寝子島最速伝説：島岡雪乃の場合｜リアクション

寝子島最速伝説：島岡雪乃の場合

●密林へようこそ・破

「遅刻じゃ遅刻じゃ～！」

　兎印のお好み焼き屋の前掛けをひるがえし、独特の訛りと共にゲームセンターへ猛然と走ってきたのは大田原いいな。ボーイッシュで言動はこんな（失礼）でもれっきとした女の子である。

（月乃殿にげえせんに誘われたのじゃが、何で出がけに叔母上から配達を頼まれるのじゃ～！）

　いいなの危機迫る剣幕に近くに居た逆巻天野は呆気にとられ、茫然と立ち尽くすしかなかった。

　一方のいいなは周囲の反応などどこ吹く風と、ぜえはあと荒い息を吐きながら周囲を見回す。
　すると、時計広場のベンチで文庫本を読んでいた少女がいいなに気がついて手を振る。
　いいなと待ち合わせていた藤堂月乃だ。
　いいなも月乃の姿に気が付くと前掛けを外しながら彼女の傍へ一目散に走り寄る。

「すまぬ月乃殿！　叔母上に捕まって、配達していて遅れたのじゃ！
　『くれえんげえむ・でい』とやらは、もう始まっておるかの？」

　仲良さそうに何事か二言三言、言葉を交わした二人の少女は楽しそうに肩を並べあってゲームセンターの店内へと入って行く。
　迷っていた天野はその後ろ姿を目にしてようやく覚悟を決め、ゲームセンターの入口をくぐる事にしたのであった……

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