石造りの2階建て、その1階が店舗スペースである。
日の差し込む一角が外から中が見えるショーウィンドウにはサンプルの箒が飾られており、申し訳程度の客引きとなっている。
店内は開放的で存外物は少なく歩きやすい、シンプルでナチュラルなテイスト。
魔法具の材料となる素材のサンプルが宝石箱のような物に入った状態で設置されている円形の大きめなカフェテーブルが空間の中央にあることと、奥に元は喫茶かバーでもやっていた建物なのかカウンターテーブルがあること、そしてお試し用の品を収めたガラスケース程度。
*
入口には、
【小さな道具、お買い求め頂けます】
【魔法の手助け致します】
・小さな素材を貴方に合った形に加工します。
箒の材料でも、貴方が持っているものでも、此処にあるものでもかまいません。
星の力に『形』を持たせる際の補助に。小さな変わった小物として。お気軽にご相談下さい。
・店主が趣味で作った道具達もお譲り致します。
如何せん、癖が強い子が多いこととは思いますが気になった子、手に触れてみたい子が居た場合はお気軽にお申し付け下さい。
と記されたボードも置いてある。
現在の商品説明板(コメント8~10が現在のラインナップ。ツイッターで紹介した分の在庫も店の奥に)
https://rakkami.com/topic/read/2655
探しに行く側としては困った話だろうなぁ…それ。
まぁ結局俺はチェスが帰ってこなかったら探しに行くし、それを迷惑だと思ったことはないけど。
多分ね。違ったらまた探し直せばいいだけだし、気軽に触ってみてよ。
一応他のサンプルも持ってきたからさ。
(巡り人の箒と自ら呼んだ、年月と変遷を感じさせる独特の流線形と丸みを持つ流木の箒を片手に持ってきたがひとまず今ある箒との相性を見極めるべく差し出さずに抱えて)
由来は俺もよく分かんない。箒屋さんしか知らないって。
あと箒の意思もぼんやりしか分かんないから、その辺はチェスの方が適任だな。
でも縁はちょっとだけ分かる。俺達、適材適所で生きてるんだよ。
そう、なんですか……?
(迷子を楽しむと言う言葉を聞いて首を傾げ)
ですが、お迎えがあるのならば安心して迷子になれるかもしれませんね。
はい、ぜひ触れてみて下さい。
僕自身では箒と担い手の縁や由来に特別詳し訳では無くて。
箒屋さんやクーノさんの方が得手ではあるのですが……。
それでもこの子は此処にこうしてやって来ましたし、お客様も嫌だと思わないのであるならば。
きっと良いもの、良い縁であると思います。
(そっと箒を浮かべたままアルレッテさんの方へ箒を差し出し)
ああ、迷子は心配しなくていいんだ。
一通り迷子を楽しんだら心配性が迎えに来るから。
(じっと箒を見つめながら話を聞き。終わってから二度三度目を瞬かせる)
つまりこの子は……私のところに来たがっているのかな?
だからーー呼ばれた?
ふふ、神様の声は聞いても箒の声は聞いたことがなかったからもしそうだとしたら何だか楽しい気持ちになるね。
触ってみてもいいかな?
なんだかレイに怒られた時に守ってくれそうだ。
(優しく怒るレイの小言をぷかぷか上空で聞き流す様を想像して笑みを浮かべながら、小首を傾げる)
迷子、ですか?(目をぱちりと瞬かせ)
僕もよくなりますが、大丈夫なのでしょうか……でも、呼ばれたと言うことも……うーん、そうですか。なるほど(一人で小さく納得したように頷き)
『未だ見ぬ君へ』この子は客様のものかもしれません。
(ふわりと机の上にあった箒をテーブルの上から降し、自分の胸あたりの高さに浮かべ)
これは、繊細で想いのこもった髪留めを芯に使った箒です。
芯を包む柄自体は祈りが指向性を持つ前の純度の高い結晶で出来ています。
穂には月光の光で羽根を休める小鳥達から分けて貰った綿羽と陽光の中で華やぐ花祭りの中を舞う風の子達を使っていて、うたた寝をする小鳥たちを優しく目的地へ運ぶように、花嵐の中でも柔らかく浮かぶ事が出来ますよ。
柄の結晶はとある祈りの場の瓦礫が年月を経て指向性が夢に溶け結晶化したもので、生まれる前のような状態になっているのだそうです。
そのため推進力や導く力と言ったものは一切無く、その祈りに指向性のようなものもありません。
在るのはただ、純粋な祈りの場としての想いそのものだけ。
想いを内包し、持ち主に寄り添い浮かぶ、静かで穏やかな凪いだ箒。
その持ち主の絶対的な味方である箒。
―――そう、箒屋さんは言っていました。浮かぶもの、寄り添うもの。
何も特別な事は出来ませんが、ただ在る事を良しとして、善しとされる比翼の箒。
不思議な箒だと言えばそうかもしれません。
優しい子だと僕は思うのですが、どうでしょうか。
(こてんとお客様につられて首を傾げながら、柔らかく微笑み)
(月神という言葉に一瞬怪訝そうな顔をしたものの、へらっと笑みを浮かべ)
ああ、じゃあやっぱお兄さんのことだきっと。
そ、看板だと箒屋って判り難いかもしんないけど、雑貨よりは箒の方が売れるかな。
需要が高いとかじゃなくって、縁に引き寄せられてくる人が多いから。
一応外から見えるショーケースに置いてるのも売り物なんだよ。
(視線の先に気が付いて立ち上がり、「そうだよ」と頷いて)
ってわけでチェス、今届いたカード付きのやつ開けたげて。多分だけどこの人のなんだと思うから。
あーとーは…一応サンプル、…巡り人の箒でいっか。
(何やらぶつぶつ言いながらショーケースを開けに行き)
ああよかった。(ゆったりと笑み店内に体を滑らす)
うん、迷子の途中になんだか気になってね。
ふふ…予感がしていたのならこれも月神の導きかな。
(店員さんの様子を目をぱちぱちと瞬かせながら眺め)
道具と……箒?なんだか色々あるんだねえ。
(店内をぐるっと見渡してからまた視線を戻し。小首を傾げる。声色は楽しさと好奇心に満ち)
それも不思議な箒なのかい?
こんにちは。いらっしゃいませですね。
(声の方を向きぺこりと頭を下げ)
はい、開いておりますよー。
此処は箒屋さんが作る箒と魔法具を取り扱うお店です。
時間に余裕があるようでしたら、宜しければ見て行ってあげて下さい。皆も喜ぶと思いますので。
(クーノさんとお客様の言葉を受け、届いた箒達を整えテーブルにスペースを作りながら)
うん、俺の記憶の上でも無い。…けちー。
(きぱっと言い切った後どこか拗ねたように続け)
(人の声にようやっと、しかしながら名残惜しげに身を起こし)
…ああ、いらっしゃい。まだも何も俺達2人が寝てたり出掛けてなきゃ殆ど開いてるよ。
何か欲しい物がある人?それとも、用もない筈なのに気になってしょうがなくなっちゃった人?
(接客役のくせに客を出迎えには行かず、行儀悪くもカウンターテーブルに頬杖をついて興味に爛々と瞳を輝かせながら来客を見つめ)
今日は、誰か来るって思ってた。お兄さんのことかもしんない。
(薬の材料を買いに出た帰り。店の入り口にあるボードに目を止める)【小さな道具】……?こういうお店もあるんだね。ちょっと……覗いてみようか。
(軽く扉を押し開き。店員さんの様子に目をぱちくり)
こんにちは、まだやってるかな?
そういえば箒屋さんからお土産の類はあまり頂いたことありませんね……?
(首を傾げながら、届いた物達をしっかり確認するためテーブルの上に並べ)
何方か、ですか。クーノさんがそう言うので在るならばいらっしゃるかもしれません。
(箒の柄をそっと撫でながら)
(ベルの音にぴくんと耳を動かし、声まで届いて顔だけを上げ)
ん、何か俺達へのお土産とかねーの?
カードあんならやっぱ誰か来るな。さっきからずっと予感がするんだ。
(箒のつくりに興味は無いのか、腕を枕の形に組んで見慣れた店内を見るともなく眺め)
(店の奥から一つだけ鳴るベルの音。その音の後に控えめな足音がクーノさんの居るカウンターの方へと近づく)
クーノさん、箒屋さんから新しい箒が届きましたよー。
箒屋さん、少し遠くまで足をのばしてるみたいでこれも遠方から届いたみたいですね。
髪留めを芯に使った比翼の箒。柄は純度の高い結晶で穂は羽根製のようです。
後は小さなブーケと『未だ見ぬ君へ』と書かれたカードも同封されていましたよー。
(小包のようになった油紙を紐解きながら机の上に並べ、リスのようなしっぽを揺らし)
(カウンターテーブルの傍に引き寄せた椅子に座り、テーブルにぐたりと上半身を投げ出す男が1人。後頭部辺りには暇と書いてあるかのよう)
…でも何か来る気がする。“呼ばれた”人が。
(服の袖と腕に埋まった口元の所為でむぐむぐと籠ってはいるがその言葉には何か確信めいたものが)