寝子島最速伝説：島岡雪乃の場合｜リアクション

寝子島最速伝説：島岡雪乃の場合

●最大出力

　熱いソウルを持ったレーサーが集い、リゾート島を周回するレースは白熱していた。
　色とりどりのマシンがエンジンをうならせ、タイヤを鳴らし、ヨーロッパ調の重厚な石造りの町並みをくぐり抜け、白波さざめく海岸線を疾走する。

　学校では見たことの無い雪乃の姿に驚く生徒たちもいたものの、桜庭円が華麗にサイドブレーキを使って車体を滑らせるドリフトで急カーブをすり抜ける姿に、応援する北条冬華や御剣刀が喝采を送る。

（先生、何か楽しそう。普段見えない一面が見える。
　ここは戦場だ。生徒も教師も無い、ただ黙って走るのみ……）

　円はそう思いながら、ハンドルを右に左に切りかえす。

　プログラマーでもある八神修はロジカルに手堅くコースを走っていたが、熱いバトルに魂に火をつけられ、時に雪乃のマシンと接触しそうな程ギリギリのラインを攻めてみたり、時に魅せ、時に挑発的に刺激的なバトルを楽しみ出すようになっていた。

「気にいったぜ。お前、なかなかやるじゃねぇか。もっと楽しませてくれよ！」

　そんな攻撃的な修のアクションに雪乃は唇を歪めてニヤリと笑って応える。