当に酷いものだった。
“家に金があるからと、失敗しても何とかなるとか思うんじゃない。進路はやり直しの利く娯楽じゃないんだ”
──若菜は、努力をしてきた。
確かにステンドグラスの職人に資格は要らない。しかし、日本ではそれこそ趣味の範囲のカルチャースクールは行われても、今悔し涙でぼやける瞳に映るステンドグラス等を手に掛ける事は不可能で。
その手の職の依頼なども日本では壊滅に等しく、本格的に携わり生きるため、海外へ行く為のバイトも貯金もしている。英語を含む複数の外国語の勉強だってしているのだ。
遊んできた訳ではない。夢に対して、気楽な気持ちで取り組んできた訳では決して無い。
若菜は、そんな父親に親子の絆に、確実に罅と溝を入れる言葉を絶叫した。
あれだけ居丈高に言葉を続けようとした父親は唖然とし、母親は両者を取り繕う言葉を忘れ、実家の沈黙と空気は一気に凍りついた。
そんな中、一人、叫んで熱の下がらない若菜はそのまま外へと飛び出した。
気がつけば、ここにいた。
外の闇のせいか、青が黒に近く際立つステンドグラスから、瞳を下げて俯いたら涙がぼろぼろと床に零れた。
気持ちはもうぐちゃぐちゃだった。白い教会の壁に、耐え切れずに左拳を打ち付ける。
よりにもよって、大好きな場所の建物にあたってしまった事で、一気に理性が戻ってきた気がした。
「分かっているわよ……っ」
分かっている、両親が若菜を心配して言っている事くらい。分かっているから、反対を口にしてくれる事くらい。
それでも、今日のは酷い。
そんな事、言われたくなかった。
努力していること、全てを無碍にされているように言われたくなかった。
ただ──それでも。
若菜は、そんな両親に言ってはならない言葉を返してしまった。
どんな事を言われても、諦める気はない。
それでも、あんな言葉を言ってはならなかった。
「今日は、もう顔合わせられないかな……」
頭が冷えて、力が抜けるように傍の会衆席に崩れるように座り込んだ。
今日顔を合わせたら絶縁騒ぎにまで発生しそうであったから、実家に戻るという選択肢は頭から削除した。
もう一度、座りながら、天井のステンドグラスを眺める。
再び滲み始めた瞳で、聖堂のランプに下から照らされたステンドグラスがきらきらと霞みながら光を返す。
こんな綺麗なものを自分も作りたい──その思いに嘘偽りなど無いから。
そのまま、瞳を閉じてステンドグラスに祈った。
自分の父に、酷い事を言ってしまった事への謝罪を。
今、両親と対立までしているのに、それでも自分の夢を諦められないことを。
そして、最後に力強く、祈り──願った。
いつか、両親に認めてもらえる自分になる。
絶対に──
ひんやりとした風が頬を打つ。
時刻はあちこちの家で夕食の並ぶ午後８時を過ぎた頃。
十文字 若菜は教会の中、礼拝堂まで走り抜けて。
そこで陸上部で走り慣れた自分でも、寮からここまでの距離を全力疾走する事で、流石に己の息が息切れをしている事を自覚した。
その瞳に映る景色は、幼い頃から何も変わってはいない。
若菜は星ヶ丘に寮があるが、ちょくちょく実家には姿を見せる。
そして──喧嘩をするのだ。両親と、ちょくちょくどころか喧嘩をしない時が無い位に。
しかも、今日は一際酷かった。出されていた夕食は一口食べたか食べなかった位だろう。
両親と喧嘩するきっかけはいつも決まっていた。それは、両親にも影響する若菜の進路目標──若菜の、夢。
見上げたステンドグラスは、初めて幼少の頃に見つめた時と何も変わらない。
それを見た幼い若菜は、まるで一目惚れをして恋に落ちたかのように、大人になったらそれに携わる職人になろうと決意した。
子供の頃からの変わりの無い決意だった。
その時は、両親も笑って若菜に同意した。大人になったら──そんな言葉を付け足して。
しかし、いつかそんな思いも忘れるだろうと思っていたあの頃。
両親、特に父親にとって、その固い決意が本物であった事を悔いると同時に、猛烈に反発した。
これならば、幼い娘に過酷な現実を突きつけて、いっそ“なれない”と言っておいてしまった方が遥かにましだったと思う程に。
そして将来の夢に、ずっと“ステンドグラスの職人”を掲げてきた若菜は、とうに調べるうちに、それが不可能ではない事を知るに至っていた。
──それが、進路相談で判明した時。親子の互いの齟齬は決定的なものとなった──
それからは、若菜は父親と顔を合わせれば喧嘩の毎日。
若菜は星ヶ丘の寮にいるが、それでも家に時折喧嘩を覚悟で帰るのは、ひとえに父親を説得したいからに他ならない。
しかし、今日は……その為の、努力に努力を重ねている若菜にとっては本当に酷いものだった。
“家に金があるからと、失敗しても何とかなるとか思うんじゃない。進路はやり直しの利く娯楽じゃないんだ”
──若菜は、努力をしてきた。
確かにステンドグラスの職人に資格は要らない。しかし、日本ではそれこそ趣味の範囲のカルチャースクールは行われても、今悔し涙でぼやける瞳に映るステンドグラス等を手に掛ける事は不可能で。
その手の職の依頼なども日本では壊滅に等しく、本格的に携わり生きるため、海外へ行く為のバイトも貯金もしている。英語を含む複数の外国語の勉強だってしているのだ。
遊んできた訳ではない。夢に対して、気楽な気持ちで取り組んできた訳では決して無い。
若菜は、そんな父親に親子の絆に、確実に罅と溝を入れる言葉を絶叫した。
あれだけ居丈高に言葉を続けようとした父親は唖然とし、母親は両者を取り繕う言葉を忘れ、実家の沈黙と空気は一気に凍りついた。
そんな中、一人、叫んで熱の下がらない若菜はそのまま外へと飛び出した。
気がつけば、ここにいた。
外の闇のせいか、青が黒に近く際立つステンドグラスから、瞳を下げて俯いたら涙がぼろぼろと床に零れた。
気持ちはもうぐちゃぐちゃだった。白い教会の壁に、耐え切れずに左拳を打ち付ける。
よりにもよって、大好きな場所の建物にあたってしまった事で、一気に理性が戻ってきた気がした。
「分かっているわよ……っ」
分かっている、両親が若菜を心配して言っている事くらい。分かっているから、反対を口にしてくれる事くらい。
それでも、今日のは酷い。
そんな事、言われたくなかった。
努力していること、全てを無碍にされているように言われたくなかった。
ただ──それでも。
若菜は、そんな両親に言ってはならない言葉を返してしまった。
どんな事を言われても、諦める気はない。
それでも、あんな言葉を言ってはならなかった。
「今日は、もう顔合わせられないかな……」
頭が冷えて、力が抜けるように傍の会衆席に崩れるように座り込んだ。
今日顔を合わせたら絶縁騒ぎにまで発生しそうであったから、実家に戻るという選択肢は頭から削除した。
もう一度、座りながら、天井のステンドグラスを眺める。
再び滲み始めた瞳で、聖堂のランプに下から照らされたステンドグラスがきらきらと霞みながら光を返す。
こんな綺麗なものを自分も作りたい──その思いに嘘偽りなど無いから。
そのまま、瞳を閉じてステンドグラスに祈った。
自分の父に、酷い事を言ってしまった事への謝罪を。
今、両親と対立までしているのに、それでも自分の夢を諦められないことを。
そして、最後に力強く、祈り──願った。
いつか、両親に認めてもらえる自分になる。
絶対に──
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2015年08月28日
- 参加申し込みの期限
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- 2015年09月04日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2015年09月04日 11時00分
