隣接する道場「仙狸館」の稽古場。
過去には門下生で賑わっていたこともあったが、今は昔
現在の利用者はほぼ一人。
一応申請次第で開放されてはいるがその事実を知る者は少ない。
……?
(投げは成った。しかし、その手応えに覚えた微妙な違和。手応えの「軽さ」)
……ーーッ
(後方から鋭く風を切る音が迫る。それに気付いた時、投げと同時に繰り出されたであろう蹴りは既に目の前に迫っていた。もはや「躱す」ことは難しい。)
……ふッ!
(其れならば、と言わんばかりに呼と息を一気に吐き出す。「躱せない」のなら「撃ち落とす」。倒れるとしても前のめりに。幸い己の脚は確と地に着いている。地に根を張り後頭部での受けを敢行する。)