ビブリオバトルッ！～文系異種格闘技戦～｜リアクション

ビブリオバトルッ！～文系異種格闘技戦～

● 綾辻綾花のオススメ『寝子島にゃんこ』

　次に壇に上がったのは、可愛らしいボブカットの女の子、綾辻綾花だった。
「私が紹介する本は『寝子島にゃんこ』という写真集です」
　綾花は、青空をバックに大きな瞳の縞猫が映っている表紙の写真集をみんなに見えるように掲げた。
「この写真集はシリーズになっていまして、現在１年か２年間毎に続編が出ています」
　綾花がはじめの『寝子島にゃんこ』と重ねていた本を広げて見せた。
　続編の『もっと寝子島にゃんこ』と最新刊の『やっぱり寝子島にゃんこ』である。
「この写真集はとても人気で文庫サイズの写真集も発売されるほどです。もちろん両方持ってます！」
　そう綾花は力説する。
　猫が好きで、文庫サイズの猫写真集と猫メモは常に鞄に入っているというほどだ。
　寝子島界隈の猫にも顔馴染さんがたくさんいる。
「ほとんどが野良猫で公園や商店街など身近で見かける猫ちゃんたちです。見慣れた風景と猫ちゃんという組み合わせで、カメラを気にしてない自然な姿が見れます。毛づくろいしてたり歩いてたりする姿はもちろん、建物を飛び移ってるところだったり瞳のアップだったり子猫を銜えて移動してるところはキュンっときます」
　猫に対する愛マックスな綾花の言葉に、やはり猫好きだろう少女たちがうんうんと頷いている。
　そんな人々に勇気を貰った綾花は付箋を付けたページをいくつか開く。
「これは、寝子島漁港にいる猫さんです」
「こっちは、寝子島神社のあたりを縄張りにしてる子ですね」
「この子は学校帰りに公園でよく会うんですよね」
　説明しながら、猫たちのことを思いだす。思わず笑みが漏れる。
「あなたが昨日見かけた猫が写真集の中にもいるかも？　テオっぽい猫も映ってますよ」

　ほとんど紹介が終わったそのとき、綾花は群衆の中に寝子島高校の司書の早川珪の姿を見つけた。
　面白そうだと思って、足を止めたのだろうか。
　もしかして、私の声を聞きとめて？
　気になる先生の姿に、跳ねるハート。
「こ、この本を見て、一人でも多く猫好きが増えたらいいなって思ってます。これで私の紹介を終わります」
　綾花はぴょこんと頭を下げると壇を下りた。
　先生の姿を時折視界に入れながら。

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