寝子島最速伝説：島岡雪乃の場合｜リアクション

寝子島最速伝説：島岡雪乃の場合

●戦い終わって

「いやー、実にエキサイティングなレースだったね。面白かったよ」

　桜庭円が大きく息を吐きながら感想を漏らす近くで、『優等生』の八神修は雪乃の横顔を見つめながら、口に出来ない思いを胸に秘めていた。

（生き生きとマシンを駆る貴女とまた会えるだろうか……）

　その一方で積極的に雪乃に声をかけるのは御剣刀。

「先生、荷物を持って家まで送りますよ」

「……はっ！　ここは？　買い物をしていたはずなのに、私はどうして……？」
　
　レースを終え、ハンドルを手放した雪乃は何が何だか分からないといった様子で不安そうに周囲をきょろきょろと見回す。

「ああっ、御剣君？　いいのよ私は大丈夫だから、せっかくの休日は自分達の事を優先して……あぅ！？」

　席を立ち上がろうとした雪乃は筐体の天井にしたたかに頭をぶつけ、しばらく無言でしゃがみ込む羽目になる。

「……いや、心配なので送ります、絶対に……」

　先程までの勢いはどこへやらといった雪乃の姿に、周囲も苦笑を隠せないでいた。