ダンシングで人類愛な祭りの準備｜リアクション

ダンシングで人類愛な祭りの準備

【ダンシングで人類愛な祭りの広報活動】

〔椿美咲紀の場合〕

　その頃、椿美咲紀は星ヶ丘にやってきていた。
「祭りで使う品物は、先に押さえておかないと品薄になるのは目に見えています！」
　美咲紀は射撃部＆新聞部の部員だった。
　やはり彼女もまた祭りの準備のために、今日もせっせと行動を開始しているのだった。
「まずはしっかりと下調べをして、できるだけ安くかつ良質な品物をゲットしちゃいましょう！」
　ぐっと決意に握り拳を固めて、美咲紀はさっそく星ヶ丘のショップを一軒一軒まわってみることにした。
「予算は有限です。足を使って、抑えられるコストは抑えなくっちゃ☆」
　そんな彼女の小脇には先ほど新聞部の部長である八神修から預かったばかりのできたてほやほやのポスターが抱えられていた。
「シュー君達が一生懸命につくったポスター、一枚たりとも無駄にはできません。できるだけたくさんのお店にポスターを貼らせてもらわないと！」
　星ヶ丘の商品は基本的に高い。
　だが、高いだけあって、良質なものも多く、またよく探せばリーズナブルな値段の店だってある。
　もちろんそういった店や商品を見つけることは容易くはなかったが、その苦労も含めて美咲紀は祭りの準備を楽しもうとしていた。
　そう。
　準備の段階から祭りはすでに始まっているのである。
「舞台的なものをつくるのに暗幕だけでなく、緑や茶色の布もあるといいですね。緑の草原、茶色の大地！　それとオシャレなミニ植木鉢も！」
　必要な物を指折り数えながら、美咲紀の商品購入と広報活動を同時展開していく。
「すみません。その黒い幕と薄い青色の布、それにそっちの茶色い布をください。それから今度うちの学校の文化祭をやるんですけど、ポスター貼らせてもらってもいいですか？」
「あ、この植木鉢可愛い！　あのー、これとそれとあれを一つずつください！　それでですね、今度、この植木鉢を使ってうちの学校で――」
　美咲紀は持ち前の明るさとトーク力で、次々と広報活動を続けていく。

〔日暮ねむるの場合〕

　同じ頃、日暮ねむるは旧市街にやってきていた。
「あ、八百屋のおばちゃん、こんにちわぁ。布団屋」
「おや、ねむるちゃんじゃないか。相変わらずいつも眠そうだねぇ」
「いやいや、そんなことは……ふわぁあ……うん、まあなくはないかな」
　親しげに話しているのはねむるがこの旧市街の布団屋の子だからである。
　ご近所づきあいが希薄になりつつあるという現代日本において、この旧市街ではまだご近所同士や同じ町会同士の繋がりというものが残っていた。
　ねむるはそのコネクションをフル活用して、独自のパイプから広報活動を行うとともに出し物で使うアレやソレをできるだけ安価に仕入れようとしていたのだった。
「ところで、おばちゃんに一つお願いがあるんだけどさ。これ今年の学園祭のチラシなんだけど良かったら受け取ってくれたら嬉しいなぁ。人参とレタス買ってくからさ、お願い！」
　ねむるは、根は戦闘狂なところがあるものの、基本的におおらかでお人よしな性格だ。
　それゆえに育ちの場所である旧市街の人々からも結構可愛がられていたりする。
「へぇ、文化祭ねぇ。懐かしいねぇ」
　少し遠い目をしつつ、八百屋のおばちゃんはほとんど迷わずにそのチラシを受け取る。
「あと実は出店作りに必要な段ボールやなんかも探してるんだけど、おばちゃんのとこで余ったダンボールとか貰えたら嬉しいかなぁ」
「ああ、はいはい。それだったら、そこに畳んで積んであるから好きなだけ持っていきな」
「うん、ありがとー、おばちゃん！」
　こうして、ねむる首尾よくダンボールを回収しつつ、チラシをしっかりと配り終えていく。

　そして互いの仕事を終えた美咲紀とねむるは合流して、さらには新聞部と射撃部の部長である八神修とも合流し、現状報告会を行った。
「というわけで、親交のあるおじさんやおばさん達にあらかた配り終えてきたよー」
「私も星ヶ丘のクラフトショップやガーデニング店でポスター張りをお願いしてきましたっ！　たくさんお客さんが来てくれるといいな☆」
　ねむると美咲紀の二人はやりきった笑顔で部長である修に広報活動の結果を報告した。
「ああ。二人ともお疲れ様。よくやってくれた」
「いやいや、八神くんの方こそお疲れ。実行委員とかけもちで大変でしょ？」
「そうそう。シューくんもお疲れ様」
「ああ、ありがとう。それじゃあ、今日はみんなで飯でも食って帰るか」

　こうして寝子祭の情報は少しずつ寝子島全体へと広がっていく。

　そして――。

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