ダンシングで人類愛な祭りの準備｜リアクション

ダンシングで人類愛な祭りの準備

【ダンシングで人類愛な祭りの記録】

　後木真央は考えた。
「仮にも実行委員会なら過去の記録が残っているはずなのだ。実行委員として過去の議事録をチェックしつつ、その結果を部活に利用すれば一石二鳥なのだ～♪」
　真央は自らの神算鬼謀ぶりに背筋が震える思いを感じながら、スキップで職員室へと向かった。
「おや？　今日はいつになく職員室が騒がしいのだ？」
　職員室は教職員に相談や、頼み事にやってくる生徒達でいつにない活気に溢れていた。見れば知った顔もちらほら見かける。
「あ、春彦ちゃんなのだ。今日はどうしたのだ？」
「お、後木か。いや、先生にスポーツ喫茶のために校庭の使用許可をもらいにきたんだけどな」
「おお！　で、どうだったのだ？」
「ああ。確定的な許可は出せないけど、たぶん大丈夫だってさ。俺はこの後ちょっとだけ委員会にも顔出してくる！　じゃ、またなっ」
「了解なのだ！」
　慌ただしく職員室を出て行く春彦を手を振って見送り、真央もまた自身の目的のために行動を再開する。
「……さて、みっちゃん先生はどこなのだ～っ、と。お？　さっそく見つけたのだ。みっちゃん先生、お～いなのだ～」
　まるで友人を見かけたときのような気軽さで、真央はコピー作業をしていた久保田美和教諭のもとに駆け寄っていった。
「あら、今度は後木さんじゃない。どうしたの？」
「みっちゃん先生、みっちゃん先生。じつは真央ちゃんに過去十年分ぐらいの寝子祭のパンフと実行委員の議事録のコピーをさせて欲しいのだ」
「……寝子祭のパンフレットと議事録？」
　美和はまたぱちくりと目を瞬かせる。
「それならたぶんデータは残ってると思うけど、そんなものいったいどうするの？」
「ふふふ、それは後のお楽しみなのだ～」
　こうして、真央は無事に過去十年分の諸々の記録を入手に成功する。

　真央が一通り資料に目を通してから陸上部の活動場所であるグラウンドに戻ると、志波拓郎がグラウンドでスポーツ喫茶の設置場所の下調べをしているようだった。
「拓郎ちゃん、いい感じの場所は見つかったのだ？」
「あ、後木さん……。うん……、このあたりなんかいいと思うんだけど、……どうかな？」
「いいと思うのだ！　あ、よかったら過去十年の出し物の設置場所を調べてきたから参考にして欲しいのだっ」
　真央はできたてホヤホヤの資料を拓郎に手渡して見せた。
「へぇ……。すごいな……。参考になるよ。え？　マタ高の襲撃がイベント風味で来場者に……人気……？」
「その情報にはさすがの真央ちゃんもビックリだったのだ……！」
　目を丸くする拓郎に真央がそう付け加えて、二人して思わず笑ってしまう。
　そうして笑っていると、委員会に顔出ししていた春彦もグラウンドに戻ってくる。
「ん？　なになに、二人で何笑ってんだよ――って、マタ高マジかよ！？」
　と、春彦もまた全く同じ反応を示して三人でまた笑う。
　そうしているうちにまだ何も具体的に決まってはいないのに、きっとなんとかなるだろうと根拠のない自信がわいてくる。
「……寝子祭、楽しまないと……な」
「だな！」
「なのだー♪」

　かくして陸上部の準備はひとまず一段落がついたことになる。