ゾンビシナリオ中に、握利平が思い返した映画
1
夜が明け、ブラインドの隙間からオフィスに日が差し込んで来る。
疲れ切った目と脳に、容赦なく刺さる光を手で遮り、同じ姿勢の相棒を見て苦笑を洩らす。
「酷え顔だ、マイク」
向かいの席で同じく苦笑いを浮かべている相棒は、無精髭をこすりながら答える。
「ジョン、俺の顔がどんなに酷いか知らないけどな、お前の額に5本だけ生き残ってる老兵達は、最後の力を振り絞って叫んでいるぞ?」
そう、俺はジョン。
そして、俺の生き残った老兵。つまり額に取り残された5本の髪の毛をディスっていやがるのがマイク。
俺の相棒だ。
「マイク、そのジョークは聞き飽きた。こうだろ? こんな孤独な戦場、逃げ出してやる!」
何が面白いのか理解出来ないジョークで、相棒は手を叩いて笑い始める。
うんざりした俺が立ちあがると、相棒は笑いながらこちらに来て言う。
「悪かった悪かった、ジョン。コーヒーだろ? 俺が淹れて来てやるよ」
ひくつく口角を無理に抑えた相棒が、俺の肩を叩く。
相棒の謝罪を快く受け入れた俺は
「ああ、徹夜明けのボケた頭を覚ましてくれるような、濃いヤツを頼むぜ」
「OK。老兵達が驚いて逃げ出さない様に、とびきり薄目に、だな?」
間髪入れずブチ込んで来た相棒に、俺は黙って中指を立てる。