寝子島最速伝説：島岡雪乃の場合｜リアクション

寝子島最速伝説：島岡雪乃の場合

●白ウサギのいざない

　時間は寝子高教師、島岡雪乃がシーサイドタウン、アウトレットモールのゲームセンターに吸い込まれる少し前まで巻き戻される。

「きゃぁ！」

　両手に抱えきれない程の大量の買い物袋を持って、寝子島シーサイドタウン、アウトレットモールを歩いていた雪乃は、ついぼーっとしていて広場の真ん中に立つ時計の支柱に激突し、その買い物袋の中身を辺り中にぶちまけていた。
　
「ああっ、ごめんなさい、ごめんなさい……」

　あわあわと狼狽しながら転がるリンゴを拾いあげながら、ぶつかった支柱に平謝りする雪乃。
　もちろん返答など無いのだが、天然というかそそっかしい彼女には相手を確認する余裕がないようだ。

　そこへたまたま日曜の開いた時間を利用して買い物に来ていた御剣刀が通りがかり、雪乃の姿を偶然に見かけたのもナニカ運命の導きだったのかもしれない。
　彼は雪乃が顧問を務める寝子高剣道部の部員なのだ。

「あれは島岡先生？　何故時計に謝っているんだ？」

「あ……時計？」

　周囲の視線やくすくす笑う声にようやく気がついた雪乃の青かった顔が、今度は即座に沸騰しそうな勢いで真っ赤に変わり、大慌てで散らばった荷物をかき集めると足早にその場を逃げ出す。
　しかし、モール内を速足で抜けようとした雪乃は急に足を止め、何かに引き寄せられるかのようにフラフラと一軒の店の中へと吸い込まれていった。

（……ってゲーセンに入っちゃったよ。荷物持ったままで大丈夫か？
　さっきの様子を見ると、何かしでかしそうだし、お節介かもしれないが俺も様子を見に行こう）

　刀もまた、雪乃の後を追ってゲームセンターへ入って行く……

このページにイラストを設定する