仲良くなりたい｜リアクション

仲良くなりたい

☆野々ののこ

　朝早い１年５組の教室で、天之川麗仁は読書をしていた。
「おはよー！」
　そこへ、野々ののこが元気に登校してきた。
「おはよう、ののこさん」
「おはよう、麗仁くん。何読んでるの？」
「ああ……『オペラ座の怪人』。読んだことはあるけど、ちょっと読み返したくなってね」
「へー、なんか難しそう。麗仁くん本好きなんだねー。どんなお話？」
　ののこは本を覗き込んで、無邪気に感心する。
「うん、１９世紀後半のパリのお話さ。オペラ座の地下に住み着く仮面をつけた怪人の話なんだけど。ののこさんは本は好き？」
　ちょっと迷って、頭をかくののこ。
「んーと、好きだよ。マンガが多いけど。最近は『怪盗ヘブン』が好きかな」
「聞いたことある。最近人気だよね」
「でしょー！　ヘブンはね……」

「おはよう、ののちゃん」
　夢宮瑠奈がののこに声をかけた。
「あっ、瑠奈ちゃん、おはよー！　今ヘブンの話してたんだー」
「楽しそうだね」
　瑠奈は目を細めてののこの話を聞いている。ヘブンと聞いてちょっと嫉妬の感情が蘇ったけど、顔には出さない。
　そしてふと思い返す。
（寝子島にやってきて、友達が欲しいと思ってたとき、手を差し伸べてくれたののちゃん）
　その笑顔は、宝石より貴重で、輝いていて。
　疑うことを知らない、いつも優しいののちゃん。その笑顔を、ずっと見ていたい。
（ののちゃんは、あたしをただの友達と思ってるはず。それでいいの。あたしはこれからもそんな、ののちゃんのフツウの友だちでいたいんだ）
「あっ、先生来た！　席に戻らなきゃ」
　今日もののこは屈託なく笑い、フツウの生活が始まる。
　