隣接する道場「仙狸館」の稽古場。
過去には門下生で賑わっていたこともあったが、今は昔
現在の利用者はほぼ一人。
一応申請次第で開放されてはいるがその事実を知る者は少ない。
(最良の間合い、最良の動作、最良のタイミングで放った自身最良の一撃。
それすらも眼前の男は完璧に合せてみせた。……そう、合わせてくれると信じていた)
―――ヅァッッ!!
(水月を狙い打ち込んだ拳、その影に隠れた必殺の一撃が発動する。
本来ならば後ろに引かれている筈のもう片腕。それが先の一撃を追う様に飛来する。
打ち込む瞬間を半呼吸だけずらす事により、ほんの一刹那のみ認識から消失する双手打ち。
手刀の形をとった不可知の凶手が、往なしの動作に入った相手の頸中目掛け襲い掛かる)