何年も前に引き払われた、とある個人商店の前
「貸店舗」の3文字の真下に冷めたハチワレみたいな女が1人、陣取っている。
べっこべこにヘコんだシャッターにべったり寄っかかってあぐらをかいて
まばらになった人の流れを無気力な眠い目でぼーーっと眺めている。
ボロいギターケースにすりきれたズタ袋、煌々と光るランプが傍に置かれ
ナニを聴いているのか、ヘッドホンを着けたまま…誰かが来るのを待っている。
…
(唐突ですが助っ人が到着次第、助っ人と市子の2人で1曲歌います
時間帯は夏場の暗くなり始めた頃合い
帰宅途中、夜遊びに行きがてら、ただの通りすがり、ご近所さん…
どなたも、良かったらちょっとだけ足を止めて、聴いて行きませんか?
もしも感じることがあったなら、足跡を残してくれると嬉しいです
演者は歌い終えるまで会話できませんが、ナニカ反応はする…かも
チナミに歌や演奏の飛び入り参加はごめんなさい今回ナシの方向で…)
(眺めているうちに目が合って、なんとなく微笑んだ顔がぴしっと固まる。
背筋にぞくっとくる。
最初たどたどしいかとも感じた音色に、どろっと濃密なものが乗っかったような……)
あは。こわーい……
(内心びっくりしたものの意地で薄笑いを貫いて、微かな声で呟く)
(引き続きじっと聴き入る。
今誰かに声でもかけられようものなら飛び上がっちゃうかも、なんて頭の隅では考えつつも。
けして心地いいようなものではないのに、引き込まれる)