隣接する道場「仙狸館」の稽古場。
過去には門下生で賑わっていたこともあったが、今は昔
現在の利用者はほぼ一人。
一応申請次第で開放されてはいるがその事実を知る者は少ない。
(獲った。必殺の手応えに全身が狂喜する。
――瞬間、世界が反転した。
思考より先に理解する。ああ、どうやら自分は投げられたらしい。
廻る視界はさながらジェットコースター。一秒未満の無重力体験。
そしてレールの無い自由落下の先には、当然墜落が待っていて――)
かッ、ハ――――…
(声も出ない。全身を強かに打ちつけ、肺から根こそぎ空気を持っていかれる。
衝撃と酸欠によって意識は断絶し、薄く笑みを浮かべたままに気を失った)