ビブリオバトルッ！～文系異種格闘技戦～｜リアクション

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● 北玄のオススメ『学生と学ぶソフトウェアテスト』

　次に登壇したのは、小柄な少年――かと思いきや、立派な社会人の北玄さんである。
　ズバババーーン！
　と物凄い効果音と共に玄がとり出したのは、一冊の専門書である。その名も――。
「『学生と学ぶソフトウェアテスト』ですよ！！」
　ズビャビャーン！
「この本は、僕の会社の人が書いた、ソフトウェア開発のテストを、学校の試験にたとえて説明した本ですよ！　学校で国語の試験の成績がよかったから、数学や理科も成績がよいだろうと思って、試験しないことはないですよ！　数学の試験で、一次方程式の問題を出題すれば、順列・組み合わせの理解度も分かるとは考えないですよ！　それと同じでソフトウェア開発のテストも、不具合や問題がないか調べるとき、いろんな種類のテストするですよ！　限られた時間の中でいろいろな種類をまんべんなくするですよ！」
　ＩＴ関係のお仕事をなさっている方は、開発においてテストが如何に大事で、それでいて如何にないがしろにされることが多いかご存じであろう。試験項目を１つおきにテストしてはいけないのである。納期ギリギリだからってテストなしで納品してはいけないのである。
　この本は、そういうことを学生の試験に例えて、分かりやすく述べた書であるのだろう。
「学校の試験で成績がよくても、試験問題がとても簡単だったり、一夜漬けで山を張って、偶然うまくいっただけだったりするかもしれないですよ！　それと同じでソフトウェア開発のテストも、テスト結果がよかったからといって不具合や問題がないとは言えないですよ！　テスト方法が悪いとか、ちゃんとテストしてないとかかもしれないですよ！」
　玄の言葉は次第に熱が篭ってくる。
　木天蓼工業高校を卒業し、木天蓼大学の理工学部を経て、技術系非常勤職員を経験したという玄。現在はＩＴ企業にお勤めである。
　同業であろうか、足を止めたスーツにネクタイの男性陣もしきりにうなずいている。
　あちらの目の下に隈ができた女性などは、ほろほろと涙を流している。
「試験で生徒の理解度が低いことが分かっても、補習を受けたりしないと、成績は改善されないですよ！　それと同じでソフトウェア開発のテストも、テストしただけでは不具合が残ったままですよ！　問題の原因を調査して、修正する必要があるですよ！」
　玄、渾身の大演説に、ブラボー！　そうだぜ！　と後方の男性陣から喝采が上がった。
　そうだけど、わかってるけど……！　と隈の女性はくずおれる。
　納期とかクライアントとか謎指令を出す上司とか報告しない部下とかで、彼らも苦労していそうである……。